「除夜祭」と聞くと、何となく「除夜の鐘」と関連した行事だろうかと思われるのではないでしょか。
「除夜祭」の意味や「除夜祭」にまつわる言葉の解説を分かりやすく行っていきます。
一年の穢れを払って良い一年を迎える準備をしていきましょう。
除夜祭の意味
みなさんは「除夜祭」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
「除夜祭」とは、大晦日から元旦にかけて行われる除夜の神事で、神社で行われます。
大晦日という意味を持っている除日の夜が除夜のことです。
昔は年神を迎える準備を済ませて夕方から神社に籠り、
元旦を迎える「年籠り」が広く行われていましたが、これは年越しに行う物忌みと同義でもあります。
現代では除夜、つまり大晦日の夜に社寺に出かけることと、
初詣を一緒に済ませてしまう場合が増え、除夜に年籠りを行う意味が薄れてきています。
一般的には行く年の無事に感謝し、来る年の安全をお祈りする意味で行われていますが、
神社によっては大きな火を焚いて夜を明かしたり、
疫病神払いや竃木の奉納を行ったりするところもあるようで、除夜祭の催し物はそれぞれ異なります。
除夜祭はいつ行われる?
除夜祭は前日したように除夜、つまり大晦日の夜から元旦にかけて行われます。
一年の最後の祭りで、年越祭とも言われます。
除夜祭の前に大祓式を行なったり、そのあとに歳旦祭を行なったりする神社もあるとのことです。
近年では観光イベントとしてカウントダウンショー、
餅つき、甘酒のふるまいなどと併せて開催される場合もあります。
祝詞
祝詞とは、一般的に言うと神を称え感謝するために唱えるものです。
日本では古来から言葉に魂が宿るという考えがあり、
神様への願いや祈りを言霊(ことだま)にのせて読み上げることで敬意を表してきました。
除夜祭の前には、一年間で心身に積もった穢れを祓うために大祓式を行います。
その際に唱えられる祝詞が「大祓詞(おおはらえのことば)」です。
「大祓詞」は大きく二段に分かれています。
前段では豊葦原瑞穂国(とよあしはらのみずほのくに)、
つまり日本国の成り立ちについて語られていて、
後段では「祓」を行うと罪穢がどのように消滅するかが語られています。
古文で表すと「高天原(たかあまはら)に神留(かむづま)ります・・・」という文から始まり、およそ900字の漢字によって成り立っています。
これに出てくる神様方は天之御中主神、高御産霊神、神御産霊尊、伊邪那岐命、伊邪那美命、天照大御神です。
いずれも読み方は割愛しますが、天照大御神はご存じの方も多いのではないでしょうか。
この神様方はすべて清らかな正しい心を持ち、互いを補填し合い、許し合って生きていくことを筋としておられます。
世俗の生活の中で、日本人は知らず知らずのうちに嘘や憎悪、妬み、怒りといったいろいろな罪穢に触れます。
これらが体にたまることは決して良いことではありません。
生命のエネルギーである「氣」が衰えてくるからです。
「氣が枯れる」、これが「穢れ(る)」の語源と言われています。
罪穢を祓い、自身を清めることによって氣を甦らせ、活力ある生活を再開する。
それを行うために大祓の祝詞を奏上します。
そもそもこれは神の言葉として参列者に聞かせるものでしたが、のちに唱えることで功徳があると考えられるようになりました。
よって大祓式の際には、神職者にあわせてぜひ一緒に唱えてみてください。
熱心な参拝者の中は、覚えたほうが神様に感謝を伝えられるから、と大祓の祝詞をすべて暗記して奏上している方もいます。
唱えることで心がクリーンになった、体が軽くなったと感じる方が多くいらっしゃいます。
大祓
大祓とは、自分の意識・無意識にかかわらず犯してしまった罪やケガ、病気などの穢れを除き去ることです。
この儀式を大祓式といいます。
心身が弱くなった状態、つまり穢れた状態を一度清めてリセットし、
明日からの生活を良くする、また世の中の平和と繁栄を祈るという意味が込められた神事ですす。
ちなみになぜ「祓」ではなく「大祓」なのかというと、この「大」という字が「公」という意味を持っているからだとされています。
つまり、大祓は個人のお祓いだけでなく、社会全体、日本全体のお祓いをも担っているということなのです。
大祓式の歴史は非常に古く、西暦200年頃から行われていたと言われています。
今からおよそ1800年以上前のことです。
正式な宮中行事としては奈良時代にはじまり、一般にも広まっていきました。
現在大祓式は6月30日と12月31日に行われ、それぞれ「夏越しの大祓」、「年越しの大祓」と呼ばれています。
穢れに触れてしまった心身を、半年に一度清めるためといわれています。
では大祓式で具体的には何をするのでしょうか。
今回は6月30日の夏越しの大祓の流れを見ていきます。
神事は典儀という司会役の方の案内で進められ、まずは参道で大祓詞を奏上します。
次に参列者が各自「形代(かたしろ)」と呼ばれる人の形をした紙に名前と数え年を書き、
形代の体を撫でたり息を吹きかけたりして穢れを落とします。
その後、「浄火」と呼ばれる神聖な火によってお焚き上げをしてもらいます。
このあとに大麻・塩湯によるお清めや、白布を八つに裂く「八針神事」というお祓いを行う神社もあります。
外でのお祓いが終わると、次に全員で行列を組みながら境内の「茅の輪」をくぐります。
「茅の輪」とは、茅(ちがや)という植物を束ねて大きな輪にしたもので、
それをくぐることにより疫病や罪穢が祓われると言われています。
人数が多いので大変ですが、8の字を描くように茅の輪を何度もくぐり、本殿へと歩きます。
最後に本殿で参列者と地域に住んでいる人々の安寧を祈る祈願祭が行われます。
宮司の祝詞奏上、四方のお祓い、参列者の二礼二拍手一礼などをして、大祓の行事は全て終了です。
しかしどうしても都合が悪く、除夜祭や大祓式に行けないという方もいらっしゃるでしょう。
そういった方はおうちでできる簡単な浄化の儀式があるので、ぜひ参考にしてみてください。
その方法は、お風呂の浴槽にお湯を張り、塩と酒を適量入れて湯船につかるだけです。
その際、いざなぎの神話を思い浮かべ、身体からすべての邪気が抜けていくことをイメージしましょう。
より祓い清めの効果を感じられるはずです。
塩、酒、お風呂の3つは、塩、米、水の神様に捧げる三種の神器とされており、おうちでのお祓いにはぴったりの品です。
神社に行けず、手軽に清めたいという方はぜひ一度お試しください。
余談ですが2014年12月31日、女性の皇族として初めて、皇居での「大祓の儀」に秋篠宮家の長女眞子様が参列されました。
それまでは成年男性の親王に限っていたのを、成年女性を含む皇族に広げたことが大きな変化です。
大祓の儀は701年制定の大宝律令において正式な宮中行事に定められており、それから代々天皇家の方々も参列してお祓いをされていました。
まさに社会全体、日本全体の罪穢を祓う儀式と呼べる神事となっています。
除夜の鐘
除夜の鐘とは、除夜、つまり大晦日の夜ちょうど日付が変わり新しい年になる深夜0時をはさんでつかれる鐘のことを指します。
除夜の鐘は人が抱いている煩悩を祓うために突くのです。
仏教では人には108つの煩悩があると考えられてきました。
それらを祓うために、108という回数だけ除夜の鐘をつくのです。
除夜の鐘に用いる鐘は「梵鐘」と呼ばれ、法要の開始を知らせるときなどに使われます。
ただし鐘の音そのものに苦しみや不安、悩みを断ち切る力が宿るとされているため、仏教の大切な品として除夜の鐘にも用いられるのです。
鐘のまわりには小さな突起があります。
これは「乳(ち)」と呼ばれるもので、この数も108つ、ほとんどの鐘についています。
また、銘には梵鐘の力である功徳も刻まれています。
海外にはこのような風習はなく、日本の除夜の鐘だけが毎年静かに響き、新しい年のスタートを知らせてくれます。
除夜の鐘の時間にも決まりがあり、最後の108回目は年が明けてからつくのが正式なやり方とのことです。
多くの神社では除夜の22時40分ころから1回目をつき始め、
鐘をついてみたいという希望者には無料でつかせてくれるところもあるとのこと。
気になる方はぜひ行ってみてください。
まとめ
さてここでは、除夜祭にまつわるワードを解説してきました。
みなさんは全てご存じだったでしょうか?
伝統的な行事がだんだん減ってきていると言われるなかで、
警察庁の発表では、全国の初詣者数は昭和40年が約2500万人、昭和60年は8000万人以上、平成に入ってもその数は減っていないというデータがあります。
ちなみ参詣者数は不景気の時ほど増える傾向にあり、「苦しい時は神頼み」を象徴する結果となっています。
お参りする人が減らない理由は、子供から大人まで誰もが除夜の鐘や初日の出、初詣のなかに、新しい年を迎えるというパワーのようなものを感じ取っているからかもしれませんね。