最近は仏壇が自宅にない家庭もあると耳にしますが、やはり日本では故人や先祖を敬うという思いが強く仏壇やお墓に花を飾るということが当たり前になっていますよね。
お花屋さんにいくと仏花用のセットが販売されているので、知識がなくても手軽に買えます。
中には故人が好きだった「花」を選んで飾る方もいらっしゃるのではないでしょうか? もしかしたらその花の選び方や飾り方、間違っているかもしれません。
こちらでは葬式やお彼岸、お墓参りに至るまで、シーン別に仏花の飾り方や選び方をご紹介します。
そもそも仏花とは?供える意味を知りたい!
日本では仏壇や祭壇に仏花を飾るということを、当たり前の事として行っている方が多いでしょう。
実はこの「故人や仏様に花を飾る」という行為は、仏教に大きく関係していると言われています。
その理由は釈迦の前世を記す「瑞応経」という経典に書いてあるとか。
まだ釈迦が悟りを開く前、出会った仏様に何か差し上げたいと考えた釈迦は周囲に調度よい物がなく、近くの花屋で花を買い飾ったのが最初だそうです。
その時以来、仏様に花を飾るということが現代まで習慣化したとのこと。
仏教で一番有名な花といえば「蓮」です。
美しい白やピンクの花びらが印象的な「蓮」は、お釈迦様が座っている事でも知られていますね。
蓮は極楽浄土に一番近い花として、仏教界ではとても大切なものだと信じられているのです。
仏教信者が最も多いタイ王国ではあいさつをする際に、手を胸の前で合わせる独特のポーズをとります。
この合わせた手のひらの中に、蓮の蕾を表すことがあるのだとか。
雨や風の中でも必死に耐える花が、厳しい修行を耐え抜こうとする修行僧に例えられていることがきっかけだと言われています。
一方で、まだ遺体を土葬埋葬していた時代、香りや成分の強い花を一緒に土の中に埋めると野犬などに墓を掘り起こされないからと言われていたという説も。
時代それぞれではありますが、花を飾るということに特別な思いがあることは確かでしょう。
亡くなった方やご先祖様を敬うという、日本人の信心深い思考や歴史がそうさせているのかもしれませんね。
日本の行事で仏花を飾る場面はいくつある?
仏花を飾る場面は生活をしている中で何度も遭遇しますが、一体日本には仏花を飾る行事はいくつあるのでしょうか。
①葬儀
誰もが知っている花を飾る仏教の行事ですね。
祭壇の両脇や周囲に花を飾り、故人をお見送りします。
出棺の前には飾ってある花を参列者に配り故人を花で飾ることで、最後のお別れをするのが通常。
②法要
故人が亡くなってから初七日や四十九日、1周忌などの法要時にも仏花を飾ります。
お寺でやる方も多いので、そのままお墓にも飾るということが通常でしょう。
③春のお彼岸
お彼岸は年に2回ありますが、春は春分の日を挟み前後3日間ずつのことを「春のお彼岸」と呼びます。
この時期には、いつもは忙しい方でも仏花を持って墓参りに行く機会を作る人が多いのではないでしょうか。
④花まつり
花まつりとは釈迦の誕生した日のことで、仏教では祝い行事として知られています。
お釈迦様が生まれた時に天から龍が甘い露を落としたという伝説のもと、甘茶を飲む習慣があります。
また色とりどりの花の中に釈迦像を置くことから「花まつり」と呼ばれたとか。
⑤お盆
8月13~16日(地方によっては7月)に、先祖霊をお迎えする行事です。
自宅の仏壇に仏花と共に盆提灯やキュウリなどで作った霊馬などを飾り、ご先祖様が戻ってくる準備をします。
地域によっては迎え火や送り火などの風習も。
⑥秋のお彼岸
春のお彼岸と同じく、秋分の日の前後3日間ずつある日のことを「秋のお彼岸」と呼びます。
仏花を持って墓参りに行く方がほとんどです。
⑦お正月
意外に知られていないかもしれませんが、「お正月」でも仏壇に花を飾ることはおかしい事ではありません。
年の瀬の大掃除や正月飾りは全て歳神様のため。
正月には仏壇に鏡餅や、正月用の仏花を飾りましょう。
⑧墓参り
墓参りはお彼岸だけに行くものだとする方も多いですが、行きたい時に行って良いのです。
ただし天候や時刻は気にするのが良いですね。
墓参りに行く際は夕方にならない様に気を付けましょう。
⑨祥月命日
月命日1周忌以降の故人が亡くなった日のことを祥月命日といいます。
また毎月の亡くなった日を「月命日」と呼び、仏壇にお花を飾ったりお墓参りに行く方もいます。
これらの行事で日本では仏花を飾りますが、小さい頃から何となく当たり前になっていませんか?数えて見ると意外にも数が多く、生活に密着しているのがわかります。
シーン別に徹底解説①お盆や葬儀、法要で飾る花が違う理由
宗派により多少の認識の違いはあるかもしれませんが、法事や法要で飾る花の色や種類は少しの違いがあります。
例えば故人の死からそう経っていない場合(初七日~3周忌まで)は、白い花をメインに飾ります。
その他は青、紫、黄色や緑色の葉を使うことが多いことを覚えておきましょう。
これは花を寒色系にすることで「悲しみ」を表現しているという意味合いがあります。
悩んでしまいそうな花の種類ですが 春…キンセンカ・アイリス夏…りんどう・ケイトウ・クラジオラス秋…ほおずき・ミソハギ 通年..菊・百日草・カーネーション菊は黄色いものを仏花として飾るのを良く目にしますが、菊であれば黄色でもOK。
正式な葬儀の場などでは、なるべく寒色でまとめると間違いありません。
最近はブリザーブドフラワーなども含めた造花が人気の傾向がありますが、仏壇に飾る場合は日持ちのする造花でも問題ないとされています。
ただし正式な葬儀の場などでは、生花を活けることが通常です。
シーン別に徹底解説②知っておくと損をしない仏花の飾り方
次に用意した仏花の飾り方をご紹介していきましょう。
まず仏花は奇数で用意するというマナーがあります。
3・5・7本などですが、自宅の仏壇であれば5本などが一般的でしょうか。
お墓だと7本でも良いかもしれませんね。
通常の仏壇の飾り方は、仏花を一番左・中央に香炉・その横に蝋燭という「三具足」、または両脇に用意した奇数の仏花用花束2セットを仏壇の両脇にある「花立」に飾り、さらにその間に香炉を挟んで蝋燭を2つ立てる「五具足」というものが一般的です。
ただし宗派や考え方により2つで1対という場合もあるので一概には言えません。
自宅でお参りをするだけなら三具足で問題ないのですが、法事・法要の場合は五具足で飾り付けをしましょう。
緑の葉を一番後ろの高い位置にし、上から見た時に「ひし形」になる様にするのがポイントです。
これは仏教で使われる「榊」から来ていると言われています。
また花を飾る時は、手を合わせる側に花の表面を向けるのも忘れてはいけません。
これは礼拝者が仏様の慈悲を感じられるようにとの意味合があると言われています。
実はその花のチョイスはマナー違反!?注意したい花の種類や色見
仏花を飾るということについて説明をしてきましたが、実は飾るのにふさわしくないとされている仏花もあります。
まず日持ちをしない花、傷みやすい花、散りやすい花、毒性のある花、トゲのある花、香りの強い花などです。
バラ・アーティチョーク・ボケ・トリカブト・スイセン・スズラン・フクジュソウ・アザミが、仏花にふさわしくないとされている代表的な花です。
トゲがあるものがどうしていけないのかは想像がつくかもしれませんが、トゲは「傷つける・血」というワードを連想させてしまうためと言われています。
もしもトゲで花を飾る方がけがをして血が出てしまったら、仏様に失礼にあたるという考え方からだそう。
ただトゲを全部取れば飾っても良いとされているので、もしも故人がバラを愛していたというのであればトゲを全部取って飾るのも良いかもしれません。
傷みやすい花が不向きだとされている理由としては、毎日訪れるものではない墓参りに傷みやすい花を飾るとすぐに散ってしまい周囲を汚してしまうからなのだとか。
最近のお寺や霊園では管理費を年間払いして、掃除などを代わりに行ってくれるということも。
たまにしか墓参りに行かないという方は、なるべく日持ちする花を飾るのがおすすめです。
ここまで仏花に向いている花・向いていない花をまとめてきましたが、実際のところ故人が好きだった花をあげるのが良いとされていることも覚えておきたいポイントです。
確かに毒性のある花や、悪臭のあるものは控えた方が良いですが、それ以外のものであれば「向いていない」だけで「絶対ダメ」ということでもないのです。
ただ公の場ではマナー違反とみなされることもあるので、節度を持つことは忘れない様にしましょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
日本人は信心深い方が多く、故人や先祖に対し敬うということを忘れません。
そのことはとても良いことであり、続けていきたい習慣でもあります。
そのためにもマナーや知識は重要ですので、ぜひ仏花の飾り方などを確認してから墓参りや法事・法要などに出かけましょう。
急に起こる不幸は仕方ないとしても、法事や法要は事前に準備が可能です。
日常に仏壇の花を飾るということを取り入れて、ぜひ大人の常識を自分のものにしてく出さいね。