おわら風の盆という行事をご存知でしょうか?富山県に古くから伝わる伝統民謡である越中おわら節の調べに乗せて、優雅な踊りを夜通し舞うという全国的にも有名な行事です。
一度見るとその不思議な魅力にのめり込んでしまうという人も多いものです。
ここでは、そんなおわら風の盆について詳しくご紹介します。
おわら風の盆とは何?由来は?
おわら風の盆とは、富山県富山市の八尾地区で行われている富山を代表する祭りです。
「おわら」「風の盆」とも呼ばれます。
富山には「越中おわら節」という哀切感のある旋律を持つ曲がありますが、その音に乗せ、洗練された踊りを披露する祭りです。
踊り手の踊りには女踊りと男踊りがあり、女踊りは艶やかで優雅な舞い、
男踊りは勇壮な舞いを見せます。音を奏でるのは三味線や胡弓です。
2006年には、とやま文化財百選に選定されています。
おわら風の盆の起源は江戸時代とされていますが、明確な文献は残っていないため詳しくは分かりません。
元禄の頃、「町建御墨付文書」を取り戻した喜びから、町の人々が三日三晩踊り明かしたということに由来するとされています。
おわらとは、大笑いが変異したという説と、豊作を祈願した大藁というものが関係している説、小原村という村の娘が謳い始めたからという説など諸説あります。
風の盆とは、台風が多く来る時期に稲が強風の被害に遭わないよう豊作祈願が行われました。
この豊作祈願のことを言います。
おわら風の盆の意味は?
立春から二百十日目にあたる9月1日頃は、稲が開花する重要な時期です。
しかし、台風など気候の変化が起こりやすい時期でもあり、甚大な被害に見舞われることもあります。
昔から農村地帯にとっては油断できないこの日を厄日とし、各地で戒めの儀式が行われていました。
今でこそ、技術が進み台風予想ができるようになりましたが、かつてはこの日を警戒し、風神を鎮める祭りを行っていたのです。
おわら風の盆も、二百十日の風神を鎮め豊年を祈願するお祭りであると言えます。
また、それと同時に祖先供養の盆踊り、盂蘭盆会なども兼ねていると言われています。
おわら風の盆の運営団体は?
おわら風の盆という行事を運営しているのは、11の団体と保存会、越中八尾おわら道場です。
天満町、諏訪町、西新町、東新町、上新町、下新町、鏡町、今町、西町、東町、福島という11団体があり、その代表者により「富山県民謡越中八尾おわら保存会」が構成されています。
この保存会を本部とし、11団体が支部となり運営されています。
おわら風の盆に踊り手として参加するためには、保存会の承認が必要となります。
近年では、2013年に八尾高校の郷土芸能部が参加を認められました。
八尾高校の伝統芸能部では、地元の伝統芸能「おわら節」を継承する活動をしていて、保存会から唄や踊り、三味線、胡弓の指導も受けています。
一方、越中八尾おわら道場は、芸事であるおわらを現代風にアレンジするのではなく、本物の越中おわらを継承していくという目的で立ち上げられたものです。
表面上の人気だけで中身が伴わない越中おわらではなく、名実ともに本物の民謡を守る活動をしています。
おわら踊りの特徴
おわら風の盆では、さまざまな踊りが見られます。
踊りの体系としては、以下の三種類に大別されます。
⓵町流し:踊り手たちが演奏と共に町内を練り歩きます。
この町流しが、古くからおわらを伝えるものとされています。
②輪踊り:踊り手たちが輪になり踊ります。
③舞台踊り:各町などに設置されている特設ステージの上で見られる踊りです。
各町が独自に演技するもので、旧踊りや新踊りを組み込み自在に踊ります。
踊りにもさまざまな種類があります。
⓵豊年踊り:旧踊りとも呼ばれます。
農作業を模した踊りで、老若男女問わず誰でも楽しめる踊りです。
おわら風の盆の開催中に輪踊りとして観光客が参加して楽しめる踊りです。
風の盆期間外でも、富山市が観光客に行うおわら講習会で踊られたり、
県内の学校では運動会に踊られることもあります。
②新踊り:新踊りは男踊りと女踊りに分かれます。
男踊りは、かかし踊りとも呼ばれ、農作業を表現しています。
勇壮に見えるよう、所作の振りは大きくしています。
女踊りは、四季踊りとも呼ばれ、蛍狩りを表現しています。
上品に艶やかに見えるよう、しなやかに踊ります。
おわら風の盆の衣装は?
おわら風の盆で踊りを披露する地元の踊り手たちは、各町がデザインした浴衣や法被を身に付けています。
男性は法被に猿股と黒い足袋に草履、女性は浴衣に白い足袋に草履という姿ですが、男女共に編笠を目深に被るのが特徴です。
昔、踊り手が手ぬぐいで顔を隠していたことの名残だと言われています。
小中学生以下の子供は編笠を被りません。
公式行事中は、午後11時までは決められた衣装を着ますが、それ以降は着替えて町流しに出ても良いという風習もあります。
いつからいつまで行われているの?
おわら風の盆の本祭開催時期は、毎年9月1日から3日までです。
3日間かけて行われる祭りの来場者は約25万人にものぼります。
盆という名前から7~8月半ば頃を想像しますが、その時期とは異なるため注意が必要です。
おわら風の盆では、本祭前に前夜祭が行われます。
前夜祭の期間は8月20日から30日までの11日間です。
31日は本祭前日のため休みとなります。
開催期間中は、交通規制もあり市内各所に車の乗り入れができなくなります。
したがって、車で来訪を予定している場合は注意しましょう。
雨天の場合は、行事が中止または休止になります。
本祭の踊りが行われている最中は、非常に混み合い移動制限が行われることもあります。
思い通り歩けず、お手洗いに行けない、スリに遭うという話も聞かれますので、事前に対策しておきましょう。
前夜祭と本祭の違いは何?
おわら風の盆には、前夜祭と本祭があります。
前夜祭の期間中は、夕方から20時頃まで八尾観光会館で踊り方の教室や踊りの鑑賞会、風の盆の上映が有料で行われています。
その後、20時から22時頃まで11支部が持ち回りで町流しや輪踊りを行います。
輪踊りは一般観光客も参加できます。
本祭初日の9月1日と2日には、15時頃から各支部で町流しと輪踊りが始まります。
スケジュールでは23時までとなっていますが、見物客が去ってからも明け方までおわらを続けています。
17時から19時までは夕食時間のため踊りは休止になるのも特徴です。
上新町では夜になると一般観光客も加わって大輪踊りとなります。
各町の各所で輪踊りが見られて、そこに観光客が加われることもあります。
八尾観光会館や八尾小学校のグラウンドにある特設演舞場では、各町のおわらを鑑賞できるイベントが開かれ、有料ではあるものの毎年盛況です。
本祭の期間中には、何か所か設けられている特設ステージや各町の公民館などでも演舞を鑑賞することができます。
最終日の9月3日は、19時ごろから町流しや輪踊りが始まります。
特設ステージでは演舞が行われ、各町でも輪踊りが始まります。
この日も23時頃には終了となっていますが、終わりを惜しむように明け方までおわらが続けられます。
福島支部の踊り手達は、JR越中八尾駅にて4日の早朝に乗客を見送るおわら「見送りおわら」を行います。
前夜祭と本祭で一番異なるのは、やはり観客数です。
本祭では非常に混雑しますので、踊りを目の前で見たいという希望があれば前夜祭を狙うと良いでしょう。
また、夜通しおわらが見られるのは本祭のみになります。
本祭にはメイン会場の周囲に数百もの屋台が出店します。
お弁当屋台も多く、ご当地グルメも楽しめます。
夕食タイムの前に購入しておくとスムーズです。
前夜祭が見どころって本当?
おわら風の盆は前夜祭が見どころという話をよく聞きます。
しかし、それは本当なのでしょうか?
おわら風の盆は、本祭3日間が始まる前に11日間に渡り前夜祭が行われます。
前夜祭は各町で行う練習の延長として始まりました。
本祭は非常に混み合いますが、前夜祭ではそう混み合わず踊りが見られるため、おわらを心ゆくまでゆっくり楽しめると観光PRでも前夜祭を全面的におススメしています。
前夜祭でも、おわら風の盆の魅力は十分感じられるため、本祭による混雑を懸念する人は前夜祭に出向いてみてもいいかもしれません。
八尾観光会館に設けられた特設会場では、前夜祭ステージが開催され、さまざまな催しが行われます。
入場は有料になり、1日500名限定となりますが、とても人気があります。
おわら踊りの講習会もあり、前夜祭で踊りを学び、本祭で踊るという観光客もたくさんいます。
また、本祭当日は近隣の宿泊施設を抑えるのは難しいですが、前夜祭なら空いている可能性もあります。
車での来訪はできるの?
おわら風の盆へ車で来訪することも可能です。
しかし、本祭期間は祭りの中心部に交通規制が掛かり、無理に近くまで入ろうとすると長時間に渡り立往生することになりかねません。
中心部から数キロ離れた場所に臨時駐車場が設けられ、そこからシャトルバスが運行されているため、それに乗り換え祭りに向かう必要があります。
よって、臨時駐車場の位置やシャトルバスの運行時間は事前に調査しておきましょう。
また、おわら風の盆の際、宿泊して夜通し楽しみたいという観光客も多いものです。
ただし、風の盆が開催される八尾地域には小規模なビジネスホテル、旅館、民宿などあわせて1,000人程の受入れしかできません。
そのため、少し離れた富山市中心部や宇奈月温泉、庄川温泉、更に遠くの金沢や高山市など県外の宿泊も余儀なくされる場合があります。
宿泊を予定している場合は、早めの予約をおススメします。
まとめ
おわら風の盆は、全国の民謡ファンから絶大な人気を集める行事です。
豊作祈願の意味合いが強い行事ですが、夜通し行われるおわら踊りは、夏の終わりの夜、とても幻想的に映えます。
本祭前に行われる前夜祭では、一般観光客も練習に参加できますし、混み合わず近くで踊りが見られます。
北陸新幹線の開通により首都圏からも富山に来訪しやすくなりました。
民謡ファンならずとも是非、一度訪れてみてはいかがでしょうか。