クリスチャンの親族や友人知人が亡くなった場合、キリスト教の法要に参列することがあります。
仏教徒が多い日本では、なかなか参加する機会が少ないので、マナーに不安を感じたりする人も居るのではないでしょうか?何も知らずに参加して、恥をかいてしまうと心配になってしまいます。
そこで、そんな不安や心配を感じないために、ここでは大人なら知っておきたいキリスト教の法要についてをご紹介します。
キリスト教の法要とはどんなもの?
キリスト教には法要という概念がありません。
そもそも法要とは、故人の成仏を願う供養のことを指し、仏教での考え方なのです。
仏教では一周忌、三回忌など年忌法要がありますが、キリスト教ではそのようなものは存在しないのです。
ただ、葬儀以降に全く供養の機会が無いかと言えばそういう訳でもありません。
キリスト教では記念式(または記念集会)や追悼式(または追悼ミサ)というものが行われており、それが仏教で言う法要にあたります。
キリスト教では、大部分がカトリックとプロテスタントに分かれており、死生観も多少異なる部分が見られます。
カトリックでは追悼ミサ、プロテスタントでは記念式が行われます。
キリスト教も仏教と同様、宗派内でも派閥により信仰が細かく分かれています。
正教会派やモルモン教など有名なものですら、はっきりどちらとは分けられません。
そのため、法要のような儀式も、カトリックやプロテスタントで行われているもの以外に存在することがあります。
全てのものを紹介することは出来ませんので、ここでは代表的なカトリック、プロテスタントについてを見ていきましょう。
カトリック式「追悼ミサ」の流れ、やり方
キリスト教のカトリックでは、追悼ミサという儀式が行われます。
通常、故人が亡くなった3日後、7日後、30日後に行われ、その後、1年に一度の命日に行われます。
仏式の一周忌と同様、1年目の命日には盛大な死者記念の追悼ミサを執り行います。
家庭によっては3日目と7日目を省いたり、同時に行ったりもします。
1年目以降の命日には、ミサを行う人もあれば、行わない人もいます。
追悼ミサの流れは、神父による説教、祈り、聖書朗読、聖歌の斉唱を順に行います。
儀式が終わるとその流れで、会食の席へ向かいます。
会食の流れはその家庭によります。
各家庭によりやり方が異なる場合がありますが、基本的にはこのように進めます。
プロテスタント式「記念式」の流れ、やり方
キリスト教のプロテスタントでは、記念式(記念集会)という儀式が行われます。
故人が亡くなってから1ヶ月目を「召天記念日」と呼び、家族や親族、知人友人、牧師などを招いた儀式を行います。
その後も、命日に記念式として供養を行う家庭が多いようです。
1年後、3年後、7年後、10年後の命日に記念式を行う家庭が多いのですが、基本的には何年毎に行うという決まりは有りませんので、各家庭が決める形となります。
記念式の流れは、、牧師による説教、祈り、聖書朗読、賛美歌の斉唱、故人を偲び祈りを捧げるという行程を順に行います。
儀式が終了した後は、カトリックの追悼ミサと同様、参列者を招き会食などを行います。
流れややり方はカトリックの追悼ミサとほぼ変わりませんが、内容が少し異なります。
キリスト教の法要でのマナー
キリスト教の法要では、仏式とは異なるマナーが存在します。
まず、案内状への返信は不要となります。
仏式では期限までに参加か欠席を連絡しますが、キリスト教では必要無いため、書かれている日時、会場へそのまま足を運ぶようにします。
この時、神父(司祭)や牧師が入場してから入ることはできませんので、早めに行き着席して待ちましょう。
また、数珠は仏式のアイテムなので持っていかないようにします。
供花は仏式と異なり少々選ぶのが難しくなります。
追悼ミサや記念式の際にはあまり贈る習慣がありませんので、お花の代わりに御花料として香典を持参するのが間違いも無くスマートです。
どうしてもという場合には、白ユリで作られたバスケットアレンジを自宅へ贈るようにします。
教会や会場に送るのはマナー違反となってしまいますので注意が必要です。
キリスト教の香典は、水引が付いていない物を使用します。
白無地の封筒か、十字架や白ユリが描かれた専用の袋などを使用しましょう。
表書きは、カトリックなら「御花料」「御霊前」「御ミサ料」とし、プロテスタントなら「御花料」「忌慰料」とします。
プロテスタントでは考え方の違いから、「御霊前」を良しとしない場合がありますので、間違えないように注意しましょう。
香典の金額は、5千円~1万円位までが一般的ですが、故人との関係性により異なります。
親族であれば3万円位が平均となりますし、関係が薄い場合は3千円を包むという人もいます。
案内状に供物や香典を辞退する旨が記載されていた場合、持参しないようにします。
嘆き悲しむことをしないのもマナーです。
では、なぜキリスト教の法要では悲しんではいけないのでしょうか?その理由を詳しく見てみましょう。
仏教の法事とキリスト教の法事との違い
仏教の法事は、故人の冥福を祈り、生まれ変わりを願うための供養とされています。
また、故人を失った遺族の悲しみを癒すため儀式でもありますが、キリスト教は「死=神の元へ還る」とされており、悲しむことではないとされています。
そのため、法要に参加する際も悲しむものでは無いということを前提に考えておくと良いでしょう。
尚、カトリックでは、人が亡くなり肉体が滅んでしまっても、魂は神の元に召され永遠の命が始まると考えられています。
プロテスタントでは、人が亡くなった後は、天に召され神に仕えると考えられています。
そのため、仏教のように「お悔やみ申し上げます」「ご愁傷さまです」という言葉掛けはせず、「安らかな眠りをお祈りします」と声を掛けるのがベストです。
死を嘆いたり、悲しんだりしないようにしましょう。
キリスト教の法要の会場は?
キリスト教の法要は、教会で行われるのが一般的ですが、近年では葬儀社が管理するセレモニーホールなどでも行われています。
近年の葬儀社は、仏式だけでなく、どんな宗派の葬儀・法要でも執り行えるようになっています。
そのため、大きな教会が近くに無い場合等にはセレモニー ホールが儀式の会場として活躍しています。
儀式が終わった後は、会場の外に移動して会食をしたりしますが、時間によっては茶話室や談話室でお茶と茶菓子を振る舞い終了とすることもあります。
また、セレモニーホールの別室を使い、会食を行うパターンもあります。
プロテスタントでは、記念式を自宅で行う家庭が多く、自宅に祭壇を用意し、遺影やお花、十字架などを飾ります。
近年では、日本の住宅は狭いという理由から、ここでもセレモニーホールが活躍しています。
キリスト教の法要に参列する場合の服装は?
キリスト教では、30日目までの追悼ミサや召天記念日にはブラックフォーマルを着用します。
それ以降は平服でも構わないとされていますが、平服の場合でもシンプルな色の洋服にします。
ジーンズにTシャツのようなラフ過ぎる出で立ちは悪目立ちしますので、男性ならば白シャツにスラックス、女性はダークカラーのワンピース、子供は制服などで参列すると良いでしょう。
平服で悩むのが嫌な人は、ブラックフォーマルを着用すれば心配要りません。
キリスト教のその他の法要
キリスト教のカトリックでは、毎年11月2日を「死者の日」や「万霊節」と呼び、死者のために祈りを捧げる日としています。
オールソウルズデイと呼ばれているように、全ての死者に対し祈りを捧げる大切な日なのです。
教会では特別なミサが行われますので、遺族は皆参列します。
また、ミサの前にお墓の掃除を行い、生花を飾ってお参りなどをします。
日本でいうお盆のような日で、その日には亡くなったキリスト教徒が自宅に戻るとされています。
ヨーロッパ諸国では、家の前にロウソクを灯したり、パンやワインを置き、家族が迷わず帰って来れるようにしています。
尚、オールソウルズデイの1日前は、オールセインツデイ(諸聖人の日)とされています。
まとめ
キリスト教では、カトリックやプロテスタント共に死は祝福すべきこととされています。
生前の死を懺悔し、神の許しを請い神の元に召されると考えられているためです。
そのため、法要のような場では、悲しむことはせず、思い出を語らう場としています。
お悔やみの言葉も必要ありません。
キリスト教では、カトリックが追悼ミサ、プロテスタントが記念式を行います。
仏式のように弔い上げまで供養するという概念はありませんので、法要をすることが絶対ではなく、特に決められてはいません。
各家庭の考え方で、追悼ミサや記念式を行います。
これらのことを理解し、マナー違反にならないようにしましょう。