日本人は古くから、細やかな四季の移り変わりを大切にしてきました。
立春・雨水・啓蟄は、それぞれどのような時期かご存知でしょうか。
日本で生活するからこそ感じられるこの季節についてもっと知ることで、
日々の生活をより楽しめると良いですよね。
それぞれの特徴や旬の食べ物などをご紹介していきます。
そもそも二十四節気とは何か
二十四節気を簡単に説明すると、1年の始まりを立春に定め二十四区切りにしたものです。
一つの区切りは大体15日前後です。
立春は太陽黄経つまり黄道315度の時を指し2月4日もしくは5日に当てはまります。
1年の始まりを立春とする場合、ここが旧暦でのお正月になるのかといえば
そうとは限りません。
東アジアなどでよく耳にする春節が旧暦のお正月に当たります。
二十四節気は月の動きよりも太陽の動きを重視しているため、太陽暦に合わせた場合、立春は2月になりますが、太陽の動きに合わせた太陽暦は動きを360度に合わせ0度を春分にしています。
ここもまた不思議かもしれませんが、そういうものとして考えてください。
そして、雨水の330度、啓蟄の345度と15度ずつ足していき、春分には360度、
つまり0度になるわけです。
春は立春から始まり、雨水、啓蟄、春分、清明、穀雨。
夏は立夏から始まり小満、芒種、夏至、小暑、大暑
秋は立秋から始まり処暑、白露、秋分、甘露、霜降。
冬は立冬から始まり、小雪、大雪、冬至、小寒、大寒で一年が終わります。
さらに細かく分けていくと5度ずつの動きがあり、七十二節となります。
さらにそれらとは関係なく節分や土用、八十八夜、入梅、
盂蘭盆会いわゆるお盆などがありますが、
これを雑節といいます。
二十四節気とは関係なく、農業や気候の目安となる時期です。
節分は豆まきをして厄を払う行事です。
「節分」という言葉は、本来、「季節の分かれ目」という意味なので、
1年の間に4回あるのですが、ほとんどの場合、2月の立春の前日の節分を指します。
このような二十四節気は、旧暦(太陰太陽暦)と深く関わりがあり、
そちらと比較した方がわかりやすいでしょう。
お正月に初春と書くことも分かるように、旧暦では1月から3月を春、4月から6月を夏、7月から9月を秋、10月から12月を冬としています。
そのため、現在の暦で1月20日、旧暦の12月末辺りが、二十四節気を締める大寒となり、一年で最も寒さが厳しい時期が年末とされていました。
立春とお正月
立春は大体2月4日頃で、春の始まりとなっていますが、旧暦ですと1月となります。
それは正月なのではとおもわれるかもしれませんが、旧正月は立春の時期ではなく、1月21日ごろから2月20日頃となります。
これだけで時期の違いを分かっていただけるでしょう。
旧正月は旧暦の1月1日です。
そして立春は太陽の動きを基準としていますので、季節の始まりとしての1年の初めなのです。
わかりにくいですが、節切の暦という考えかたで、春の初めが1年の初めという考え方です。
要するに旧正月は月の動きからお正月を作るので1か月近くのズレが生じ、
太陽の動きから作る立春は数日のズレしかないということです。
太陰太陽暦とは、まさに太陽と月の二つの動きをみているのです。
ただ、立春がお正月と定義している地域もあるようです。
そして旧正月と立春をいっしょにしない地域にとっては、
立春が来る前にお正月が来るときと、立春後にお正月が来ることがあります。
どちらの縁起が悪いという話はないですが、立春とお正月が同じ日になることが、30年に1度あり、これを新年立春といって、とても縁起がいい日と言われます。
立春を過ぎると、寒さもピークが過ぎ、だんだん暖かくなっていきます。
2月は寒さが厳しい時期ですが、3月へ向かうまでに暖かさを増していきます。
お正月と非常に縁のある立春ですが、年賀状が送れない相手に出す寒中見舞いというものがあり、これは立春までに出すことがしきたりです。
ただあまり遅くなりすぎないように、できれば1月中旬までには送りましょう。
また「立春大吉」と書かれた紙札を貼る習慣があります。
これは禅寺の門に貼られており、厄除けの御札とされています。
これは左右対称で、表から見ても裏からみても「立春大吉」となり、鬼が玄関に入れないようにするおまじないのようなものです。
これを手に入れることで、1年間を平穏無事に過ごすことが出来るといわれています。
雨水とひな祭り
雨水は、うすい、と読みます。
立春から数え15日目となり、雪が雨に代わり、川や池に貼った氷も水になり、草木が芽吹き始める時期という意味です。
農耕の準備を開始する目安の日ともされていました。
また、「良縁にめぐまれる」という説があり、お雛様を出すのに良い日と言われています。
「水は命の源であり、水の神さまは子宝や安産の神さまだから」という説、「氷も解け、春の息吹を感じ始める時期で華やかになる時期だから」という説もあります。
しかし、お雛様を飾る日に決まりはありません。
ですが前日もしくは当日に出して、すぐに片付けるという、一夜飾りと呼ばれる飾り方は縁起が悪いとされています。
したがって立春から雨水の間にかけてお雛様を飾る目安とするのが良いとされています。
①啓蟄と菰はずし啓蟄は「けいちつ」と読みます。
雨水から15日後を指し、土の中にいる虫やとかげ、カエルなどの多くの冬眠をしている生き物が出てくる時期とされています。
啓蟄の啓は開くという意味があり、蟄は虫などが土の中に隠れ閉じこもる、という意味があり、啓蟄は土の中に閉じこもっていた虫などが開き出てくるという意味です。
ふきのとうの花が咲く頃ともされていますので、山菜がお店に並びだす時期でもあります。
立春や雨水は寒さのピークが過ぎてきた、という感じですが、啓蟄は暖かさを実感できるようになってきた、という感じで覚えると良いでしょう。
この時期には菰はずしを行いますが、菰とは、害虫から木を守るため、わらを編んだ物を巻きつけたものです。
春の初めの美味しいものは、冬の旬との合わせ技
立春の頃といえば、2月の上旬で節分の翌日、雨水は2月中旬あたりになります。
この頃に旬を迎える食べ物は、海のものでは、鯛、サワラ、ボラ、ブリ、牡蠣、蟹、タコ、モズクなど、野菜・果物は、だいこん、春菊、ホウレンソウ、こまつな、レンコン、リンゴ、みかんなどと、実は冬のお楽しみ食材はとても多いのです。
そして啓蟄の頃になると、春の美味しいものが出てきます。
キャベツやグリーンピース、分葱やワサビ、菜の花、蕗などの山菜各種、リンゴやミカンも冬から引き続き残っていますが、他にイチゴも美味しくなっています。
またカツオ、白魚、石鯛、サヨリ、鯛が旬となり、ブリやマグロは冬の名残とはいえ、まだまだ美味しい季節です。
さらにひな祭りに欠かせないハマグリ、アサリも出てきます。
この時期は季節が大きく変わる時期なので、冬と春の物が混ざり合っています。
特に啓蟄の時期は、夏と秋の食べ物以外は食べられるという、なんとも嬉しい時期です。
立春から啓蟄までは春の用意をする季節(まとめ)
立春は1年の始まりとして、また季節の始まりとして認識されており、寒さのピークが過ぎ、これから暖かくなる時期です。
ただまだ冬の名残も多く、立春から啓蟄までの2月は寒さのピークと終わりを同時に味わえる期間ともいえます。
啓蟄からは春そのものを感じることが多くなる期間ともいえます。
また行事に関しても、お正月らしいものから、春にかけての用意をしていく時期です。
つまりこの一年が良い年になることを祈り、田畑への用意を始める時期です。
そして啓蟄から春分にかけて春が完成されていきます。
暦というのは、天文学が基になっており、地域の暮らしにも密着しています。
これは日本だけでなく、世界でも同じです。
しかし現在の日本で旧暦を意識して生活している方は多くないでしょう。
旧暦を意識している方といえば、スローライフを心がけている方や占いを生業にしている方、神事仏事に関わる方というイメージがあるかもしれません。
そうでなくとも、節分や春分、春の嵐に、月の満ち欠け、六曜、厄年、俳句に茶摘みと、どこかで何かに触れているのではないでしょうか