蛙始鳴という言葉をご存知でしょうか?
日本の初夏の風景に、蛙の泣き声は欠かせないものとなっています。
蛙の声が近くなるほどに夏の気配を感じます。
では、実際にこの言葉は何を意味するのでしょうか?
ここでは、蛙始鳴の意味や読み方、使い方、蛙についてを詳しくご紹介します。
蛙始鳴とはどういう意味?
蛙始鳴とは、どのような意味を持つのでしょうか。
蛙始鳴は七十二候の一つです。二十四節気の立夏の初候にあたります。
具体的には、5月5日から9日頃を指していて、
「蛙(かえる)が鳴き始める時期」という意味があります。
冬の寒い間、冬眠をしていた蛙が暖かさと共に目覚め、繁殖をするために鳴き始めるのです。
穀雨を境に田んぼには水が引かれ、稲作の準備がなされるため、蛙が産卵しやすい環境が整います。
実は冬眠から目覚めた春頃から少し鳴いているのですが、繁殖期になるとその声は更に大きくなるのです。
蛙が鳴き始めると、夏や梅雨の気配を感じます。
そうはいっても、まだ5月ですので、肌寒く感じる日もあれば、日中は夏の様に暑い日もあります。
季節の変わり目になりますので、気温の変化に身体がついていけず体調を崩したり、
ゴールデンウィークなど大きな休みが明けるため、休日から社会生活への切り替えが上手くいかずに悩む時期でもあります。
よく五月病という言葉が聞かれますが、それに陥りやすい時期になりますので注意が必要です。
尚、立夏の次候は「蚯蚓出(みみず いずる)」、末候は「竹笋生(たけのこ しょうず)」となります。
蛙始鳴の読み方は?
蛙始鳴の読み方は、「かわず はじめてなく」です。読み方が分からなくても、
その漢字を見れば、「蛙が鳴き始める」という意味であることがすぐに分かります。
「かえる はじめてなく」と読まれることもあります。
「かわず」は「かえる」と同じ意味を持ち、短歌や俳句、和歌などで使われる言葉です。
野原や田畑で蛙が鳴き始める頃となるのですが、蛙が鳴き始めると、本格的に夏の気配を感じてきます。
立夏になると、春の土用明けとなります。
土用というのは春夏秋冬の各季節にあり、普段は様々な場所にいる
土公神という神が土の中に居る日とされています。
そのため、土を掘り起こすことや土いじりに関することが禁じられているのです。
春の土用が明けると、本格的に農作業をする人が増えます。それと共に蛙の動きも活発になってくるのです。
蛙始鳴の使い方は?
蛙始鳴を実生活に用いるとしたら、どのような使い方をすれば良いのでしょうか。
日常生活の中では、なかなか見聞きしませんが、七十二候を時候の挨拶にする使い方が一般的です。
例えば、「蛙始鳴、耳を澄ますと、どこからともなく蛙の鳴き声が聞こえてくる季節となりました」など、
ハガキや手紙の最初に七十二候を使用すると、季節感が増します。
また、会報やブログ、SNSなどの文頭に使用しても美しくまとまります。
ただ、七十二候を使用する上で注意しなくてはならないのが、その手紙などを出す時期です。
七十二候は約5日毎に変わりますので、手紙に書く内容を思案しているうちに時期が変わってしまうという場合もあります。
ピンポインとの時期を表わす言葉になりますので、使い方にも少し注意が必要になるのです。
初夏に鳴くのは何蛙?雨を予測する?
蛙始鳴の時期には、繁殖期の蛙のオスがメスに対し求愛する鳴き声です。
また、自分の縄張りを主張する鳴きも聞かれます。
一言に蛙の鳴き声といっても、危険を伝えるためのもの、
雨が降る前に低気圧を感じて鳴くものなど様々な種類のものがあります。
初夏に出て来て鳴く蛙は、アマガエル、ツチガエル、ウシガエル、
ダルマガエル、モリアオガエル、シュレーゲルアオガエル、カジカガエルなどです。
日本には約40種類ほどの蛙が存在していますが、それらが次々と産卵します。
中でも、ニホンアマガエルは割とポピュラーで良く見かけるものです。
アマガエルは、雨が降るのを察知して「雨鳴き」をすることで有名です。
アマガエルは皮膚が薄いため、温度や湿度の変化を感じ取り鳴くのです。
蛙始鳴に旬を迎えるものは
蛙始鳴の時期に旬を迎えるものは、金目鯛、にんじん、イチゴ、たけのこなどです。
金目鯛は、煮付けにすると非常に美味しくいただけます。
旬のニンジンは、味が濃くて美味しいものです。
新鮮な葉も付いたまま売られることもありますので、葉とともにかき揚げにして食べると良いでしょう。
イチゴは終盤を迎える種も多いのですが、ゴールデンウィーク頃であれば、まだいちご狩りを楽しめる場所もあります。
摘みたては何も付けなくても非常に甘く瑞々しくて美味しいです。
タケノコは炊き込みご飯や煮物にして美味しくいただけます。
また、5月5日は「端午の節句」です。子供の成長祈願が行われ、
かしわ餅を食べたりしょうぶ湯に入ったりする日です。
男の子の居る家庭では、兜を飾ったり、鯉のぼりを掲げます。
蛙は実は縁起が良い!?
蛙は、その色や形状、見た目から気持ち悪い、近寄りたくないといわれがちな生き物です。
でも、実は、生まれてから一旦別の地へ移っても、再度生地へ戻ってくるという習性から「帰る=蛙」と呼ばれるようになり、巷では非常に縁起が良い生き物とされています。
例えば、落とし物がカエル、無事にカエル、出て行ったお金がカエルなど良い意味やイメージを与えるため、
縁起が良いといわれているのです。
また、心機一転という際に、「蛙=変える」として運勢を良い方向に転換させるため、
蛙をお守りにしようと考える人も多いのです。
ゲン担ぎのために、玄関に蛙の置物を置いたり、財布に蛙モチーフのものを入れたり、
がま口という蛙の口をイメージした財布を愛用する人もいるのです。
蛙モチーフや可愛らしい蛙キャラクターも多くありますので、自分好みのものが見つかるかも知れません。
蛙と縁起物と捉えているのは日本だけではありません。
ドイツ、インド、エジプト、フランス、アジア諸国など様々な場所で崇められています。
フランスでは雨の守り神として慕われていますし、インドなどでは蛙の産卵にあやかり、
子宝、子孫繁栄、成功などのシンボルとなっています。
日本では、玄関先で蛙が飛び跳ねると金運がアップするなど、ジンクスがあります。
また、夢で蛙が出てきた場合も、良いことの前兆であると言われています。
蛙の数は減っている!?
蛙始鳴の時期を過ぎ、暖かくなると煩いほどの蛙の鳴き声を耳にします。
でも、近年では昔ほど煩く感じなくなっていませんか?
蛙の数が減っているのは世界的な現象で、蛙が全くいない野山も存在するようです。
原因は酸性雨や環境ホルモンの影響ではないかと言われています。
蛙は他の生き物に比べ、皮膚が薄いためそういったものの影響を受けやすいのです。
蛙の数が減ってしまうと、人間に害のある虫が増えるという弊害が起こって来ます。
環境問題を改善することが人間だけではなく、蛙の生態系にも良い効果を及ぼすことが考えられますので、
世界中が一丸になり環境問題に取り組む必要があるのです。
中国の宣明歴では・・・?
「螻蟈鳴」となり、雨蛙が鳴き始める頃という意味があります。
中国でもこの時期はアマガエルが鳴き始める時期と言われているのです。
ニホンアマガエルは中国東部にも生息しているため、日本で見られているアマガエルと同じものを指しているのかも知れません。
ニホンアマガエルは、小さな緑色でとても愛らしく、人間が近づいても逃げない事が多いため、
子供の頃に触った経験のある人も多いのではないでしょうか。
このニホンアマガエルは天気を予報すると言われ、昔から農耕の時期に重宝されていました。
それと同じように、中国でも活躍しているのかも知れません。
まとめ
蛙始鳴は立夏の初候となり、5月5日から9日頃を指す言葉です。
「蛙が鳴き始める頃」という意味があり、冬の冬眠から目覚めた蛙たちが、
夏の産卵に向けて鳴く声が聞こえ始める季節を表わします。
夏に向けて蛙以外の他の虫たちも目を覚ますのですが、
蛙の泣き声で「夏になるな」と感じる人も多いのではないでしょうか。
蛙は、好き嫌いが分かれる生き物ですが、その名前や習性で昔から縁起の良い生物とされてきました。
雨が降る前にはアマガエルが鳴くというのは有名話ですが、
蛙はそれ以外にも人間に有害な虫を食べてくれるなど、重要な役割を担っているのです。
自然環境の悪化により、蛙の減少が顕著になってきていますが、
それを食い止めて自然の生態系を確保することも人間の大切な努めなのかも知れません。