歓送迎会や送別会など、誰かを送り出す場所では、「はなむけの言葉」や「はなむけの品」という言葉が使われます。
これがどんな意味なのか理解していないと、使い方を間違えて見当外れなことをしてしまうかも知れません。
今回は「はなむけ」の意味、「はなむけの言葉」の注意点、また「はなむけの品」にピッタリの品物について解説していきます。
馬の鼻との関係は?「はなむけ」の意味!
「はなむけ」とは、旅立ちや新たな門出をしようとする人を励まし、祝福する目的で、言葉をかけたり、贈り物をしたりすることです。
そこで「はなむけの言葉」や「はなむけの品」というようになりました。
「はなむけ」は、平安時代の文学にも登場します。
当時遠方に旅立つ際には、交通手段は馬が多く、見送る人たちが旅立つ人の馬の鼻先を、行き先に向けてあげる習慣がありました。これを馬の鼻向け(うまのはなむけ)と呼んだのです。
この由来からもわかるように、「はなむけ」は言葉と品、両方とも旅立ちや出発する人を送り出すときのものです。
歓送迎会は送り出す人と迎える人の両方がいるので、使い方を間違えないようにしましょう。
新人や新入生、つまり迎える人に対しての言葉や贈り物は、「はなむけ」にはなりません。これさえ間違えなければ、目下の人が目上の人に対して「はなむけ」を使っても失礼にはなりません。
転勤する上司に対して部下は「はなむけの言葉」で感謝の気持ちを表すことができます。
「はなむけの言葉」に必要なのは、祝福と感謝、そして激励の気持ち!
「はなむけの言葉」は様々な機会で必要とされます。
学生なら卒業、二十歳の会(旧:成人式)、社会人になってからは転勤、転職、退職はもちろん、結婚や引っ越しの際も「はなむけの言葉」を贈られると嬉しく、新生活へのやる気が起こります。
「はなむけの言葉」は、歓送迎会などの集まりでスピーチとして語られることもありますし、手紙やカードなどに文章として書かれることもあります。
どちらの場合でも、祝福の言葉から始めることを忘れないようにしましょう。
そして、自分の相手への思いや感謝の気持ちを伝え、最後は新しい生活への激励の言葉で締めくくります。
例えば転勤する同僚に対してなら、このようにします。
『ご栄転おめでとうございます。〇〇さんには毎日お世話になりました。
とても頼りになる〇〇さんと、一緒に仕事をするのが楽しかったです。
〇〇さんと仕事をした日々は私のよい思い出です。本当にありがとうございました。今後のご活躍をお祈りしています』
短い文章の中に、祝福と感謝、そして励ましの気持ちをすべて込めることができます。心のこもった言葉は、これから出発し、新生活が控えている人にとっては、何ものにもかえがたい思い出になります。緊張して嫌だと思うかも知れませんが、機会があるなら「はなむけの言葉」を贈ってみましょう。一人では気が重いなら、みなで寄せ書きを贈ってみましょう。
昔ながらの色紙に書くのもよいですが、メッセージツリーなら飾る楽しさもあってお勧めです。
色紙は平面ですが、メッセージツリーは立体です。
花やフルーツの形をしたカードにメッセージを書いて、木の形をした台紙に貼り付けていくことで、桜やリンゴなど1本の木を完成させます。
色紙は一人ひとりに順番に書いてもらわなくてはなりませんが、メッセージツリーなら、前もってカードを配っておけば一斉にメッセージを書いてもらえます。これなら、短時間で大勢のメッセージが集まります。
「はなむけの言葉」がきっと新生活に花を添えてくれますよ。
「はなむけの品」にピッタリなのは花束?でも配慮が必要?
これから送り出す人に、何か形に残る記念の品を贈りたいと思うのは当然です。
そんなときに贈る品物が「はなむけの品」です。
餞別もよく似たもので、「はなむけ」として贈る金品の意味がありますが、こちらはお金を贈ることが一般的なようです。
何を贈ったらよいか迷う人が多いでしょうが、まず考えられるのは花束です。
品物はもらったときは嬉しくても、その人の好みがあり、後で持て余さないとはいえません。
花束やスイーツのような消費してなくなるものがちょうどよいでしょう。
ただ花束を贈る際にも配慮が必要です。
花束を受け取った人がどうやって自宅に持って帰るのかを考えてあげてください。自家用車で通勤する人なら問題はありませんが、長い距離を電車で移動する人に大きすぎる花束は邪魔ですし、 周りの人に迷惑になるかも知れません。
同じ理由で香りがきつい花も避けた方が無難です。また大きくて豪華な花束をもらって嬉しかったけれど、自宅には花束に見合うだけの大きさの花瓶がなかった、というのもよく聞く話です。
アレンジメントフラワーやプリザーブドフラワーなら、花瓶の心配がない、持ち運びに便利、長持ちするなど、生花の花束にはない利点があります。
花束を贈りたいと思う人は、検討する価値がありますよ。
贈ると相手を悩ませる?「はなむけの品」のタブーとは
花束やスイーツではなく、相手の手元に残る品物がよいと思うなら、場所を取らず(場所を取らないと、持っていてもらえる可能性があがります)にずっと使い続けられるものを考えましょう。
転勤や転職でこれからも仕事をする人には、名刺入れや上質なハンカチなどを選ぶとよいでしょう。ハンカチは手切れに通じるとして、プレゼントに適さないと考える人もいます。心配なときは、先輩がお好きなブランドのものを選びましたなどと、一言メッセージを添えましょう。
あまり選ばないと思いますが、はさみや包丁などの刃物も「縁を切る」に通じると考える人がいます。これから送り出す人に、受け取ったときにいらぬ心配をさせる品物を贈るのは、親切とはいえません。これから送り出す人、つまり別れる人であっても、ケンカ別れをする相手とは違います。顔を突き合わせる機会は減っても、よい関係を残しておきたいのが「はなむけの品」を贈る相手です。
せっかく贈るわけですから、どんな品物を贈るとタブーになるのか、事前にネットなどで調べておくとよいですね。
結婚や引っ越しをする人には、欲しい品物をはっきり聞くのもよいでしょう。新生活に役立つ品を贈ることができます。
お餞別も「はなむけ」の品も、お返しをする必要はありません。
お返しがないことを頭に入れて、贈る品物を選ぶようにしましょう。
余りにも高額な品物を贈られて、お返しをせざるを得ないと思わせてしまうのは、これから新生活が始まる相手に対して負担をかけることになってしまいますから、注意が必要ですね。
「はなむけの品」にのし紙をかけたい!「餞」と「贐」、どちらの漢字を使うべき?
目上の人に贈る場合、「はなむけの品」にのし紙をかけたいこともあるでしょう。
のし紙の表書きには何と書くべきでしょうか。
表書きには「御はなむけ」と書きます。
「はなむけ」は漢字で書くと「餞」、または「贐」です。
今は同じ意味で使われる字ですが、もともと餞はささやかな食事を意味する字で、旅立ちや出発の際の、ささやかな宴を催すことを表したようです。贐はお金をかけることを意味しています。
結婚や栄転などで盛大なお祝いを伴うお別れのときには、あえてこちらの字を使う人もいるようです。
どちらの字を使っても間違いとはいえませんが、迷ってしまうときは、「はなむけ」はひらがなのままにしておきましょう。
「はなむけ」は、葬儀の際には不謹慎?使うならこの言葉!
葬儀の際に「本当によい葬儀ができて、〇〇さん(故人の名前)によいはなむけができましたね」などといっているのを耳にすることがあります。
葬儀の際に、この言葉を聞くと違和感を覚える人も多いようです。
「はなむけ」は旅立ちや出発を連想させるため、おめでたい響きを感じる人もいるからです。
「はなむけ」の由来を花向けだと勘違いしていることも、葬儀の際に違和感を覚える原因になっています。先程も説明した通り、「はなむけ」の由来は、馬の鼻を行先に向けること(鼻向け)です。
これから旅立つ人を送り出すときに使う言葉が「はなむけ」です。この言葉自体がおめでたいわけではないので、葬儀の際に使っても問題はありません。
それに葬儀も旅立ちの儀式の一つと考えることもできますね。ですが「はなむけ」を使って誤解されたくない人は、別の言葉を使ってください。
葬儀の際に使うなら「手向け(たむけ)」がよいでしょう。
手向けも「はなむけ」と同じ意味を持っていますが、死者、あるいは神仏の前に物を供えるという意味でも使われる言葉です。
霊前に花を手向けるなどというのを聞いたことがある人もいるでしょう。
葬儀の際に使うなら、「手向け」がお勧めです。
まとめ
今回は「はなむけ」について解説しました。
「はなむけ」の由来や意味、使い方まで説明しましたから、もう間違えないで済みますね。
人は生きていると何度か出会いや別れを繰り返します。「はなむけ」は別れていく人へ贈りますが、贈られる人だけではなく、贈る人にとっても嬉しい思いが後に残ります。
自分の思いを込めた「はなむけ」が誰かの出発を彩り、新しい生活への力になるかも知れない、そう考えると何だかワクワクします。自分まで新たなスタートが切れそうな気がしてきます。
贈っても贈られても嬉しくなる「はなむけ」を、ぜひ大切にして生活してください。きっと「はなむけ」は楽しい思い出を作ってくれますよ。