日本の公的な医療保険の加入者、もしくは配偶者の医療保険の被扶養者が出産した際に支給される手当金が、出産育児一時金です。
出産一時金が支給される対象となる出産とは、妊娠4ヵ月以上の分娩を指します。
こちらでは、出産時に支給される出産育児一時金についてご説明していきます。
概要
妊娠4ヵ月、要は妊娠期間が85日以上での出産時に、健康保険、国民健康保険、共済組合、船員保険などの医療保険の加入者、または配偶者の医療保険の被扶養者に支給されるのが、出産育児一時金です。
妊娠4ヵ月以上の出産とは、正常分娩に限らず、早産、流産、死産、人工妊娠中絶も当てはまります。
出産育児一時金は、健康保険法等の改正が行なわれた1994年から、それまでの「分娩費」と「育児手当金」を統合して新たに設けられました。
現在支給される出産一時金は、どの医療保険に加入しているかに関わらず42万円です。
1児につき42万円支給されるため、双生児の場合は84万円支給されます。
双生児に限らず、胎児の人数×42万円の支給です。
産科医療補償制度に加入していない医療機関で出産した場合の出産育児一時金は、40万4千円となるため、注意が必要です。
出産育児一時金の手続き方法
出産育児一時金を受け取るためには、加入している医療保険者へ申請書を提出する必要があります。
対象条件に当てはまれば必ず受け取れるため、忘れずに手続きをするようにしましょう。
提出する申請書に、必ず記載するものがあります。
- 被保険者証の記号と番号、または個人番号
- 出産の年月日
- 被扶養者が出産した場合は、被扶養者の氏名と生年月日
- 死産の場合はその旨記載が必要
あわせて、医師または助産師が出産を証明する書類などを同時に提出する必要があるため、準備を忘れないようにしましょう。
出産育児一時金の直接支払制度
出産後に支給されている出産育児一時金ですが、2009年に直接支払制度が設けられました。
直接支払制度を利用することで、出産育児一時金の請求、受け取りを医療機関が直接してくれるため、出産後の退院時に、出産にかかった高額な費用を医療機関に支払う必要がなくなります。
少子化対策の一環として、「安心して出産できる環境を整備する」ため設けられた制度です。
現在では多くの妊婦が活用しています。
万が一、出産費用が出産育児一時金の42万円を下回る場合は、差額申請書を提出することで、被保険者に差額が支払われます。
規模が小さい医療機関の中には、直接支払制度に対応していない場合もあるので、事前に利用する医療機関に確認が必要でしょう。
出産育児一時金の受取代理制度
直接支払制度と共に、多くの妊婦が活用している制度が、受取代理制度です。
出産育児一時金の受取を医療機関に委任する制度で、出産育児一時金を受け取る者が、出産する医療機関を代理人と定めます。
受取代理制度を活用すれば、直接支払制度非導入の医療機関で出産する場合でも、出産後に医療機関の窓口にて高額な出産費を支払う必要がなくなります。
医療機関の窓口には、出産にかかった費用と出産育児一時金である42万円の差額を支払うだけになります。
先に紹介した直接支払制度と受取代理制度をうまく活用することで、高額の出産費準備が不要になり、安心要素がプラスされるでしょう。
出産育児一時金の時効
出産育児一時金の支給には、時効が存在します。
出産育児一時金を受け取る権利は、2年を経過すると消滅するため、早めに申請をするよう注意しましょう。
時効を計算し始める第一日は、出産日の翌日です。
出産育児一時金と間違えやすい出産手当金
名称が似ていることから出産育児一時金と間違われやすいのが、出産手当金です。
出産手当金は、出産前の42日から出産の翌日から数えて56日までの間に、会社を休んだ健康保険加入者が対象となり受け取れる手当金です。
全国健康保険協会、または務めている会社に申請書を提出する必要があります。
出産手当金は、標準報酬日額の3分の2程度の金額が支給されます。
名前が似ていますが、内容が異なるため、申請のし忘れに注意が必要です。