日々の日本の季節を知ることのできる七十二候の七候~十二候を知っていますか?日本には春夏秋冬の美しい季節がありますよね。
その季節をより細かく分けてみると日常の中でより身近に季節を感じることができ、心を豊かにしてくれることでしょう。
今回は七候~十二候までをご紹介します。
七候~十二候の読み方と意味は?
七十二候の中の七候~十二候は二十四節気の中の啓蟄と春分の時期にあたります。
寒さも和らぎ、段々と柔らかな春の日差しへと変わってくる頃の七候~十二候の読み方と意味についてご紹介をしましょう。
「七候」
冬の厳しい寒さから身を守るように地中に身を潜めていた虫たちが徐々に顔を出し始めるのが七候の「蟄虫啓戸(すごもりのむしとをひらく)」です。
昆虫以外にもカエルやトカゲなどの全ての生き物が動き始める時期ですね。
ちなみに昔の日本ではヒキガエルの油が薬として使われていました。
“ガマの油”といわれるその薬はヒキガエルの分泌液を煮詰め、軟膏として売られていたようです。
その昔、中国の老人が治らない咳と腹痛に苦しみましたが生きたままの蛙を飲み込んだところピタリと症状が無くなったという一説から作られたようです。
実際、ヒキガエルの分泌液には欠陥を収縮させる効能があるようで止血剤として役立っていたのかもしれませんが、大きな傷には不向きだったのではないかと考えられています。
「八候」
まだ少しの残る寒さの時期に綺麗な花を咲かせるのが桃の木です。
この時期の七候は「桃始笑(ももはじめてさく)」といいます。
桃と聞くと何となく日本らしさを感じますが、実は桃の木の原産は中国で、朝鮮半島を通って日本へと渡ってきたといわれています。
原産国の中国で桃は甘い香りとうっとりとするほど美味しいことから食べれば不老長寿になる実ともいわれてきました。
西遊記では桃を食べて不老長寿になるなんて記載もあるようです。
不老長寿以外にも厄除けの力を持っていると考えられており、結婚式などのお祝い事には桃の形に似せた“桃まんじゅう”が食べられているようですね。
中国では古くから縁起の良い実とされ、重宝されているようです。
ちなみに日本で桃はとてもデリケートな果物として有名ですが、海外の桃は果肉も固く市場で平積みになっている光景がよくあるそうです。
日本のスーパーでは傷が付かいないようにクッション材に包まれて売っているのをよく見かけますので海外の桃とはかなり違いがありますね。
実はこのように異なるのは日本人が桃を独自に改良したためといわれています。
日本の桃の柔らかい果肉は日本人の好みに合わせて改良されたものだったのです。
日本では縄文時代には桃の種があったようですが、食用として栽培が始まっていたのは江戸時代からと言われています。
「九候」
青虫がさなぎから紋白蝶へとなる頃の九候は「菜虫化蝶(なむしちょうとなる)」です。
葉を食べて肥えた青虫が、さなぎの形になり寒い冬を過ごします。
その後、この時期になるとさなぎから出て色鮮やかな蝶となって外へ出てくるのです。
ちなみに菜虫とは蝶の幼虫である青虫の事で、ダイコンやキャベツなどの葉を食べてしまうことから農家では天敵とされています。
「十候」
十候は春分のスタートです。
この日から陽の短かった時期は終わり、昼は長く夜は短くなります。
春分の日はお彼岸の中日にあたる日で国民の祝日でもありますね。
そんな時期の十候は「雀始巣(すずめはじめてすくう)」です。
生き物たちが繁殖の時期に入り、チュンチュンと可愛らしく鳴く雀が巣の準備を始める頃ですね。
産まれる子の為に朝から巣作りを始め、毛や枯れ草などを集める作業に追われます。
これは陽のあたる時間が増えた春ならではの準備である為、“雀の巣”や“雀の子”は春の季語として使われています。
ちなみに産まれた雛はくちばしが黄色で黄雀とも呼ばれていますよ。
「十一候」
十一候は「桜始開(さくらはじめてひらく)」です。
その名の通り、全国で桜の開花を知らせるニュースが飛び交う時期ですね。
日本人にとって桜は特別なもので、昔から桜が開花すればたくさんの人々が集まります。
薄いピンク色の桜の花びらは上品さを好む日本人にピッタリなのでしょう。
“花より団子”なんていわれることもありますが、お花見の期間でよく売られている“花見団子”は何故、白・緑・赤(ピンク)の三色であるか知っていますか?さまざまな諸説はありますが、一説には桜を表しているという説があります。
桜は赤いつぼみを付けた後に白い花を咲かせますよね。
そして花が散ると緑の葉が出てきます。
この桜の開花の様子を赤(ピンク)・白・緑の色で表しているようです。
この開花の様子が花見団子の色の順番となり、現在でも花見団子は上から赤(ピンク)・白・緑が定番となっているようです。
「十二候」
春分の最後に来るのが十二候の「雷乃発声(かみなりすなわちこえをはっす)」です。
この時期に鳴る雷は夏の雷ほど激しいものではありませんね。
立春を過ぎて初めての雷を“初雷(はつらい・はつがみなり)”と呼び、春の雷は“春雷(しゅんらい)”といわれています。
春雷は寒冷前線の通過に伴って発生し、雷雨ともなれば雹を降らすこともあるようです。
また、冬の間に冬眠していた虫たちが雷を聞いて飛び出すことから“虫出しの雷”という別名もあります。
七候~十二候はいつ?
七候~十二候にあたる時期は二十四節気の啓蟄と春分です。
3月の初めから1カ月弱のこの期間は学生にとっては卒業式、社会人にとっては異動や転職の時期でもありますね。
別れや出会いの季節であるこの時期の七候~十二候は次のように分けられます。
動物や人間にとっても過ごしやすい季節に入る時期ですので、外出が楽しい頃です。
冬の寒さで家に閉じこもっていた方もお花見などに出かけてみるとぐっと気分が良くなりますよ。
「啓蟄」
(七候)蟄虫啓戸…3月5日頃
(八候)桃始笑…3月10日頃
(九候)菜虫化蝶…3月15日頃
「春分」
(十候)雀始巣…3月20日頃
(十一候)桜始開…3月25日頃
(十二候)雷乃発声…3月30日頃
七候~十二候の読み方は?
七候~十二候の読み方についても知っておきましょう。
七十二候の読み方は簡単な短文になっていますから、皆さんも読めば何となく意味が通じるのではないでしょうか。
ちなみに現在、七十二候は江戸時代に出た改正版が使われていますので中国から伝わってきたものとは異なります。
九候の「菜虫化蝶(なむしちょうとなる)」も中国ですと「玄鳥至」となっており、南から燕が渡来してくるという意味になっているのです。
「啓蟄」
(七候)蟄虫啓戸(すごもりのむしとをひらく)
(八候)桃始笑(ももはじめてさく)
(九候)菜虫化蝶(なむしちょうとなる)
「春分」
(十候)雀始巣(すずめはじめてすくう)
(十一候)桜始開(さくらはじめてひらく)
(十二候)雷乃発声(かみなりすなわちこえをはっす)
七候~十二候中の旬の食べ物は何?
七候~十二候の期間は3月の約1カ月間ですよね。
その間の旬の物は何があるか知っていますか?野菜ですと菜の花やホウレン草、水菜、ウドやタケノコ、フキノトウも旬ですね。
他にも冬で鍋物に使うイメージの強い春菊もこの時期が旬です。
果物ならば苺も旬ですし、魚介類ですとアンコウ、ハマグリ、サワラやニシンも食べ頃です。
ちなみにハマグリは2枚の貝がぴったりと収まることから“良縁に恵まれる”などいわれ縁起の良い食べ物です。
3月中は卒業式などのお祝い事も多いので、ハマグリを使ったお吸い物などを食べれば旬の味を楽しめ、縁起も担ぐことができますよ。
是非、この時期しかない旬の味を楽しんでみてくださいね。
春には苦い物を食べる?
皆さんは春に苦い物を食べよ!なんてことを聞いたことがありますか?実は「春には苦みを盛れ」ということわざがある程、昔から言われていることなのです。
何故春に苦い物を食べる必要があるのでしょうか?実は春先に出てくる苦みのある物は人間の体にとても良い作用をもたらしてくれます。
暖かな春の前には寒い冬の期間があり、クマやカエルも冬眠をしますよね。
私たち人間は冬眠こそしないものの、冬の間は体の中の体温を冷やさないように栄養をため込みやすくなっています。
エネルギーを逃さないようにして太りやすくなるのです。
そうして知らずしらずのうちに栄養をため込んでいた冬が終わると暖かな春へと移っていきます。
実はこの春の期間に入ると私たちの体は新陳代謝が活発になります。
冬の間にため込んだ老廃物を押し出すなどのリセット機能が働き始めるのですね。
ここで一役買ってくれるのが春の山菜などに含まれる苦みたちです。
実は苦みのある春の山菜はリセット機能をスムーズに働かせる効果があります。
特に春の山菜は抗酸化作用の高いポリフェノールやミネラルを豊富に含み細胞を活性化してくれるので、春に食べれば暑い夏も乗り切る体作りに一役買ってくれますよ。
冬眠していたクマもフキノトウを食べるといわれているほどです。
春が旬の苦みを持つ食べ物は人間にも動物にも必要な物なのですね。
是非皆さんも七候~十二候の間に苦みのある春の山菜などを食べて、冬の間の体をリセットしてみてくださいね。
まとめ
二十四節気の啓蟄と春分にあたる七候~十二候は本格的な春の季節を表していましたね。
生命力に満ちた春には虫や動物たちにも活気があります。
日本ではこの頃に卒業式などがありますから直に来る新たな生活の始まりに心を躍らす頃でもあるでしょう。
お花見や観光のシーズンでもありますので、ぽかぽかと気持ちの良くなり始めたこの季節を是非楽しんでくださいね。