カレンダーに載っていることにもわかることと、わからないことがあります。
例えば冬至や夏至は、太陽の出ている時間が1年で1番短い日と長い日です。これは知っている人が多いでしょう。
では、小満というのはどうでしょうか。
カレンダーにはちょくちょくよくわからない言葉が載っていますが、役に立つから載っているはずです。小満には、満足の満という字が使われているため、何となく縁起がよいような気がしますが、実際はどんな日なのでしょうか。
今回は小満の読み方や意味、小満の頃に食べるとよい食べ物などについて解説します。
小満の読み方と意味!小満はいつ頃なの
小満は二十四節気の8番目にあたります。
読み方は「しょうまん」です。現在の暦では毎年5月21日頃が小満ですが、小満は次の節気までの期間のことを表すこともあります。次の節気、芒種の前日までが小満の期間にあたります。5月21日頃から6月4日頃までが小満の期間ということになります。
江戸時代の暦についての書物「暦便覧」には、小満の意味について、気候がよくなり草木が満ち足りて成長する時期だと説明されています。成長しているけれど、まだ収穫までに至っていないために、すべて満ち足りている大満足ではなく、小満という名前になったのでしょう。
確かに小満の頃には、色々な作物がすくすくと育ち、小麦も色づき始めます。
それを見て一安心する人も多かったことでしょう。小満の頃は、作物の順調な成長を見て安心する時期だったのですね。農家ではないから、作物の成長が関係ないわけではありません。順調に作物が成長し、収穫できることはみなの生活を安定させてくれます。作物が収穫できなければ、いくらお金を出しても食べ物が手に入らなくなります。そんな状況では誰も安心して生活できません。
小満の頃に、作物が順調に成長している姿が見られれば、その後の収穫を予想して、みなが安心できるというわけです。
小満があるのに大満はない!関係しているのは縁起?
二十四節気では大寒と小寒など対になっている名前がいくつかあります。
小満にも対になる大満があってもよいのですが、それはありません。
二十四節気を作った人々は、小満の次に大満を持って来たかったのかも知れませんが、季節的にそれは叶いませんでした。
小満の次は先程も紹介したように芒種です。
芒は「すすき」と読みますが、広くイネ科の植物を意味していますから、芒種はイネ科の植物の種をまく時期ということになります。すべて満ち足りて大満足で収穫できる時期ではなかったのです。
そこで大満がない理由として、全て満ち足りた状況は縁起がよくないから、という説が生まれました。頂点までいってしまうと後は下るしかありません。すべて満ち足りてしまうと、後は減っていく一方だというわけです。
この説が本当かどうかはわかりませんが、二十四節気のほかの節気の名前は、みな自然の動きや季節の移り変わりに関係のあるものばかりです。小満だけがほかとは明らかに違う系統の名前です。
大満は縁起がよくないという説を後付けしてでも、小満という名前をどうしても使いたかった理由があったのかも知れません。
また小満は友引にあたることが多いため、特別に関係があるといわれることもあります。日本には暦の日を6種の吉日と凶日に分けた六曜というものがあり、未だにカレンダーにも載せられています。大安や仏滅は有名ですね。
友引も六曜の1つで、友を引くといわれているため、葬儀はしない方がよい日だとされていますが、六曜は6日を1つの周期として考えて、大安や仏滅などを割り振っているだけです。小満が友引にあたるのも偶然です。
ほかの節気とは違う系統の名前をつけられたために、小満には縁起のよし悪しを噂される、秘密めいた魅力が生まれたようです。
切っても切れない!小満と梅雨の関係
沖縄では「小満芒種」という言葉が梅雨を意味しています。
本州よりも梅雨入りが早い沖縄では小満と芒種の間に梅雨に入ることが多いため、小満芒種が梅雨を意味する言葉になりました。沖縄でもあまり使われなくなった言葉だそうですが、現在でも農作物の管理や熱中症対策などへの注意喚起のために、新聞に取り上げられることもあるようです。
本州でも「走り梅雨」と表現される天候になることがあります。本格的な梅雨ではありませんが、沖縄の梅雨に伴い、本州の南岸にも前線が停滞することがあります。この前線がまるで梅雨のような天候の原因になります。普通はその後しばらく晴天が続いてから梅雨入りとなることが多いのですが、走り梅雨が長引いてそのまま梅雨入りする年もあるそうです。
小満は梅雨と切っても切れない関係を持っているわけですが、作物だけではなく植物全体に雨は欠かせないものです。梅雨と関係があることからも、小満は植物の成長を感じるための時期になりました。
小満の季語と食べ物!共通点は麦!
小満に馴染みの深い食べ物は、麦です。
小満の末候は「麦秋至」で、麦の収穫時期です。
小満の末候は現代の暦では5月31日頃から6月4日頃なので、麦秋とは不思議ですが、秋は季節のことだけを指すのではありません。
江戸時代の書物には、秋とは穀物の収穫時期だと書かれています。だから麦の収穫時期である初夏が、麦にとっての秋になり、麦秋は初夏の季語になっています。
そのほか麦刈(むぎかり)、麦打(むぎうち)、麦扱(むぎこき)など麦の収穫に関する言葉はみな初夏の季語になっています。
麦が原料の食べ物は、私たちの周りに1年中あるので、あまり意識はしませんが、やはりとれたての麦で作られる初夏から美味しくなるそうです。
喉が乾く時期に嬉しい麦茶やビール、健康志向のために人気が出ている麦飯、うどんやパンはみな麦が原料ですから、小満を迎えたらドンドン食べてみてください。
麦飯に使われる大麦には、水溶性と不溶性の2種類の食物繊維が豊富に含まれています。これらには便秘の解消やダイエットなどに効果があるといわれていますし、コレステロール値を低下させる効果もあるそうです。
健康的な食生活を目指す人に麦飯が人気なのも納得できますね。
このようなことがわかる前から麦を食べてきた昔の人の知恵には、今更ながら感心させられます。
小満の頃の大切な行事「衣替え」で、清々しさを味わう!
小満の頃の行事として、6月1日の衣替えがあります。
衣替えが行事なのかと思う人がいるかも知れませんが、始まりは平安時代といわれているほどの由緒ある行事です。
衣替えは平安時代の宮中行事でした。
当時は婦人の持つ扇まで、夏と冬では取り替えられていました。
江戸時代、武家の衣替えは年4回行われていたので、庶民もこれに習いましたが、明治に入って太陽暦が採用されたのを機会に、年2回になりました。
もうよく知られていますが、6月1日からは夏服、10月1日からは冬服になります。衣替えは最初学校の制服を対象に行われ、それが一般に浸透したといわれています。
北海道と沖縄では衣替えの季節にはずれがありますが、これは仕方のないことだといえるでしょう。寒いのも暑いのも我慢のし過ぎはよくありません。
現代は昔のように一斉に衣替えをするのではなく、そのときの気候に合わせて移行期間を設定している場合が多いようです。昔とは気候そのものも変わってきていますから、これは現代人の知恵だといえます。気候の変動に合わせて、江戸時代のように年に4回の衣替えを実施するのもよいでしょう。
現在は衣服については自由になっていて、自分さえよければ冬に半袖を着ようと夏にセーターを着ようと構いません。とはいうものの、小満の頃に、その年初めての夏服に袖を通すのは、清々しく気持ちのよいものですし、季節に合わせて衣服を整えるのも、健康的な生活を送るためには大切なことです。
現在を生きている私たちですが、衣替えの習慣は忘れたくないですね。
まとめ
今回は小満について解説しました。
小満がいつ頃を指すのか、どんな意味なのかについて説明しました。意外に謎めいた小満の存在に、惹かれてしまいますね。梅雨の直前の時期ですから、身の回りの植物や作物の成長を眺めるのも楽しいですね。時間がないから、いちいち植物の成長を眺めていられないという人もいるかも知れません。心の余裕を持つために、そんな人は余計に、身の回りの植物を眺める時間を持ちたいものです。
また衣替えを通して、季節の変化に対応することも大切ですし、小満の頃に収穫される麦を食生活に取り入れても、食卓が楽しくなるでしょう。
麦は小満の頃を表す俳句の季語としてよく使われますが、麦秋は初夏の季語だというのは、知っていると嬉しくなる知識ですね。稲穂よりも早く金色の風景を見せてくれる麦畑も、かつてよりは減ってしまいましたが、ぜひ小満の頃に見てみたいものです。
ほかの節気とは一味違う名前を持っている小満、この機会に小満についてよく知ることをおすすめします。