牡丹華という言葉を聞いたことがありますか?
晩春を表わす美しい言葉です。字を見れば、牡丹の花のことを言っているのは何となく分かりますが、具体的にどの時期を指しているのでしょうか。
ここでは、牡丹華の意味や使い方、牡丹の花についてを詳しくご紹介します。
牡丹華とはどういう意味?
牡丹華とは、何のことを指し、どんな意味を持つのでしょうか?
我が国には、一年間をおよそ5日ずつ分け、その時期の気候や風土、動植物の動きをピンポイントで表わした七十二候というものが存在します。
牡丹華は、その七十二候の一つで、穀雨の末候となります。4月30日から5月4日頃までを表わしています。
その字を見ると分かるように、「牡丹(ぼたん)の花が咲く頃」という意味を持ちます。
牡丹が咲き始めるのは晩春からで、初夏まで見ることができます。
赤やピンク、白など様々な色の大振りな花を咲かせます。
牡丹の花は、「二十日草」とも呼ばれてるように、およそ20日ほど楽しめます。非常に美しい花で、「立てば芍薬、座れば牡丹、歩く姿は百合の花」と言われるように、女性の美しい立ち振る舞いに例えられるくらいです。
牡丹華の意味を知ると、牡丹の花をもっと知りたくなりますね。
牡丹華の読み方は?
牡丹華の読み方は、「ぼたんはなさく」です。
この文字だけを見ると「ぼたんのはな」と読み間違えてしまいそうですが、牡丹の花が咲く頃ということから、牡丹花咲くという読み方をするのです。
晩春のこの時期は、実は他の花も見ごろを迎えます。
ライラックやスズラン、クレマチス、睡蓮、藤など、有名な花も幾つか咲き始めます。
その中でも、牡丹は大輪の華を咲かせるため、非常に存在感があります。
七十二候の元となる宣明歴は、中国で考えられ日本に伝わりました。
中国でも牡丹の花は非常に愛されていますので、様々な花の中でも牡丹が選ばれたのかも知れません。
牡丹華の使い方は?
牡丹華という言葉を日常生活で使おうと思っても、やはり使い方に迷ってしまう人が多いのではないでしょうか?
牡丹華に限らず、七十二候の言葉を使いたい場合には、時候の挨拶として取り入れるのが自然です。
「牡丹華 牡丹の花が綺麗に咲く時季になりました~」
というように、手紙やはがきの文頭に使うとピンポイントにその時期を表わせて良いでしょう。
また、ブログやコラムを書いている人は、牡丹華から話を膨らませて話題を作るという使い方もできます。
七十二候を使うだけで、読み手に知的な印象を与えますし、それだけで季節感を表現できます。
牡丹華の頃に旬を迎えるもの
牡丹華を迎える頃に旬を迎えるのは、こごみ、サザエ、牡丹、藤などです。
こごみは春に旬を迎える山菜で、天ぷらやお浸しなどにして食べます。
こごみは、苦くて固そうな見た目ですが、案外クセが無く美味しいものです。
サザエは年間を通して市場に出回って居るため、春が旬と言われてもピンとこないかも知れませんが、この時期が一番美味しいのです。
シンプルに焼いたものが一番その美味しさを実感できる食べ方でしょう。
牡丹が咲く頃と同時期に、藤の花も開花を迎えます。
藤棚が紫色に染まり非常に華やかになります。
牡丹は花の王者!?
春の花といえば、桜を思い浮かべる人が多いと思いますが、牡丹も春の花として有名です。
日本では、芍薬や椿などと混同している人も多く、少々影の薄い印象の牡丹ですが、中国では国の代表花になっているほどです。
牡丹は、中国から伝わりましたが、初めは薬草とされてました。
牡丹の根には鎮静効果、鎮痛効果、血行障害の改善などがあるとされ、重宝されていたのです。
その後、平安時代には貴族の観賞用として宮廷などに植えられていました。
牡丹は、一つの花が10~20センチと大きく、花弁が幾重にも重なり、風に揺れる花は非常に美しい佇まいを見せます。
香りも上品なもので、見る者を魅了します。
その風格から、中国では「富貴草」や「花神」「花王」「百花王」「天香国色」などと呼ばれており、非常に高価で希少な牡丹の花も存在します。
また、花言葉は「王者の風格」「風格ある振る舞い」「高貴」「壮麗」などです。
牡丹の花だけに許された花言葉と言えます。
牡丹は様々なところで使われている
牡丹という名は、日本でも様々なところで見聞きします。
例えば、牡丹鍋、牡丹雪、牡丹餅、牡丹桜など牡丹の名が付くものもあります。日本では、イノシシの肉をお皿に盛り付ける際、牡丹の花のようにすることから、「イノシシ肉=牡丹」と呼ばれています。
そのため、イノシシ肉を使用した鍋は牡丹鍋と呼ばれているのです。
牡丹雪は、ぼたぼた落ちる様子から牡丹と結び付けられたともいわれていますが、牡丹の花弁がバラバラと散る様子を例えられているともいわれています。
日本画でも牡丹の花は美しく描かれます。
着物、茶碗など陶磁器、アクセサリーのモチーフにされることも多く、華やかで気品高く、妖艶な印象を与えます。
牡丹モチーフのものは一見派手な見た目なので、身に付けるのに抵抗がある人も多いかも知れませんが、意外と日本人に馴染む不思議な花なのです。
日本で昔から楽しまれている花札にも、牡丹が登場します。
牡丹のお祭りがある!
牡丹の見頃になると全国の牡丹園も一層人手が増し、活気溢れたものになります。
中には、お祭りが開かれる場所もあります。
上野東照宮では、牡丹苑があり、毎年4月半ばから5月半ば頃にかけて「ぼたん祭り」が開かれます。
直射日光に弱い牡丹を日傘などで守り、大切に育てられ美しく咲き誇る姿は一見の価値ありです。
それ以外にも、全国各地の牡丹園・牡丹苑や寺院などで、様々な種類の牡丹をみることができます。
ちょうど、ゴールデンウィークと重なる時期になりますので、牡丹の美しさを再確認しに足を延ばしてみるのも良いかも知れませんね。
牡丹と芍薬は似ているけど異なる
牡丹と芍薬の花は、非常に似ているため、同じ花であると勘違いしている人も多いものです。
ただ、見分けるポイントが幾つかあり、それを知っておくだけで簡単に見分けがつきます。
見分けるポイントは、以下の通りです。
⓵開花の時期
牡丹は4月半ばから5月初旬頃の晩春に咲きますが、芍薬は初夏に咲きます。
ただ、地域によっては同時期に咲くこともあり、これだけでは見分けが付かない事も有るかも知れません。
②葉の形状
牡丹の葉は大きく広がり、艶がありません。
葉先も3つに分かれていてギザギザしています。
芍薬の葉は、全体的に丸く、艶があります。
③つぼみの形状
牡丹のつぼみは球のように丸いのですが、芍薬のつぼみは先が尖っています。
④花の散り方
牡丹の花は、花びらがバラバラと落ちていきます。
散るスピードは早く、崩れるように花が散っていきます。
芍薬の花は、花ごと落ちます。
花だけを捥いだように落ちます。
どちらも、散るスピードが早いものですが、芍薬は花も茎も同時に枯れていきます。
牡丹は茎が残りますので、その辺でも見分けがつきます。
牡丹の花が枯れても茎がのこる理由は、牡丹が樹木だからです。
落葉低木として位置づけられています。
⑤花の香り
牡丹の香りは薄く、かなり近寄ってもほのかにしか香りません。
一方、芍薬はとても良い香りがします。
その匂いはバラに似ていて、爽やかで甘い香りがします。
これらの特徴を覚えておけば、少し自慢できるかも知れません。
中国の宣明歴では・・・?
中国の宣明歴では、牡丹華の頃は「戴勝降于桑(たいしょう くわにくだる)」となり、郭公(かっこう)が桑の木にとまり、蚕を生むという意味の時期になります。
実際にはカッコウが蚕を生むということは有り得ないのですが、カッコウには托卵(たくらん)という習性があり、別の鳥に自分の卵を羽化させることがあります。
このような習性などを混同してこのように伝わったのではないかと考えられています。
また、 戴勝は実は「やつがしら」という鳥で、「やつがしらが、桑の木に止まる」と解釈している考え方もあります。
まとめ
牡丹華とは七十二候の一つで、その字を見ても分かるように「牡丹の花が咲く頃」という意味を持ちます。牡丹の花は
着物などの柄のモチーフに用いられていることも多く、知名度は非常に高いのですが、晩春に旬を迎えるということを知らない人も多いものです。
そのため、春の代名詞のような桜などに比べると、少々地味に感じられるかも知れません。
でも、実際には一輪だけでもその存在感は大きく、華やかで美しい花です。
ゴールデンウィーク頃に見頃を迎えますので、牡丹のお花見をして見ても良いのではないでしょうか。