一年間の生活の折々に、彩りを添えてくれるお祭りを楽しみにしている人は多いですね。
最近はわざわざお祭りを見物するために旅行をする人もいます。同じ日本の中だけでも、お祭りは数多くありますが、よく考えるといくつかの傾向があるようです。今回は日本のお祭りには、どんな由来があるのか、またどんな種類があるのかそしてどうしてお祭りの種類は増えたのかについて解説していきます。
お祭りの由来と、種類が増えたわけとは
お祭りの由来は祀る(まつる)という言葉です。
飲食物を供えて、神様を招き、その霊を慰め、願い事などをするのが祀るということの意味です。
この祀るという動詞が名詞になって「まつり」という言葉ができました。
最初は神様に対する儀式がお祭りでしたが、後にお祭りとともに行われる賑やかな行事(例えば神輿や山車の運行など)が、人々にお祭りだと認められるようになったのです。
神様に祈ることそのものがお祭りですから、たとえ神輿や山車が出なくても、元旦祭などに「祭」の文字が使われるのも理解できますね。
お祭りには、もともと霊を慰めるという意味があったことから、先祖の霊を慰めることもお祭りになりました。早い話、葬儀はお祭りということになります。
現在の感覚だと、葬儀がお祭りとは意外に感じられるかもしれませんが、神道では一周忌のことを一年祭と呼んでいます。葬儀がお祭りというのは、決しておかしな話ではありません。先祖の霊を慰めるための盆踊りが行われる夏祭りは、まさにお祭りといえます。
また、日本人にとっては米が命をつなぐ大切な食べ物でした。
米がきちんと収穫できるかで、人が生きていけるかどうかが決まるといってもよいほどでした。
そのため、米の収穫に関するお祭りができました。米の収穫に関するお祭りだけでなく、日本にはたくさんのお祭りがあります。今から、お祭りの種類について、一つずつ説明しますね。
お祭りで始まり、お祭りで終わる1年!例祭以外のお祭りとは
年の始めと終わりにはお祭りが行われます。
1月1日の早朝には、「歳旦祭(さいたんさい)」や「元旦祭」というお祭りが行われ、その年1年の平和と安全を祈ります。年の終わりには「大祓(おおはらえ)」といって、気付かぬ内に自分自身に溜まってしまった罪や穢れを祓い、新年を無事に迎えられるように準備をします。
この2つのお祭りの間に、例祭を始めとするたくさんのお祭りが行われます。
例祭や例大祭と呼ばれる、その神社で最も重要なお祭りは、神輿や山車が出て、露店が立ち並ぶいわゆる私たちがお祭りと思っているお祭りです。お祭りが行われる場所や祀られている神様によって、例祭はみなそれぞれ異なった特徴を持っています。しかし、例祭に関しては広く知られていることも多いので、みなよく知っているはずです。
では、このほかのお祭りには、一体どんなものがあるのでしょうか。
神輿や山車が出ていなくても、毎日がお祭り?その理由とは
私たちの感覚とは少し違いますが、神様に毎日お供えを差し上げることを、神社ではお祭りと呼びます。伊勢神宮では、神様も毎日食事をすると考えて、朝夕2回のお供えをします。
「日別朝夕大御饌祭(ひごとあさゆうおおみけさい)」と呼んでいますが、一般的には「日供祭(にっくさい)」といいます。
また神社によって日程は違いますが、毎月平和と安全を願うお祭りが各神社で行われています。これを「月次祭(つきなみさい)」と呼んでいます。この日にお参りをするとご利益があるそうですよ。
家を新築した人なら、経験がある地鎮祭、上棟祭などは臨時祭、また個人が祈願する場合は私祭といいます。神輿や山車が出なくても、確かにどれも人生の節目になる大切な行事です。神様の力を借りられれば、心強いですね。
こうして日々のお祭りを見ていると、日本人は祭りとともに生きていることがわかります。よく日本人は無宗教だといわれ、自分でもそう思っている人が多いのですが、決してそうではありません。神様とともに生きることが、あまりにも当然のことで、特に何かを信仰しているとは思わないのでしょう。
このように神社では常にお祭りが行われています。今まで考えたこともなかったという人も多いでしょうが、正月や例祭のとき以外も、神社は中々忙しいのです。
先祖の霊を慰めて、疫病退散、害虫駆除!夏祭りは忙しい!
お盆にちなんで行われることが多い夏祭りですが、ほかにも七夕にちなんで行うお祭りや、疫病退散、害虫駆除を願って行われるお祭りがあります。
京都の五山送り火は、お盆で帰って来た先祖の霊を再び送り出すための習わしが残ったものです。
また日本各地で行われている祇園祭は、祇園神が疫病除けの神様だったので、疫病退散の願いを込めて行われています。昔も今も、夏は伝染病や害虫の季節だったのです。
今と違って、伝染病はすぐに命に関わりましたし、害虫で米が不作なら、それも命に関わりました。
夏祭りは、それらを避けたいという庶民の願いがこもった、庶民のお祭りだったのです。そのため、伝統に縛られない新しいお祭りが多いのが夏祭りの特徴です。厳粛というよりは華やかなお祭りが多いのです。
8月のお盆期間に行われることも多いので、実家に里帰りして楽しむ人も多く、現代人にとっては懐かしい人たちに会うよい機会になっているようです。
今でも重要!米の収穫に関するお祭りはこんなにある!
米の収穫に関するお祭りといえば、収穫祭を想像するでしょうが、それだけではありません。毎年2月27日に行われる「祈年祭(きねんさい)」はとしごいのまつりともいわれ、年の始めに穀物の豊作を祈り、国の安泰を願うお祭りです。
昔は穀物が豊作なら、国は安泰でしたが、現在では農業以外の産業の繁栄も祈るお祭りになっているそうです。田植えのシーズンには、日本全国で田植祭が行われます。実際に田植えを行う所、田植えの真似をするところなど様々ですが、みなその年の豊作を祈願して行っていることに変わりはありません。
大阪の住吉大社での「御田植神事」は有名ですね。毎年10月17日に行われるのが、「神嘗祭(かんなめさい)」です。「嘗」という字には、舐める・味わうという意味があります。
文字通り神様にその年に出来上がった穀物を味わっていただくお祭りです。天皇陛下を始めとする全国の農家からお供えされた新米や雑穀が神様にお供えされます。お供えされた新米を神様が召し上がることで、神様の力が蘇ると考えられています。
11月23日には「新嘗祭(にいなめさい)」が行われます。
このときは神様だけでなく、天皇陛下もともに新米などを召し上がります。皇居だけでなく、全国の神社でも新しい穀物の豊作に感謝するお祭りが行われます。日本人は米を食べなくなったといわれていますが、お祭りに関していえば、米の収穫に関するお祭りを軸にして1年が回っているといっても過言ではありません。家の近所に神社があれば、春と秋にはお祭りをしているでしょう。
今まで当然のように思っていたかも知れませんが、どうして春と秋にお祭りをしているのかを考えてみると、日本人が春に豊作を願うだけでなく、秋にはきちんと感謝の気持ちを表していることがわかります。これがわかると、何の気なしに食べていた、白米の価値が実感でき、何不自由なく新米を食べられる自分の境遇に感謝する気持ちが湧いてくることでしょう。
せっかく増えたお祭りが減ってしまう?お祭りを守るためには
せっかく増えたお祭りが減ってしまう?お祭りを守るためにはここまで紹介してきた何種類かのお祭りを見てわかるように、年の始めから終わりまで、お祭りを軸に昔の人は生活していました。
お祭りを集団で行うことで、地域社会はより一層団結したのです。
もちろん、娯楽の乏しかった時代には、お祭りは他に類のない娯楽でもありました。田植祭で行われた田植えの真似が、田楽となりましたし、神様に奉納される神楽なども昔の人の楽しみだったことは間違いないでしょう。
それなのに、今、日本中でお祭りが廃れ始めています。小さな地元のお祭りだけでなく、有名なお祭りでも資金不足、後継者不足で続けることが難しくなっています。理由としては、お祭り以外にも娯楽が増えたこと、私たちが農業から遠ざかってしまって、収穫を願ったり感謝したりしなくなったことが考えられますが、地域社会が無くなってしまったことも大きな原因でしょう。お祭りは遠くへ出かけて見物するものになってしまいました。
しかし、今の人間は娯楽に対して贅沢です。毎年同じだとすぐに飽きてしまいます。次から次へと新しい刺激を求めます。そっぽを向かれたお祭りは廃れるしかありません。その意味をはっきりと知っていれば、お祭りは廃れることはないでしょう。
本当は、お祭りは生活そのもので、私たちを強くまとめてくれるものです。色々と物騒な事件が起きる今、地域社会がもう1度団結することを求めている人は決して少なくないはずです。自分たちの住む場所でのお祭りをもう1度思い出してみてください。
まとめ
今回は、日本で行われているお祭りについて、その由来やさまざまな種類があることを紹介しました。神様に供え物を差し上げることを始め、神社では日々お祭りが行われていること、先祖の霊を慰めるお祭りが夏に行われていること、そして米の収穫に関してのお祭りがたくさんありました。
お祭りの種類が増えた理由を再確認すると、お祭りとともに生活してきた昔の人たちの思いがわかるようになります。そのとき、自分が生まれ育った場所のお祭りを大切にする気持ちを何人かでも思い出してくれたら、こんなに嬉しいことはありません。
今の世の中だからこそ、お祭りが必要なのです。