忙しい年末の時期に入ると、事納めの時期がやってきて準備をしていきます。
お正月をゆっくりと過ごし、年神様が気持ちよくやって来られるよう準備をおこなうためにも事納めをしたらすぐに準備に入るのが大切です。
事納めと聞くと、同じように聞く機会が増えるのが事八日や針供養といったワードです。
一体事納めはいつのことを言うのか、意味や読み方なども気になりますよね。
針供養や事八日に関しても、由来を把握しておきましょう。
今回は事納めの意味や読み方、針供養などはいつおこなうのかについて詳しくご紹介していきます。
事納めの意味や読み方とは?
事納めは聞いたことがあってもどんな意味があるのか、読み方などがハッキリしないという人も多いかもしれませんね。
事納めの読み方は「ことおさめ」と読みます。
年末になると「仕事納め」など〇〇納めという言葉を使いますよね。
「納め」には物事を終える、区切りをつけるといった意味があるのです。
年末のお休みに入るとまもなく年が明けて、新年を迎えます。
農家ではお正月にはお休みとなるので、農業のための道具などをいったん片付けてしまうのです。
お正月を迎えるために、農業をいったんストップすることを「事納め」というのですね。
事納めは農家の人が仕事をひと段落させることをいいますが、逆の考えをするならお正月に入る準備を開始するとも取れますよね。
実は物事の終わりなのか始まりなのか、視点を変えると「事納め」が「事始め」に逆転することもあるのです。
事納めと針供養の関係
事納めは具体的にいつのことをいうのか、実は「8日」がキーワードになっているのです。
農家がお正月のために仕事をひと段落させるのが12月8日、お正月を終えて再び農業を再開するのが2月8日なんですね。
ふたつの「8日」を事八日(ことようか)と呼びます。
物事の始まり、あるいは終わりの日とも言うのですが「物忌み」といってあまり活動しない方が良い日とも言われているのです。
昔は女性の仕事といえば裁縫仕事で、針を使っていました。
針は毎日硬いものを刺して、12月8日にくる事納めまで役目を全うしてくれているのです。
事納めとなったら、毎日酷使して曲がったり古くなったりした針も供養してあげる必要があるのですね。
事納めに針供養をすると女性はますます裁縫の腕が上達して仕事がはかどるだけでなく、なんと色白の美人になれるとも。
針供養のやり方はお豆腐やこんにゃくなどに針を刺して、神社などに奉納、あるいは川に流して供養します。
なぜ柔らかい豆腐やこんにゃくに針を刺すのか、いつもは硬い布などを刺してばかりで疲れた針をねぎらうのが目的なんですね。
針のことを考えて「お疲れさまでした」という気持ちを込めて事納めしたら供養するのです。
針供養は東京・浅草の浅草寺などが有名ですよね。
現代では女性が裁縫をするのは、時間もかかるため趣味の範囲で行うことが増えてきました。
趣味や子供のものを作るなどで裁縫をする女性は、ぜひ事納めに針供養をしてみると良いかもしれません。
事納めの日付になった理由
事納めは12月と2月の8日(事八日)とされていますが、お正月の準備をする目的で12月になっているのはなんとなく分かります。
一方で2月はとっくにお正月も終わっており、そもそもどうして1月でないのか気になりますよね。
2月に事八日が設定された経緯について、詳しくみていきましょう。
旧暦の2月8日といえば、現在でいうところの3月半ばですね。
農家にとっては、冬が明けて初めて種まきをしたり苗の植え付けをおこなったりする季節ではないでしょうか。
旧暦の1月8日だと現在では2月の半ばとなり、まだまだ寒さがピークの頃なので農業の再開はまだまだといった感じです。
お正月に関するものが全て片付いて、新たに一年をスタートさせようという気持ちになるには3月半ばくらいの時期が最も適しているのです。
少しずつ暖かくなってきて、活動を再開したくなる気持ちにもなりやすいですよね。
事納めに設定された旧暦の2月は、農業の再開時期に適しているからという理由があったのです。
農家にとっての事納めはいつ?
実は事納めや事始めには、それぞれの立場の視点によって12月なのか2月なのかが変わってくるという特徴があります。
農家の立場から考えた事納めは、仕事納めとも言い換えられるので12月8日とも考えられるのです。
まもなくお正月に入るのと、冬も本番になって農作物も育たなくなるので農家はいったん業務をストップします。
農家にとって新年を迎える前の仕事納めとなっているのが、12月8日なのですね。
2月8日まで農家はゆっくり休み、来たる春の農業再開を心待ちにするのです。
事始めには、少しずつ春の風が吹く中で農業を再開して一年の仕事がスタートして活気付いています。
農家の立場という事で主に人間側の考えだと思われがちですが、実は神様の種類が農業の神様だったという言い方もできます。
神様にとっての事納めはいつ?
農家など人間や農業の神様の立場から考えると、年末の12月8日に事納めというのは納得がいきます。
一方で神様にはもうひとつ種類があり、年神様という場合もあるのです。
年神様の立場から考えた時には、時期が入れ替わって考え方も変わります。
年神様はお正月に各家にくることで有名ですが、人間は年神様が日時に家にこられるように飾りつけなどをしていきます。
言い換えると年神様が活動を始めるのは、人間が事納めをしてからなのです。
そして2月8日には役目を終えて帰っていくので、年神様の事納めと考えられますね。
人間サイドでは2月から12月まで農業は続き、長い期間仕事をしていきます。
神様サイドでは12月から2月までの短期間で、お正月に関連する仕事をこなすのです。
事納めに食べたい食べ物とは?
事納めにはお正月の準備を始め、女性は針供養をするなど少しずつ休みモードに切り替えていきます。
準備や針供養のほかに、事納めだからこそ行いたいことはあるのか気になりますよね。
実は事納めに親しまれている食べ物があることを、ご存知でしょうか。
だいこん、にんじん、ごぼう、里芋などの根菜と一緒に小豆、こんにゃくといった6種類の具材を煮込んで作る味噌汁があります。
事八日に食べる具沢山味噌汁のことを「六質汁」や「お事汁」といい、食べると病気知らずで健康に過ごせると言い伝えられています。
根菜には体を内側から温める作用もあるので、風邪をひきにくくなって無病息災にはピッタリな食べ物ですよね。
もちろん6種類の具材だけでは足りないという人は、どんどん足していっても問題ありません。
自分好みの具材で、美味しく健康になれたら嬉しいですよね。
年神様の事納めまでにするべき4つのこと
年神様の立場から考える事納めは、お正月を過ぎたら役目を全て果たして家を去る2月8日なんですね。
短い期間しか家にいない年神様が気持ちよく事納めできるようにするには、人間はどんなことをすれば良いのでしょうか。
事納めまでにしておきたいことを、主に4つみていきましょう。
・七草がゆを食べる
七草がゆといえば1月7日の朝に食べることで有名ですが、実は準備は5日から始まるのです。
5日には具材である七草を採ってきて、6日の夜に年神様にお供えをします。
7日になったら、お正月飾りを片付ける前に七草がゆをいただきましょう。
七草がゆは食べると一年風邪をひかないといわれており、お正月の疲れた胃腸をいたわってくれます。
・お正月飾りを片付ける
1月7日(関西では15日)までで松の内が終わるので、七草がゆを食べ終わったら合わせてお正月飾りを片付けましょう。
1日でも多く飾っておきたいという気持ちもわかりますが、季節の飾りはダラダラと飾ってしまうと良くないのです。
年神様が宿るといわれているお正月飾りは、松の内までに片付けないと年神様がいつまでたっても安心して帰ることができません。
年神様が滞りなく事納めをするためにはお正月の雰囲気はさっさと切り上げて、新しい空気を入れていく必要があるのですね。
・鏡開きをする
松の内が明けて、1月11日(関西では20日)には鏡開きをします。
飾っていたお正月飾りとともにあった鏡餅を開いて、みんなで食べるのです。
長く置いてあった鏡餅は硬く乾燥していますが、お湯につけるなどして必ず手でちぎります。
年神様に感謝の気持ちを込めながら食べるのが良いでしょう。
・どんど焼きに持ち込む
松の内までに片付けたお正月飾りですが、どんど焼きに持ち込んでお焚き上げをしてもらいます。
各神社で1月15日あたりにおこなっているので、お正月飾りやお札などを持ち込みましょう。
どんど焼きで焼いたお餅を食べると、一年風邪をひかないと言い伝えられています。
まとめ
事納めの意味や読み方、針供養などはいつおこなうのかについて詳しくご紹介してきました。
事納めの読み方は「ことおさめ」で、お正月を迎えるために農家が仕事をひと段落させる意味があります。
時期は農家の立場では12月8日、年神様の立場では2月8日です。
年神様のおもてなしの準備以外にも女性の針供養、お事汁を食べるなどさまざまなイベントがあるんですね。
神様が事納めを滞りなくおこなうためには、人間が速やかにお正月が終わった後片付けなどをおこなう必要があります。
事納めの意味を正しく理解して、一年を気持ちよく終えられるようにしていきたいですね。