手紙などで啓蟄の季節、などと見かけることがあります。
なんとなく目にしたり耳にしたりすることはあっても、読み方も意味もよくわからないという人も多いですよね。
意味がわかると啓蟄の季節をより感じることができ、意識ができます。
どんな日なのかを把握した上で、おすすめの食べ物やぜひしておきたい行事を押さえておきたいところです。
今回は啓蟄の読み方や意味、おすすめの食べ物や行事について詳しくご紹介していきます。
啓蟄の読み方とは?
啓蟄と書かれていても、読み方を知らなくて読めないという人が多いですよね。
啓…までは読めても「蟄」が難しいので、つい話題を避けてしまいます。
啓蟄は季節に関係する言葉なので、読み方がわからないからと避けてしまうのはとても勿体ないことなのです。
意味をご紹介する前に、まずは啓蟄の読み方からみていきましょう。
啓蟄は「けいちつ」と読みます。
元々知っている人同士でないとなかなか会話ややり取りで登場することはありませんが、知っていると感心されることが多いでしょう。
使う機会自体は少ないですが、頭の片隅に入れておきたいですね。
啓蟄の意味とは?
啓蟄の読み方がわかったところで、意味について説明していきます。
啓蟄は中国から伝わった、季節を24に分けるための「二十四節気」のひとつです。
言われてみれば中国から伝わったようなイメージは強いですが、詳しい意味を知るには二十四節気を理解している必要があります。
二十四節気の由来から啓蟄の意味について、どんな言葉なのかをみていきましょう。
二十四節気って何?
二十四節気は中国から伝わり、一年の季節を24に分けたものです。
日本での一般的な季節の分け方は春夏秋冬の四季ですが、さらに細かく分けています。
古代中国では元々太陰暦が使われており、月の満ち欠けのみをもとに一年を判断していました。
太陰暦は新月から次の新月までを1ヶ月とカウントしていましたが、実は新月から新月だと1ヶ月は29日と12時間ほどになります。
太陰暦の一年は364日となり、年数を重ねると丸々1ヶ月くらい季節がズレてしまうのです。
1ヶ月くらいならまだ良いものの、ひどいと半年くらい差がついてしまう自体に陥ります。
季節感がまるでなくなってしまうために、なんとかならないかと考えられたのが二十四節気なのです。
一年を24に分けて、季節感を出したものが現代にまで伝わっています。
二十四節気は2月4日頃の立春からスタートし、1月20日頃の大寒までの一年のことをいいます。
2月4日には各地の中華街で旧正月のイベントが開催されていますが、旧正月の由来は二十四節気において一年の始まりだからなのですね。
啓蟄は二十四節気の何番目なのかというと立春、雨水と続いて3番目となります。
どんな意味がある?
啓蟄にはどんな意味があるのか、二十四節気の順番から読み取ることができます。
二十四節気の3番目にあたる啓蟄の次には、多くの人が知っている春分がやってきます。
春分の日は祝日にもなっているくらいで、多くの人が「春がやってきた」と実感する時期ではないでしょうか。
春が近いということから啓蟄は寒さ厳しい冬の間眠っていた虫が、穴から顔を出してくる意味を持ちます。
冬は気温も低いので、外に出ても虫の姿を見ることも少ないですよね。
動物でも、冬の間は冬眠していて見かけないという種類も多いです。
春が少しずつ近づいてきて今か今かと外に出るのを待ちわびている生き物たちが、春が近づいて外の世界に再び出てくる様子が啓蟄という言葉に込められています。
「啓」は「啓発」などの言葉にも使われるように、開かれるといった意味を持っています。
一方で「蟄」は、虫などの生き物が土の中に隠れている様子を意味するのです。
寒くて土の中に隠れていた虫や生き物たちが暖かくなって開かれ、外に出てくる様子が啓蟄となります。、
啓蟄の時期とは?
啓蟄の意味が分かったところで、具体的な時期はいつ頃なのでしょうか。
啓蟄は二十四節気の3番目、春分の前ということが分かったので春の一歩手前というのは想像ができます。
日にちで表される場合は3月5〜6日となりますが、二十四節気の期間でいうと3月6日〜3月20日までです。
春分の前日までが啓蟄なので春分の日によって日にちが前後しますが、基本的なベースは変わりません。
太陽の通る「黄道」という、赤道を空に延長した線の経度が345度となるのが啓蟄です。
3月の始まりといえば、まだまだ寒い日もあれば暖かくて春の息吹を感じさせる日もある三寒四温の季節。
変わりやすい気候の中で、少しでも啓蟄にちなんで「小さい春」を見つけていきたいですね。
啓蟄の終盤には子供たちは春休みに入るくらいなので、寒さからようやく解放される外で思いっきり遊ぶ姿が見られそうです。
大人からしてもようやく感染症や寒さが落ち着いてきて、外で活動しようかなという上向きの気持ちになる時期でしょう。
心身ともに前向きになれる時期なので、晴れた日はぜひ外に出て春の空気を吸いたいところです。
啓蟄の書き方が日本と中国で違う
啓蟄は簡単に読めるような言葉ではなく、中国からやってきた言葉だと聞いて「なるほど」と思う人も多いでしょう。
二十四節気が生まれた中国での啓蟄は漢字が少々異なり、二十四節気の中で唯一日本と書き方が違う季節なのです。
中国での書き方は「驚蟄」なのですが、どうして日本での書き方と異なるのでしょうか。
実は漢の時代の皇帝の名前に「啓」の字がすでに使われていたので、さすがに皇帝の名前を二十四節気に使うのは申し訳ないということで「驚」が使われました。
時代は変わって唐に入ってから、一度「啓蟄」と名前を変えたことがあります。
名前が変わってしっくりは来たものの、やはり今まで使い慣れている「驚蟄」の方が良いのでは?という意見が意外にも多かったのですね。
日本では暦の関係上、現在も使っている啓蟄になっていますが中国や台湾では驚蟄が使われています。
両方とも正しい言葉なので、間違った字が使われていると誤解をしないようにしましょう。
啓蟄ならではの食べ物や行事はある?
二十四節気といえば大寒であれば当日の朝に産まれた卵を食べるなど各々で食べておきたい食べ物や、やっておきたい行事があります。
啓蟄の季節にも、他の季節と同じく恒例の食べ物や行事はあるのでしょうか。
実は啓蟄だからこそというような食べ物や行事は、特にはありません。
決められたような食べ物や行事はないのですが、春の始まりだからこそやっておきたいことはあります。
地域によっては啓蟄におこなう恒例の慣習もあるようなので、詳しく見ていきましょう。
菰(こも)を丸ごと焼く
啓蟄は冬に眠っていた虫たちが顔を出してくる時期ですが、春の訪れを告げる一方で農作業にとっては虫は大敵です。
春から始まる農作業の際に虫が大量発生しないようにする、恒例の慣習があります。
本格的な冬になる前に、松の木に菰(こも)を巻いていきます。
まだまだ雪深い秋田の風景を見るとき、松の木に腹巻のように巻いてある藁を見たことがあるでしょうか。
藁を編んで作られた物が菰で、啓蟄の時期に暖かい菰の中に入り込んだ害虫ごと燃やしてしまうのです。
害虫駆除が一気にできるため、春からの農作業がスムーズにいく…はずだったのですが。
実は菰の中に入り込むのは害虫ではなくクモばかりで、あまり農作業をスムーズに始めるための役には立っていなかったことが判明したのです。
少しショッキングな事実ではありますが、松の木に巻かれた菰が季節を感じるとの声から効果がなくても慣習としては続いています。
春の食べられる野草を探そう
代わりと言ってはなんですが、ふきのとうやタラの芽などの春の野草を探してみてはいかがでしょうか。
天ぷらにすると、美味しさと苦味のバランスが良いのでより春を感じることができます。
もちろん八百屋やスーパーなどでも春の味覚が店頭に並ぶので、一年に一度今しか味わえない美味しい食べ物を堪能しましょう。
雛人形、まだ出しっ放し?
啓蟄は3月6日〜3月20日までですが、啓蟄の少し前には3月3日の桃の節句がありますよね。
女の子がいる家庭では、桃の節句に合わせて雛人形を飾っているところも多いです。
雛人形は桃の節句が過ぎたら、本来であれば速やかに片付けてしまうのが良いとされています。
言い伝えとしては雛人形をしまうのが遅れると、婚期が遅れてしまうと言われていますよね。
もし3月3日に片付け忘れてしまったら、啓蟄の時期を目安に片付けてしまいましょう。
啓蟄までにしまえば、特に言い伝えを気にする必要はありません。
あまり長い間外に出していると、雛人形が色褪せて劣化してしまうので天気の良い日に片付けるようにしてください。
啓蟄の手紙などでの使い方
啓蟄は普段あまり使うことはない言葉ではありますが、手紙の冒頭などで季節に触れる際に使用することができます。
啓蟄なんていう言葉を知っているのかと、感心されることもあるかもしれません。
手紙で啓蟄を使う場合には、まず春も間近で暖かくなってきたことを付け加えるのが重要です。
「冬の寒さも和らぎ、すっかり春の暖かさがやってきました。
同時に虫たちも、暖かさを求めて地中から出てくる啓蟄の時期となりましたね」
啓蟄とはどんな意味の言葉なのかをさりげなく伝えながら手紙に書くことで、相手方も「啓蟄は春に虫たちが出てくる季節のことを言うのだな」とわかります。
メールなどの連絡ツールがたくさんある現代において手紙はほとんど書かなくなったという人が多いですが、ぜひ機会があったら使ってみてくださいね。
まとめ
啓蟄の読み方や意味、おすすめの食べ物や行事について詳しくご紹介してきました。
啓蟄の読み方は「けいちつ」で、二十四節気の3番目にくる季節です。
春が間近に迫って暖かくなってきたことで、土の中にいた虫たちが出てくる意味があります。
啓蟄ならではの食べ物や行事は特にありませんが、春の野草を探したり菰焼きなどの行事に参加するのも良いですね。
手紙を書く際に啓蟄を用いた文例もご紹介してきたので、機会があったら参考にしてみてください。
啓蟄は冬の寒さが緩んで春が来る手前の、ワクワクする季節なのでぜひ意識しましょう。