お正月といえば食べることが好きな人にとっては、お餅をたくさん食べられてワクワクしますよね。お雑煮などに使う餅とは一線を画しているのが、神棚などに鎮座する鏡餅です。豪華なものだと飾りが付いていて、上にはダイダイがのせられています。鏡餅は新年が明けてすぐ食べるものではなく、鏡開きの日まで飾っておきます。
鏡開きとはいったいどのような由来があるのか、おこなう時期や正しいやり方はあるのかなど気になることがたくさんありますよね。お正月だけではなく結婚式に出席した人や挙げた人はわかるかもしれませんが、樽を木槌で叩くのも「鏡開き」といいます。今回は鏡開きの意味や由来を中心に時期ややり方、結婚式での樽との関係などについて詳しくご紹介します。
鏡開きってどういう意味や由来があるの?
お正月には年神様が家にやってくるということで、年が明ける前からお正月飾りや鏡餅などを飾って年神様を迎える準備をします。お正月が終わると、松の内を迎えて年神様は家から帰っていきます。お正月飾りは松の内を迎えると片付けていきますが、鏡餅だけは食べ物ということもあって鏡開きをしていくのです。鏡開きは年神様に感謝の気持ちを伝えながら、お供えをしていた鏡餅をみんなで食べる行事のことなんですね。
鏡開きの「鏡」とは丸い形をした青銅器のことをいい、神様が宿っていると信じられていました。天照大御神(あまてらすおおみかみ)が瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)に授けた三種の神器のひとつが八咫の鏡(やたかのかがみ)だったのです。鏡餅は八咫の鏡をかたどったものだといわれ、鏡は「我が身をかえりみて正す」という意味もあります。
鏡開きに欠かせない鏡餅は平安時代からあって、室町時代以降からお正月に供えられるようになりました。鏡開きが一般庶民の間に広まったのは、江戸時代に入ったころです。年神様にお供えした鏡餅を食べる際に包丁などで「切る」のは武士の切腹を連想させるため縁起が悪いということで、手でちぎったり叩いたりしていました。切ったり割ったりするのではなく、縁起の良い末広がりから「開く」と言う表現を使ったのが由来といわれています。
鏡開きが行われるのはいつ?
鏡開きがおこなわれるのはいつなのかというと、毎年お正月が明ける松の内を過ぎた時期になります。実は鏡開きの日は関東と関西で異なり、同じく松の内も異なっているのです。関東では松の内が1月7日、鏡開きが1月11日におこなわれます。一方で関西では松の内が1月15日で、鏡開きが1月15日か20日におこなわれるのです。
鏡開きの日が関東と関西で異なる理由が気になるところですが、実は元々関東も関西も1月15日に松の内を迎えたのち、20日に鏡開きをおこなっていました。鏡開きが一般民衆の間でおこなわれるようになってから程なくして、徳川家光が1651年の4月20日に亡くなってしまったのです。20日は本来鏡開きをおこなうめでたい日でしたが、家光の月命日となってしまったため江戸(関東)では20日ではなく11日になったのですね。
鏡開きの日にちが変更になったことで気になるのが、松の内の日にちです。松の内を迎えてから年神様は帰っていくので、厳密にはまだ年神様は家にいることになります。年神様がまだ鏡餅に宿っているのに開いて食べてしまうのは、なんとなく気持ちがよくないですよね。鏡開きの日が変更になったため、年神様には少しだけ早く帰っていただこうと松の内を7日に変更したのでした。鏡開きの日にちが変更になったのはあくまで江戸幕府の都合によるものなので、関東地方以外ではそのまま20日におこなわれる地域もあるのです。
鏡開きの正しいやり方とは?
鏡開きの正しいやり方を把握する前に、してはいけないことを覚えておくと良いでしょう。鏡開きでは知らないとついやってしまいがちな、マナー違反の行為があります。やってはいけないこととは「鏡餅に刃物を当てること」です。鏡餅にはお正月にやってくる年神様が宿っていると考えられているので、刃物を当てるのはとっても失礼極まりない行為なのです。鏡開きがおこなわれるようになった時代の名残として「武士の切腹」を連想させると言う理由でも、刃物を当てるのは厳禁とされています。
鏡開きの正しいやり方は刃物を使わずに鏡餅をちぎったり叩いたりして、細かくなったお餅をみんなで食べることです。食べる時には年神様に食べ物を食べられていることに感謝しながら、ひとくちずつ噛み締めていきましょう。
鏡開きの際に鏡餅を柔らかくするには?
鏡餅を飾ってから鏡開きまで2週間ほどあるので、鏡開きをする頃にはカチカチに乾燥してしまっていることがほとんどです。鏡開きをしようと思ったけど、あまりの硬さに断念した人もいるのではないでしょうか。鏡餅がもし硬くても、諦めることはありません。ちょっとの工夫で、柔らかくできるので挑戦してみてくださいね。
まずお餅が硬いのは水分がなくなったためなので、半日ほど水に浸けて水分を与えてあげましょう。水に浸けたらクッキングシートにそのままのせて、柔らかく包んでください。ラップはお餅が柔らかくなったらくっついてしまうので、避けてくださいね。クッキングシートの上からさらにラップで包んでから、電子レンジで600W30秒ずつに分けながら温めていきましょう。
鏡開き後の鏡餅の食べ方とは?
鏡開きは供えていた鏡餅をたべるところまでが流れなので、年神様に感謝をしながら家族みんなでいただきましょう。鏡餅を食べると病気知らずで過ごすことができ、縁起が良いとされています。鏡餅を食べるといっても、具体的にどんなふうに調理すれば良いのか食べ方が気になりますよね。鏡開きの時におすすめな、調理方法をみていきましょう。
・お汁粉にする小豆から煮て作るのも良いですが、面倒な時はおしるこのレトルトパックを利用しましょう。お餅を入れて良く煮ていれば、柔らかくなってきます。自分で一から作ると甘さの調節がしやすいので、甘さ控えめで作りたい時はおすすめです。
・きな粉をまぶすより手軽に鏡開き後にいただく方法が、きな粉餅にするやり方です。きな粉だけでも、砂糖を混ぜて甘さを出しても良いですね。時間をかけずに食べられるのが魅力的です。
・おかきにする伸びるお餅を食べるのもそろそろ飽きてきたという人は、おかきにしてみてはいかがでしょうか。鏡開きをしたら、そのまま小さくちぎって油で揚げていきます。こんがりきつね色になるまで揚げて、よく油を切ったら出来上がりです。ちょっと小腹が空いた時に最適なので、たくさん作っておきましょう。
結婚式での鏡開きは樽が使われる
結婚式で新郎新婦が、鏡開きをおこなう様子は多くの人がイメージできると思います。結婚式でおこなう鏡開きは鏡餅ではなく、リボンが掛けられた樽が使われているのです。
樽の中身は清酒で、新郎新婦が一緒に木槌を持って樽の蓋を叩くというもの。結婚式で鏡開きをすることでこれからも夫婦仲良くいられるように、良い縁を切り開こうという意味があるのです。お酒が飲めないときや授かり婚での結婚式では、樽の中身をジュースにするなど工夫する人も多いのだとか。甘いものが苦手で、ケーキ入刀よりは鏡開きが良いとおこなわれるケースも多いようですね。
樽を使っているのにどうして「鏡開き」といわれているのかというと、樽の蓋が「鏡」と呼ばれていたからなのです。確かに言われてみれば、鏡に見えますね。鏡開きをするときのやり方は、会場の全員で「よいしょ、よいしょ、よいしょー!」と声がけをして木槌で開いていきます。結婚式というめでたい日なので「壊す」「割る」といった表現は使用しないようにしましょう。
鏡開き後の鏡餅の処分方法とは?
お正月の準備で鏡餅を飾ってから、鏡開きの日までおよそ2週間�。
いざ鏡開きをしようと思ったら、カビが生えてしまっていたなんてことも多いですよね。お年寄りなどは「カビが生えているところだけ取ってしまえば食べられる」と、気にせず食べてしまいそうですが…。実は目に見えないカビがたくさんついているので、カビが生えていたら残念ですが処分した方が良いのです。
鏡餅は今までお正月飾りとして飾っていたものなので、一般的な食材と一緒に生ゴミで捨てるわけにもいきませんよね。鏡餅は鏡開きの後1月15日に全国各地の神社でおこなわれる、どんど焼きに出すようにしましょう。神社でおこなわれるどんど焼きの火で鏡餅を「お焚き上げ」してもらうことで、年神様に一緒に持って行ってもらうのです。
もしどんど焼きが近くでおこなわれていない場合には、止むを得ず家庭ゴミで出さなければならないこともありますよね。家庭ゴミで出す場合には鏡餅に左、右、中央の順番に塩を振ってお清めをして新聞紙などで包んでゴミ袋に入れて塩を振ります。もう一度ゴミ袋でくるんで塩を振り、清めたら年神様に手を合わせて感謝をしながら口を縛りましょう。燃えるゴミとして処分をすれば、完了です。
まとめ
鏡開きの意味や由来を中心に時期ややり方、結婚式での樽との関係などについて詳しくご紹介してきました。鏡開きはお正月に年神様が宿っていた鏡餅をちぎって食べる行事のことで、江戸時代からおこなわれるようになりました。元々は神話の時代に存在した三種の神器のひとつの鏡が由来となっていて、武士などの一年の仕事の始まりも意味していたようです。おこなわれる時期は関東で1月11日、関西では1月20日となっています。
鏡開きでは鏡餅をお汁粉などにして食べますが、もしカビなどで食べられなかった場合はどんど焼きでお焚き上げをしてもらいましょう。最近は便利な真空パック入りの鏡餅が増えてきたため鏡開きをやらなくなりましたが、もし鏡餅が手に入ったら年神様に感謝する機会を設けてみてはいかがでしょうか。