雪下出麦という言葉を聞いたことがありますか?「見たことも聞いたこともない」という人も多いかもしれません。
日本には、その時期をピンポイントで表わす美しい表現があります。ここでは、大人なら知っておきたい七十二候と、雪下出麦についてを詳しくご紹介します。
雪下出麦とはどんな意味があるの?
雪下出麦とは、七十二候のひとつで、二十四節気の中で「冬至」の末候になります。
冬至の末候は、12月27日から1月4日頃を表わします。
意味は、「降り積もる雪の下で、秋に蒔かれた麦が芽を出す頃」というもので、雪の下で温かい春をじっと待つ姿を思わせます。麦には越年草という別名もあります。降り積もる雪に耐え、新しい年を迎える頃です。
厳しい冬でも、じっと耐えればやがて雪が溶け、春がやってくるという、未来や希望の意味も持ち合わせています。
二十四節気とは?
二十四節気(にじゅうしせっき)とは、古代中国で太陰太陽暦を元に季節と日付を一致させるために考え出されたものです。
まず、1年を4つの季節「春夏秋冬」に分け、さらにそれぞれの季節を6つに分けます。一ヶ月の前半が「節」、後半が「中」と呼ばれ、交互に繰り返しています。
具体的には、立春、雨水、啓蟄、春分、清明、穀雨、立夏、小満、芒種、夏至、小暑、大暑、立秋、処暑、白露、秋分、寒露、霜降、立冬、小雪、大雪、冬至、小寒、大寒の24から成ります。
これらは、太陽の高度から作られたもので、気温などは関係ないとされていました。
各季節の始めを立春・立夏・立秋・立冬とし、各季節の中間で昼夜の時間が長短するタイミングを春分・夏至・秋分・冬至としています。
また、気温が変わる頃を小暑・大暑・処暑・小寒・大寒とし、気象の変化や影響を受けやすい時期を雨水、白露、寒露、霜降、小雪、大雪としています。
七十二候とは?
七十二候(しちじゅうにこう)とは、二十四節気を更に細かく約5日間ずつ、3つの期間に分けたものを言います。3つの期間は、初候・次候・末候に分けられています。
七十二候は、動植物や気候の変化を表わすものになっています。
二十四節気は古代中国から伝わったものをほとんど変更せず使用していますが、七十二候は日本の気候や風土に合わせるため何度か改訂されています。現在では、明治時代に考え直されたものを使用しています。
雪下出麦の読み方は?
雪下出麦と書いてあっても、読み方が分からないという人もいるでしょう。意味が同じでも、読み方が様々あるのも七十二候の特徴です。
雪下出麦の場合、「せっかむぎをいだす」、「ゆきわたりてむぎのびる」、「ゆきくだりてむぎのびる」などと読まれています。
下の字を「わたりて」と読んでいますが、雪が一面に渡り、その下で麦が待つという情景を表わしています。
雪下出麦の使い方は?
では、この七十二候はどのように使うのでしょうか?使い方に悩む人も多いかもしれませんが、多くは時候の挨拶に使用します。
例えば、手紙に使う場合は「雪下出麦の候、~」と書き出します。ブログなどのSNSでも「雪下出麦の時期になりました・・・」と書き出しに用いられています。
また、年末年始の挨拶に使う場合もあります。使い方が難しいと感じるかもしれませんが、その時期に合わせた美しい言葉ですので、積極的に使ってみましょう。
雪下出麦の頃に旬のものは?
雪下出麦の頃(12月27~1月4日)に旬を迎える食べ物や行事は、柚子、蕎麦、黒豆(おせち料理)、除夜の鐘などです。
柚子は冬至に柚子湯に入ると温まり、冷えが改善され健康になると言われています。また、蕎麦は年越しに食べられます。
黒豆もおせち料理には欠かせないもので、縁起物とされ親しまれています。また、マグロなどの魚も旬を迎えます。
除夜の鐘は108回鳴りますが、これは二十四節気の24と、七十二候の72、それから一年12ヶ月の12を足した数という 説もあります。
その他の初候、次候、末候は?
立春
- 初候2/4~8 「東風解凍(はるかぜこおりをとく)」春の風が氷を溶かす頃
- 次候2/9~13 「黄鶯睍睆(うぐいすなく)」ウグイスが春を告げる時期
- 末候2/14~17 「魚上氷(うおこおりをいずる)」氷が溶け、氷下にいた魚が飛び跳ねる時期
雨水
- 初候2/18~22 「土脉潤起(つちのしょううるおいおこる)」春の雨が降り、大地に潤いをもたらす頃
- 次候2/23~27 「霞始靆(かすみはじめてたなびく)」春の霞が見られるようになる時期
- 末候2/28~3/4 「草木萌動(そうもくめばえいずる)」草木が芽吹き新緑に色付き始める時期
啓蟄
- 初候3/5~10 「蟄虫啓戸(すごもりむしとをひらく)」冬眠していた虫達が動く始める頃
- 次候3/11~15 「桃始笑(ももはじめてさく)」桃の花が咲く頃<
- 末候3/16~20 「菜虫化蝶(なむしちょうとなる)」さなぎが孵化し美しい蝶になるという時期<
春分
- 初候3/21~25 「雀始巣(すずめはじめてすくう)」スズメが巣を作り始める時期<
- 次候3/26~30 「桜始開(さくらはじめてひらく)」桜が開花する時期<
- 末候3/31~4/4 「雷乃発声(かみなりすなわちこえをはっす)」春の嵐や雷鳴が起こる時期
清明
- 初候4/5~9頃 「玄鳥至(つばめきたる)」つばめが日本に飛来する頃
- 次候4/10~14頃 「鴻雁北(こうがんかえる)」日本で越冬した雁がシベリアへ帰る時期
- 末候4/15~19頃 「虹始見(にじはじめてあらわる)」空気が潤い虹が綺麗に見えるようになる時期
穀雨
- 初候4/20~24頃 「葭始生(あしはじめてしょうず)」水辺にアシが生え始める時期
- 次候4/25~29頃 「霜止出苗(しもやみてなえいずる)」霜も降りなくなり、苗が育つ頃
- 末候4/30~5/4頃 「牡丹華(ぼたんはなさく)」牡丹の花が開花する頃
立夏
- 初候5/5~10頃 「蛙始鳴(かわずはじめてなく)」蛙が冬眠から目覚めて鳴く頃
- 次候5/11~15頃 「蚯蚓出(みみずいずる)」冬眠していたミミズが出てくる頃
- 末候5/16~20頃 「竹笋出(たけのこしょうず)」タケノコが顔を出す時期
小満
- 初候5/21~25頃 「蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ)」蚕が桑を食べて成長する時期
- 次候5/26~30頃 「紅花栄(べにばなさかう)」紅花が咲き誇る頃
- 末候5/31~6/4頃 「麦秋至(むぎのときいたる)」麦が穂を付ける頃 麦にとっての秋です。
芒種
- 初候6/5~10頃 「蟷螂生(かまきりしょうず)」カマキリが産まれる頃
- 次候6/11~15頃 「腐草為蛍(くされたるくさほたるとなる)」蛍が飛び交う時期
- 末候6/16~20頃 「梅子黄(うめのみきばむ)」梅の実が黄色く色付く頃 梅雨入りの時期でもあります。
夏至<
- 初候6/21~26頃 「乃東枯(なつかれくさかるる)」ウツボグサが枯れる頃 夏の花が咲く時期でもあります。
- 次候6/27~7/1頃 「菖蒲華(あやめはなさく)」アヤメの花が咲く時期
- 末候7/2~6頃 「半夏生(はんげしょうず)」カラスビジャクが生える頃です。
小暑
- 初候7/7~11頃 「温風至(あつかぜいたる)」陽差しが強くなる時期
- 次候7/12~17頃 「蓮始開(はすはじめてひらく)」ハスの花が開く時期
- 末候7/18~22頃 「鷹乃学習(たかすなわちわざをならう)」タカが巣立ちの準備をする頃
大暑
- 初候7/23~27頃 「桐始結花(きりはじめてはなをむすぶ)」桐の花が咲く頃
- 次候7/28~8/1頃 「土潤溽暑(つちうるおうてむしあつし)」熱気が強くむし暑い時期
- 末候8/2~6頃 「大雨時行(たいうときどきふる)
立秋
- 初候8/7~12頃 「涼風至(すずかぜいたる)」秋の涼しい風が吹いてくる頃
- 次候8/13~17頃 「寒蟬鳴(ひぐらしなく)」ヒグラシが夏の終わりを告げる頃
- 末候8/18~22頃 「蒙霧升降(ふかききりまとう)」水辺などに深い霧がたちこめる時期
処暑
- 初候8/23~27頃 「綿柎開(わたのはなしべひらく)」綿の花が開く頃
- 次候8/28~9/1頃 「天地始粛(てんちはじめてさむし)」暑さが鎮まる頃
- 末候9/2~7頃 「禾乃登(こくものすなわちみのる)」稲穂の先が重くなる頃
白露
- 初候9/8~12頃 「草露白(くさのつゆしろし)」草花の上の朝露が白く見える頃
- 次候9/13~17頃 「鶺鴒鳴(せきれいなく)」セキレイが鳴き始める頃
- 末候9/18~22頃 「玄鳥去(つばめさる)」ツバメが温かい所を求め去る頃
秋分
- 初候9/23~27頃 「雷乃収声(かみなりすなわちこえをおさむ)」夏の雷鳴がおさまる頃
- 次候9/28~10/2頃 「蟄虫培戸(むしかくれてとをふさぐ)」虫が冬ごもりの準備を始める時期
- 末候10/3~7頃 「水始涸(みずはじめてかるる)」田の水を抜き、稲を刈り始める時期
寒露
- 初候10/8~12頃 「鴻雁来(こうがんきたる)」雁が北からやってきて、越冬を始める頃
- 次候10/13~17頃 「菊花開(きくのはなひらく)」菊の花が開く頃
- 末候10/18~22頃 「蟋蟀在戸(きりぎりすとにあり)」夏から冬にかけて見られるコオロギが出てくる時期
霜降
- 初候10/23~27頃 「霜始降(しもはじめてふる)」初霜が下りる時期
- 次候10/28~11/1頃 「霎時施(こさめときどきふる)」通り雨の多い時期で、動物たちが冬支度を始める頃
- 末候11/2~6頃 「楓蔦黄(もみじつたきばむ)」もみじや蔦が色付く頃
立冬
- 初候11/7~11頃 「山茶始開(つばきはじめてひらく)」ツバキの花が咲き始める頃
- 次候11/12~16頃 「地始凍(ちはじめてこおる)」冬の寒さで地面が凍り始める時期
- 末候11/17~21頃 「金盞花(きんせんかさく)」金盞花とありますが、水仙の花を指します。水仙の花がさく時期
小雪
- 初候11/22~26頃 「虹蔵不見(にじかくれてみえず)」日差しが弱く、曇りの多い天気が続く頃
- 次候11/27~12/1頃 「朔風払葉(きたかぜこのはをはらう)」北風が木の葉を舞い上がらせる時期
- 末候12/2~6頃 「橘始黄(たちばなはじめてきばむ)」橘の実が黄色く色付く頃
大雪
- 初候12/7~11頃 「閉塞成冬(そらさむくふゆとなる)」益々雲が厚くなり、本格的な冬が訪れる時期
- 次候12/12~16頃 「熊蟄穴(くまあなにこもる)」熊などの動物が越冬のため冬眠に入る頃
- 末候12/17~21頃 「鮭魚群(さけのうおむらがる)」鮭が川を上る時期
冬至
- 初候12/22~26頃 「乃東生(なつかれくさしょうず)」夏には枯れるウツボグサの芽が出る時期
- 次候12/27~31頃 「麋角解(さわしかつのおつる)」ヘラジカの角が生え替わる時期
- 末候1/1~1/5頃 「雪下出麦(ゆきくだりてむぎのびる)」降り積もる雪下で麦の芽が出始める時期
小寒
- 初候1/6~10頃 「芹乃栄(せりすなわちさかう)」春の七草でもあるセリが生え始める時期
- 次候1/11~15頃 「水泉動(しみずあたたかをふくむ)」凍った水が溶け、春に向け少しずつ動き出す頃
- 末候1/16~20頃 「雉始雊(きじはじめてなく)」キジが鳴き始める時期
大寒
- 初候1/21~24頃 「款冬華(ふきのはなさく)」蕗の花が咲き始める頃
- 次候1/25~29頃 「水沢腹堅(さわみずこおりつめる)」沢の水が氷るほど寒くなる時期
- 末候1/30~2/3頃 「鶏始乳(にわとりはじめてとやにつく)」春の息吹を感じた鶏が卵を産み始める時期
まとめ
七十二候は、四季がある日本でその美しい季節の移り変わりを的確に表したものです。
中でも、雪下出麦は、年を越し新年への移り変わり、年末年始を表現するものです。
近年では、手紙を出したり受けたりするシチュエーションも少なくなってしまったため、こういった言葉を目にする機会も減ってしまいました。ですが、知っておくと非常に便利なものなのです。