幼少期に食事を摂る際、「箸から箸に食べ物を渡してはだめ!」と、保護者の方から注意さをうけたことがある方もいるはずです。
小さい頃は、なぜそれがいけないことなのか理解できなかったかもしれない箸渡しですが、実は箸渡しとは人が亡くなった時に火葬場で遺骨を納める時の行為なのです。
死をイメージさせる箸渡しは、食事の時にするべきではないと考えられたのです。
そこでこちらでは具体的な箸渡しの内容と、それに対するマナーをご紹介していきます。
概要
箸渡しとは火葬場で故人の遺体を火葬した後に、火葬場の職員の指示に従いお骨を拾いあげることをいいます。
これを「骨上げ」と言います。
2人一組になり長い箸で骨を拾ったら、用意されている骨壺にしまっていきます。
この行為は、故人の冥福を祈るためであるとされています。
ただし箸渡しの行為は仏教的なしきたりではなく、あくまで日本の慣習です。
骨上げをする理由を解説
火葬場で骨上げをする理由は、主に2つあります。
最期まで故人の世話をしてあげるという理由が、まず1つです。
生前だけではなく、亡くなった故人の骨を拾揚げて骨壺にしまってあげることで故人の魂を供養する理由があります。
もう1つは「三途の川」をわたる手助けをしてあげるということです。
仏教では死んだら最初に三途の川に向かい、その川をどのように渡るかは生前の行いによるとされています。
善行が多かった人物は舟で渡れたり、またはかかっている橋を歩いて渡れます。
もし悪行が多かったら川の中を歩いて渡りますが、生前の行いで波が無い状態、荒波状態など、さらに渡る条件が変わります。
そこで遺族は「箸渡し」と「橋渡し」をかけて、骨上げをしているという理由です。
故人の魂が無事に三途の川をわたれますようにとの、願いが込められているのです。
骨上げを2人でする理由を解説
箸渡しをなぜ2人組で行うかについて解説します。
これは「死」が1人にだけ憑りつかない様に、2人一組でお骨を持つという理由です。
1人だけで骨を持つと故人の魂に憑りつかれてしまうので、2人にするという発想からです。
骨上げは仏教的な儀式ではない
多くの方が箸渡しは仏教的な儀式だと思っているかもしれませんが、実は仏教とは関係ありません。
箸渡しは、日本独自で作られた慣習だと覚えておきます。
日本には昔から「骨を拾う」ということわざが使われています。
これはことわざの中で、本当の「死」を意味するわけではなく、「後始末は自分がしてあげるから思い切りやれ」という心情を表現しています。
例えば仕事の時などで、上司から言われたりする場面で使われます。
骨まで拾うことが、すべての面倒や責任を取るという考え方が根付いていたのです。
最後まで面倒を見る「骨を拾う」という言葉が作られたように、日本には「死」に対し独自の思想観念があるのです。
また骨上げをする理由の1つに、1人だけ死に憑りつかれない様にとの理由がありましたが仏教には死を穢れとすることはないといいます。
死を穢れとして扱うのは神道の考え方なので、昔からの自然崇拝の考え方なども混ざっていると考えられます。
地域により骨上げのルールが違う
骨上げは地域により細かなルールが違います。
関東から北と西日本では特に、拾う骨の部位が変わります。
関東ではすべての骨を拾いあげてから、最後は喉仏の骨を拾います。
これを「全骨収骨」といいます。
対して喉仏の骨を中心として、一部の骨だけを拾うことを「部分収骨」といいます。
西日本ではこの部分収骨が多いのです。
部分収骨をする場合は、残った骨は火葬場が処理をしてくれます。