日本には春夏秋冬の美しい季節がありますよね。
皆さんは普段の生活の中で移ろい行く季節を感じられていますか?何かと忙しく、季節を感じる暇がない方もたくさんいるかもしれません。
そんな忙しい現代ですが日本ならではの季節を楽しむと心にも余裕が生まれるかもしれませんよ。
今回はそんな日々の季節を教えてくれる“一候~六候”についてご紹介をします。
そもそも一候~六候の元となる七十二候の意味とは?
七十二候という言葉を聞いたことがありますか? 俳句などを嗜む(たしなむ)方はご存知かもしれませんね。
七十二候とは「しちじゅうにこう」と読み、日本の一年間の四季折々の気候や植物、動物たちの様子を約5日間の72の区分に分けて、名称を付けたものですね。
それぞれ72に分けていますから、七十二候で表すと一年は一候~七十二候まで存在します。
七十二候はもともと紀元前7百7十年頃の中国が発祥とされており、日本へは奈良時代に伝わったとされています。
江戸時代には日本の土地や気候に合うように改良され、その改良版は現代でも季節の行事などで使用されているのです。
今回は七十二候の中の一候~六候をご紹介します。
一候~六候の意味を知る前に「二十四節気」について知っておこう!
七十二候の中にある一候~六候の意味を知る前に二十四節気についても知っておきましょう。
七十二候の元ともなる二十四節気(にじゅうしせっき)は春夏秋冬の4つの季節を1つの季節につき6つに区分し、名称を付けてその時期の気候などを表したものです。
例えば立春・夏至・秋分・冬至などの単語を皆さんも聞いたことがあるでしょう。
これらは二十四節気の中で季節を区分して名称を付けたものです。
ちなみに二十四節気では一つの区間は約15日間となり、最初の5日間は“初候”、次の5日間は“次候”、最後の5日間は“末候”といいます。
二十四節気は寒冷で大陸の中国から伝わったものを日本でそのまま使っていますから多少ずれがあり、その年によっては1日程度ずれることもあるようです。
ただ基本的には毎年時期と節気が同じように巡ってきます。
昔から農作業などを行う際に天候の目安として日本人に重宝されてきました。
現代でも二十四節気は時候のあいさつや各季節の行事に使われているようですね。
ちなみに今回ご紹介をする一候~六候が区分されている七十二候は二十四節気の各区分を更に3つに分けて表しています。
七十二候の中の一候~六候は二十四節気の「立春」と「雨水」の時期にあたります。
立春と雨水の時期はまだ寒さは残るものの暦の上では春となり、ふとしたことで春の前兆を感じさせてくれる時期ですね。
一候~六候の読み方と意味は?
「一候」
一候は暦の上では春を告げる立春から始まります。
まだまだ厳しい寒さが残る季節ですね。
そんな春の始まりに来る一候は「東風解凍(はるかぜこおりをとく)」です。
その名の通り氷が溶け、東風が春の始まりを知らせてくれるという意味があります。
ちなみに東風は春の季語でもあり、朝東風(あさごち)、夕東風(ゆうごち)、強東風(つよごち)などと俳句で使われることもありますよ。
太平洋からの東風はシベリアからやってくる冷たい北風とは違い、寒気の中でも春の訪れを感じさせてくれます。
現代ですと東風が吹いたところで何か変わるという事はないかもしれませんが、昔の瀬戸内海の漁師はこの東風を感じとれば鰆の漁期が来ていることを察知したそうです。
このように昔は風の訪れで季節を感じ、生活の中の知恵として取り入れていたことがよく分かりますね。
私たちもこの時期に吹く東風を感じ取って、春の訪れを楽しみにしてみるのも良いかもしれません。
ちなみに、この時期に天気予報で耳にする“春一番”は立春を過ぎて吹く強い南風の事をいいますよ。
「二候」
二候に来るのは「黄鶯睍睆 (うぐいすなく)」です。
“春告鳥”とも呼ばれる鶯がきれいな鳴き声を響かせる頃ですね。
梅の花と共に“ホーコケキョ”という鳴き声を聞くと春を感じられることでしょう。
この愛らしい鳴き声は昔から日本人を虜にしていたようで、平安時代の貴族の間では鶯の鳴き声の優劣を争う「鶯合(うぐいすあわせ)」という遊びもありました。
鶯を飼育し、美しい鳴き声が出せるように育てる“鶯飼”という職業もあったほどですからその人気の高さが覗えます。
ちなみに鶯色と聞くと日本らしい落ち着いた黄緑のような色を思い浮かべる方が多いでしょうが実際の鶯はこの色よりも褐色を帯びた緑色で、色鮮やかという訳ではありませんよ。
「三候」
立春の最後にあたる三候は「魚上氷(うおこおりをいずる)」です。
春に近づき、段々と暖まる日差しで氷が割れ始めて魚が顔を出す頃とされています。
渓流釣りなども2月に解禁とされていますのでイワナやヤマメ、シラウオなどの魚を釣って旬の味を感じることもできるかもしれませんね。
「四候」
立春を過ぎた雨水の時期にあたる四候は「土脉潤起 (つちのしょううるおいおこる)」です。
寒さは和らぎ雪が溶けるので、農家では農耕の準備が始まります。
雪から雨へと変わるこの頃は大地がしっとりと潤い、柔らかな日差しに誘われて草木も芽を出し始めるのでより一層の春らしさを感じられる頃でしょう。
「五候」
春霞によって辺りがぼんやりとかすんで見える頃の五候は「霞始靆(かすみはじめてたなびく)」です。
冬で乾燥していた空気に変わり、春の陽気が大地や大気を湿らせて遠くの景色がかすませる“霞(かすみ)”が発生します。
ちなみに霞は昼間に使う言葉で夜になると“朧(おぼろ)”と表現するそうです。
遠くの景色をぼんやりとかすませるこの時期はどことなく神秘的で山々を美しく見せてくれますね。
「六候」
草木が伸び始め、本格的な春を感じることのできるこの時期の六候は「草木萌動(そうもくめばえいずる)」です。
寒さの中で身を潜めていた草や木が暖かい気候に誘われて一斉に芽生え、成長していきます。
この様子を“草萌え”もしくは“下萌え”と言います。
厳しい寒さから春のうららかな陽気に変わっていくので、昔の人々にとって待ちに待った時期だったことでしょう。
現代でも薄暗い冬よりも柔らかな春の日差しは体に生命力を与えてくれますよね。
せっかくの春の訪れですから外に出てみましょう。
木の芽と共に春の日差しを浴びて、パワーを貰えば日常の生活に良い刺激をもたらしてくれますよ。
一候~六候はいつ?
一候~六候は2月4日~2月28日の頃です。
節分の次の日から1カ月弱の間ですね。
二十四節気でいうと立春と雨水の期間にあたります。
七十二候では一区間を約5日間で分けていますので各候で次のように分けられています。
「立春」
(一候)東風解凍(はるかぜこおりをとく)2月4日頃
(二候)黄鴬睍睆(うぐいすなく)2月9日頃
(三候)魚上氷(うおこおりをいずる)2月14日頃「雨水」
(四候)土脉潤起(つちのしょううるおいおこる)2月18日頃
(五候)霞始靆(かすみはじめてたなびく)2月23日頃
(六候)草木萌動(そうもくめばえいずる)2月28日頃
まだまだ寒さが残りますが、一候~六候までを見ていくと段々と春に近づく兆しもある時期ですね。
一候~六候の期間には余寒見舞いを出す?
お正月には年賀状を出しますが、正月期間を過ぎてしまうと寒中見舞いを出しますよね。
その寒中見舞いの時期も過ぎてしまったら何を出せばよいかご存知ですか?寒中見舞いは1月5・6日~2月4日までの期間が適切だといわれています。
この時期を過ぎた一候にあたる2月4日頃~六候の期間までは「余寒見舞い」を出すのです。
余寒見舞いは寒中見舞いと同様に喪中で年賀状が出せなかった時の季節のあいさつなどとして使います。
まだまだ2月中は厳しい寒さの残っている時期ですので相手の健康を気遣ったり、無事を祈る際に送るのですね。
時期を逃して年賀状や寒中見舞いを送れなかった時、メールや電話で済ませても良いかもしれませんが手書きの文章は相手にも気持ちが伝わりやすいものです。
是非皆さんも余寒見舞いを活用してみてくださいね。
まとめ
一候~六候までの期間は厳しい寒さもありながら所々で春の訪れを感じることのできる季節でしたね。
七十二候はそんな日本の季節をより身近に感じ取ることのできるものです。
長かった冬から春へと移り変わっていくこの時期の自然や陽気を楽しんでみてください。
生命力に溢れ、いつもよりも一層、春の喜びを感じられるかもしれませんよ。