仏式の葬儀で目にする、「ひつぎ」について考えていきます。
「納棺の儀」では、ひつぎを「棺」にしているのがわかります。
実際には「棺」で書く場合が多い方もいます。
実は同じ読み方である上、ほとんど同じ意味で「棺」と「柩」は使われているのです。
ただしこの2つの漢字には決定的に違う意味があるとされているため、その意味を知らずにどんなシーンでも「柩」、または全てを「棺」と書き記すのは避けたいところです。
そこでこちらではこの漢字の意味の違いなどに触れ、社会人として押さえておきたい知識としてまとめていきます。
概要
葬儀が始まる前に親族が見ているところで、ご遺体は棺に納められます。
これを「納棺の儀」と呼び、日本では宗教的な儀式として特別なものとしています。
納棺をする際には身なりや化粧なども整えてくれるので、とても綺麗な状態で最期のお別れができます。
その際にひつぎを漢字で書きたいなら、「棺」をあてます。
ただし火葬場への移動時には、「柩」とするのが無難です。
容器としての「棺」&敬意を表した「柩」について解説
実は故人の葬儀で目にする「棺」は、漢字により意味が違います。
空の棺は「ただの入れ物」という意味で使いますが、故人を安置する準備品です。
一方で死装束をまとわせ、死化粧まで終えたご遺体を収めた棺は「柩」と記します。
空の状態の棺ではなくご遺体に敬意を表して、「棺」とは意味の違うものとして区別されたのだといわれています。
使い方としては故人が安置されていないものを「棺」、「柩」と書く場合は中にご遺体が安置されたものとします。
霊柩車の「柩」の漢字と出棺の「官」の漢字の矛盾を解説
「ひつぎ」と発音する2つの漢字の意味の違いについて、もう少し詳しくまとめます。
葬儀後は、いよいよ火葬場へ向けて最期のお別れの時がやってくると「出棺」のアナウンスがかかります。
故人の遺体が納められているですが、「棺」の字が使われています。
ただし火葬場まで運ばれる際に乗る車を漢字で確認すると、「霊柩車(れいきゅうしゃ)」です。
漢字の「柩」が、3文字の真ん中にあてはめられているのがわかります。
このあたりに矛盾を感じる方もいるかもしれませんので、まとめていきます。
中にご遺体を納めていることで使われる漢字が違うという話以外にも、「柩」と「棺」には違いがあります。
まだ日本は土葬だった頃はご遺体が入った柩を担いで墓まで行き、埋葬していました。
その時に運ぶ際に使用した「輿」を、「柩」と表現していたのではないかという説です。
その昔、日本では箱としての役割を「棺」と書き、運ぶ際の道具を「柩」としていたというものです。
こちらの説であれば漢字の使われ方が段々と時代が変わり、中にご遺体が納めらえているかどうかで漢字を変えるようになった可能性もあります。