氏神様と鎮守様、どちらも神社のことを指すことはわかっていますが、はっきりと意味を知っている人は少ないかもしれませんね。
自宅の近所に神社が1つしかない場合はまだしも、いくつかあると子どもがお宮参りだ、七五三だというときにどこの神社に行くべきか迷ってしまいます。
氏神と鎮守の意味と違いがわかっていれば、これからはスッキリとお参りに行けることでしょう。
今回は氏神と鎮守の意味をはっきりさせて、2つの違いについて解説していきます。
「氏神」と「鎮守」の違い!できた由来が全然違う!
氏というのは、同じ祖先を持つ血族の集団です。
氏神というのは、今ではその地域を守る神様ですが、この氏が自身の祖先を祀ったことが始まりでした。
氏神を祀った神社の近所に住んで、祭りを運営したり、参加したりする人たちのことを氏子と呼び、神社の近所に住んでいなくても、その神様を信仰する人のことは、崇敬者と呼びました。
平安時代以降、もともとその土地には関係なかった武士や貴族、場合によっては寺院が土地を治めるようになり、その土地を治めるようになった領主が、自分の領地を保護するための神様を祀るようになりました。
これが鎮守の由来です。
また新しく寺院などを建てるときに、それを保護する目的で神社を作ることがありました。
鎮という字には、しずめるという意味がありますが、上から重いもので抑えるという意味も持っています。
その土地を抑え、鎮める役目を持っているのが、鎮守ということになります。
氏による社会ができた後、武士や貴族が領地を治める新しい社会ができたことで鎮守が作られるようになりました。
氏神を押しのけて、鎮守神が表れたといってもよいでしょう。
今では氏神と鎮守神が混同されているのが、嘘のような話ですね。
これは長い時間をかけて、鎮守が地域に溶け込んで、氏神と同じ働きをするようになった結果です。
ほかに産土神という神様もいらっしゃいますが、これは土地の守護神です。
その土地で生まれたものを生涯守ってくれるといわれています。
かつては同じ土地で一生を送ることが多かったので、氏神、鎮守、産土神が同じという場合が多かったのです。
氏神と氏子は血縁関係で結び付いているのに対して、産土神を信仰する人たちはその土地に住む者どうしの地縁で結び付いています。
意外なことに、引っ越しをすると氏神は変わってしまいますが、産土神は一生変わりません。
これは何だかありがたいですね。
日本人にはありがたい!「総氏神」と「総鎮守」の存在!
ちなみに引っ越しをして、新しい氏神について知りたいときは神社本庁に問い合わせると教えてくれるそうです。
また結婚した先で、新しく氏子になることがあります。
その場合は氏子になったことで、自動的に氏神様が変わるわけです。
氏神様がその都度変わるのは、大変だと思う人もいることでしょう。
その場合、細かいことをいわずに、自分は日本人であると大きく考えるとよいですよ。
私たち日本人の氏神様は天照大神です。
天照大神は、日本神話に登場する女神です。
世界を明るく照らす神様で、天の岩戸に閉じこもったときには、世界が真っ暗になってしまい、さまざまな災いが起こったそうです。
この天照大神は、現在の皇室の先祖であり、日本という国のもととなったので、日本人の総氏神であるとされています。
また日本の総鎮守も存在しています。
愛媛県今治市の大山祇神社は、平安時代に日本の総鎮守と定められました。
山の神、海の神、戦いの神として朝廷や武将たちから信仰を集めたそうです。
初めて名前を聞いた、という人もいるかもしれませんが、毎年旧暦の5月と9月に行われる一人角力はテレビでもよく紹介されています。
これは力士がさも相手がいるように角力をとってみせる神事です。
神様との角力なので相手は目に見えないわけです。
もし仕事の都合などで、転勤が相次いでも、総氏神と総鎮守がわかっていれば安心です。
どんどん引っ越しできますよ。
たとえ自分がどこかの神社の氏子になっていても、別の神社の神様を拝む(信仰する)のは全く問題がないそうです。
このおおらかさも、日本の神様のよいところですね。
引越し先でも、色々な神社で参拝が行えます。
大切にしたい!氏神様との関係
今では氏神と鎮守をそれほど厳格に区別しなくてもよくなりました。
ですが子どもが生まれたときは、氏神様を思い出して欲しいのです。
昔、今よりも医療が発展していなかった頃は、子どもを生んで育てるのは大変なことでした。
まず、無事に子どもが生まれる保証はどこにもありませんでした。
そこで子どもが生まれると1カ月ほどで氏神様に無事に生まれたことの報告とお礼をするために神社にお参りに行ったのです。
それが今でも行われているお宮参りで、お宮参りに行くことはその土地の一員として認めてもらうことでもありました。
無事に生まれた後も、七つまでは神の子といって、氏神様からの預かりものだから、幼いうちはまだ魂が定着していないと考えられていました。
実際に幼い子どもが病気などで亡くなることが多く、亡くなった子どもは神様のもとに帰ったとされました。
そこで7歳までの子どもの成長に合わせて、お祝いの機会を設けたのです。
それが七五三で、氏神様の前で祝いの儀式を繰り返すことで魂を固めて健やかに成長するように祈願しました。
現在医療はとても発展して、昔の親より心配は軽くなったのかもしれませんが、それでも子どもを一人育てるのに、かなりの不安と心配を乗り越えて行かなくてはなりません。
昔から人々がお宮参りや七五三を行い、子どもたちを育ててきたことを思い出しながら、子どもを育てるときの不安や心配を少しだけ氏神様に肩代わりしてもらいましょう。
神様の力を借りるのですから、安心です。
きっと心も軽くなるに違いありません。
自宅の近所にある神社を、いつも見守っていてくれる氏神様だと思って、お宮参りに出かけてみてください。
家にお年寄りがいる場合は、自分の家の氏神様について話を聞いてください。
きっと喜んで教えてくれるはずです。
お宮参り、七五三、毎年のお祭りや初詣と、氏神様のいらっしゃる神社は、その子どもにきっとたくさんの思い出を作ってくれますよ。
氏神様のために!これからの氏子のあり方とは?
氏神という言葉に比べると、氏子の方は今でも普通に使われている言葉です。
我が家は〇〇神社の氏子だ、という人はたくさんいることでしょう。
現在氏子は神社において、ボランティアとサポーターの両方を兼ねた存在になっています。
地域によってはまるで自治会やPTAの活動のように、神社の氏子として活動している場合がありますが、年々氏子としての仕事が負担になり、氏子を辞めたいと悩む人も出てきているようです。
神社での行事を補助するほか、必要があれば寄付を募ることまでやらなくてはいけないので、自分の仕事を持ちながら、氏子としての業務を全うするのは難しいことなのかもしれません。
親の代が氏子として活動していても、子どもの代になると氏子としての自覚がなくなり、活動が途絶えてしまうこともよくあるようです。
氏子がなくても、存在している崇敬神社もありますが、地方の小さな神社では氏子の協力がないと存在できないのも事実です。
もし氏子の協力がなければ、例祭や元旦祭の運営だけでなく、日々の清掃作業までできなくなってしまう神社が出てくるでしょう。
若い世代の人も協力しやすく、楽しく参加できるシステムを作って氏子の数を減らさないようにしなくてはなりません。
よく小さな地方のお祭りが資金不足や後継者不足で、続けられないということを聞きますが(お祭りがなくなるのはもちろん寂しいことです)、それよりも、神社自体が無くなってしまったらと考えると恐ろしくなります。
今まで、見守ってくれていた氏神、鎮守、産土神が居なくなると考えるだけで、何だか薄ら寒いような気がしてきます。
自分が住む地区に神社がなくなれば、要がなくなったのと同じです。
祭りも正月も関係がなくなり、人が集うことがなくなってしまいます。
そんなことになる前に、氏子の活動について考えるべきなのです。
まとめ
できた由来は違うけれども、今や氏神と鎮守を厳格に区別する必要もなくなってきました。
そんな区別をしなくても、神様と人間には温かな関係があったのです。
実例としてお宮参りや七五三といった行事についても解説しましたから、自分の思い出を通して、より氏神様に親しみを感じた人もいるのではないでしょうか。
氏神や鎮守という言葉にこだわりすぎずに、身近に神社があれば、ぜひ心の拠り所にして欲しいと思います。
また、自分がどこかの神社の氏子であるなら、できる範囲で関わり合いを持って欲しいと思います。
子ども時代からずっと人生の節目には、神社があったはずです。
氏神様を持っていることは、幸せなことです。
氏神様が末永く存続していくためにも、神社との関わり合いがあるなら、それを切らないで自分にできることを考えて欲しいと思います。
そして氏子総代となる年代の方や、神社の神職の方などは、神様とともに歩んできた、日本人の生活をなくさないためにも、ぜひ、若い人たちが参加しやすい氏子のあり方というのを考えていただきたいと思います。