仏式と聞くと何だか堅苦しい感じがしますが、現代の日本で執り行われている葬儀のほとんどは仏式であると言っても過言ではありません。
日本は世界の中でも類を見ないくらい無宗教の方が多く、日常で宗教を意識して暮らしているという方は他の国に比べ断然少ないでしょう。
もちろん神式やキリスト教など、信仰が違う方もいますよね。
そんな中でも一般の方が良く参列する仏式の葬儀は、とても身近なものとして知られています。
ですが意外にも知らない仏式のお別れ方法のあれこれ。
こちらでは作法や戒名などの疑問まで、解説していきます。
そもそも仏式とは?浄土真宗が日本最大の宗派である理由
仏式とは何を意味するのでしょうか。
字のごとく、仏教様式という意味合いがあります。
生活している中で一番仏式を実感することが可能なのは、葬儀や墓参り、法事などですよね。
それ以外は特別日頃から仏教を重んじているという方ではないと、そうそう意識して暮らしていないかもしれません。
一口に仏式と言っても、宗派や作法もそれぞれ。
仏教の中には、天台宗・真言宗・日蓮宗・浄土宗・浄土真宗・臨済宗・曹洞宗・法相宗・律宗・華厳宗・時宗・融通念仏宗・黄檗宗など、大きく分けて13宗派あると言われています。
このどの宗派の葬儀も仏式と呼ばれ、ご本尊と呼ばれる仏様を拝むのが通常。
ただ宗派によりご本尊と呼ばれる「拝む対象」は変わり、釈迦如来像であったり、大日如来、曼荼羅、はたまた仏様としての本尊を持たずに対面した人物を本尊とする場合もあります。
この様に仏教としての教えはそれぞれありますが、亡くなった方を敬うという思考は同じ。
日本で一番多いのは浄土真宗とされており、日本最大の宗派とされています。
その理由の1つとして「修行や瞑想をせずとも、阿弥陀如来は必要な人を救済してくれる」との教えが関係しているといえるでしょう。
現代の日本では生活の中で仏教信仰を重んじる家庭は、昔に比べて大きく減少しています。
そうはいっても死者を送り出す、また死後の世界という事に関しては、マナーを重んじる日本人。
縄文時代から人が亡くなると埋葬をしたり死者を敬うという思想があったことから考えても、人間は「死」というものに対し非日常的な尊敬を感じているのかもしれません。
そこで仏式のお別れ方法がなじみ深く、一般的になりつつあるのでしょう。
中でも浄土真宗の様な、普段の生活で常に修行が必要のないものが取り入れられやすいのはわかりますよね。
仏式のお別れ方法の作法とは
現在の日本の葬儀では、仏式のお別れ方法が9割を占めていると言われています。
ですがその仏式のお別れ方法には、一体どの様な作法があるのでしょうか。
まず葬儀で重要な作法の1つに「焼香」があります。
葬儀の際に「何回焼香をするのか?」などの疑問は、誰もが持ったことがあるはず。
そもそも焼香をすることは線香の論理と同じく、亡くなった方は「香り」をいただくという考え方に基づいています。
死者の冥福を祈る際に使われる香には「抹香」と「線香」の2種類が一般的であり、通常の葬儀では抹香が使われる場合がほとんど。
線香は日常的に墓参りなどで使われているのでご存じの方も多いですよね。
抹香とは香木を細かくパラパラになるまで砕いた物のことをいい、燃やして使います。
この抹香が祭壇の前に香炉と共に置かれ、順番が来たら焼香をしに前に出るというのが通常。
線香の場合は「線香をあげる」と表現するのに対し、焼香の場合は「押し頂く(押頂く)」という言い方をすることを覚えておきましょう。
押し頂くとは指でつまみ、額の所に持っていくことを言います。
また作法として、お焼香をする際に数珠をしておくことも重要。
数珠はお経などを唱える際に手にかけてするもので、煩悩の退散や死者の魂に敬意を表すなどの意味があるそう。
お焼香にも同じ意味合いがあります。
ただこれらの焼香・数珠のかけ方は宗派により作法が違うので、執り行われる宗派がどこの宗派なのかをチェックしてから出かけると失礼にあたることはないでしょう。
また忘れてはいけない作法が、焼香の後に行う合掌です。
合掌には仕方がいくつかあるとされていますが、一番オーソドックスな作法をしておけば間違いありません。
その合掌の作法とは以下の様なものです。
①胸の前で手のひらを合わせる。
②肩肘は張らず、脇にぴったりくっけもしないゆったりした姿勢③指はきれいにぴったりくっつけます。
④角度は45度くらいで祭壇に向けましょう。
仏式のお別れ方法の作法は、焼香・数珠のかけかた・合掌が重要なポイントです。
仏式のお別れ方法の作法を宗派ごとに紹介
仏式のお別れ方法で宗派ごとに作法が違うというお話はしましたが、宗派が13もあるとなると調べるのも大変なもの。
ですがどの宗派も焼香のマナーは基本的に親指、人差し指、中指で押し頂くのが基本。
ただ回数や数珠のかけ方を知っているだけで、葬儀の作法について安心感もありますよね。
そこでこちらでは、仏式のお別れ方法で特に執り行われることが多い7宗派の作法について簡単にご紹介してきます。
①天台宗
・合掌した手の人差し指の部分に、数珠を二輪で(短ければ1回)かけます。
・焼香の回数の決まりはありません。
②臨済宗
・天台宗と同じく合掌した手の人差し指の部分に、数珠を2輪で(短ければ1回)かけます。
・焼香の回数は1回のみ、押し頂くかどうかのルールはありません。
③曹洞宗
・天台宗と同じく合掌した手の人差し指の部分に、数珠を二輪で(短ければ1回)かけます。
・焼香の回数は2回。
1回目は押しいただきますが、2回目はそのまま香炉に落とします。
④真言宗
・手のひらに数珠はかけず合掌した手のひらの中に数珠を入れ、人差し指と中指の間に数珠の先の部分を出します。
・焼香の回数は3回押していただくのが決まりです。
⑤浄土宗
・合掌した手のひらの親指部分に数珠を掛けます。
・焼香の回数に決まりはなく、1回から3回押しいただきます。
⑥浄土真宗
・天台宗と同じく合掌した手の人差し指の部分に、数珠を1輪で掛けます。
・浄土真宗の中の派閥により作法は違うとされていますが、基本的に1回から3回で押しいただかない。
➆日蓮宗
・手のひらに数珠はかけず合掌した手のひらの中に数珠を入れ、人差し指と中指の間に数珠の先の部分を出します。
・1回か3回押しいただきます。
仏式のお別れ方法の流れとは
仏式のお別れ方法の作法については理解したものの、やはり葬儀全体の流れを知らないと不安になるもの。
宗派により多少の差はありますが、基本的にはそこまで流れは変わりません。
まず人が亡くなると通夜を執り行います。
訃報は急に飛び込んでくる事が多いので、通夜に関しては親族でなければ喪服では無くても大丈夫。
ただし翌日以降の葬儀参列の場合は、通夜とは違いしっかりとした喪服で参列しましょう。
香典を用意し、受付で記帳をします。
この時に受付の方にお悔やみを必ず述べる様にしましょう。
この後は係の方の指示に従うのが良いですが、通常は祭壇のある部屋に案内されますので入り口で一例をして入室。
ご遺族の方がいましたら、あいさつとお悔やみを述べにいきます。
通夜開式のアナウンスが流れましたら、関係性を見極め席につきます。
一般的には喪主・親族が祭壇に一番近い場所、その後ろに参列者です。
案内があったら順番に焼香をし、その後は通夜振る舞いの席に。
食事の用意をしている遺族の方が多いので、席に案内されることが多いですね。
この通夜振る舞いは故人の供養の意味があるため、どんなに忙しくても箸を付けて一口でも良いのでいただきましょう。
また遺族の方の疲労や他の参列者との関係的に、あまりに長居をするのはおすすめできませんのでタイミングを見て退出するのがおすすめ。
翌日の葬儀に参列できない場合は、もう一度遺族にあいさつをして帰ります。
葬儀・告別式の流れに関しても基本的には通夜と変わりませんが、出棺で故人と最後のお別れです。
その後は火葬場に行き、納骨までは自宅に戻るという形式が一般的。
葬全般に言えることですが、遺族の方の悲しみを十分に理解し、故人が亡くなられた経緯や長めのあいさつなどは控えましょうね。
戒名は仏の弟子としての第一歩
葬儀に参列すると、祭壇の真ん中に見たこともない名前の位牌があるのを見かけますよね。
実はあの複雑な名前は戒名と呼び、仏様の弟子になったという証でもあります。
ただし浄土真宗では法名、日蓮宗では法号と呼ぶことをひかえておきましょう。
もともと戒名は仏様の弟子になると授けられる名前という意味があり、亡くなったからもらうというものではありません。
出家した方なら生前に戒名を授かれますが、実際に現代で戒名を生前に持っているのは僧侶だけ、もしくは生前に戒名の準備をした方だけでしょう。
戒名に対し、生きていた時の名前は俗名といいます。
今は戒名にこだわらない方も増えていますが、菩提寺を持っている方は大体の人が生前準備、もしくは亡くなった後に戒名を授けてもらうのが一般的。
長い戒名の中に、院号(社会貢献など)、道号(仏道修得者の名)、戒名(仏の弟子としての二文字の名)、位号(仏教徒における位)が含まれています。
位牌を総称して戒名と呼ぶことが多いですが、実は戒名とは二文字だけの名であることがわかりますね。
まとめ
仏式のお別れ方法についてまとめてきました。
実は知らないと困る焼香や数珠の作法、戒名などの知識。
仏式のお別れ方法には宗派によりさまざまな仕方があることがわかりましたが、故人をしのぶという気持ちが一番重要です。
葬儀に参列する際には、作法などに気を付けつつもそれだけにとらわれず、遺族の悲しみに寄り添いながら故人の冥福を祈ることが大切な作法となるでしょう。