「着物は左前にしてはだめ!」と、小さい頃言われた方も多いはずです。
また同じように、箸から箸で食べ物を渡すのもタブーだとされています。
これらは全て日本に昔からある「逆さごと」が関係しており、死者の世界と人間の世界を区別するためのものであるとご存知でしょうか。
こちらでは具体的に逆さごとにはどんなタブーの理由があるのかなどを中心に、覚えておくと役に立つ知識についてまとめていきます。
概要
逆さごととは生前とは違った作法をいい、主に寝具や洋服、箸などに関係しています。
生きている人が日常でするのはタブーだとされているため、死者に行うのが一般的です。
これは人間の死生観によるものであり、死の世界と生の世界が別であるという概念からできた作法です。
逆さごとはあくまで宗教的な儀式ではなく、日本の長い歴史の中でできた風習です。
逆さごとにはどんな風習があるのかを解説
逆さごとには色々な種類があります。
一番わかりやすい逆さごととは、通夜です。
通夜は夕方から行うのが通例であり、これは通夜や葬儀が一般人に広まった時からです。
通夜が夜行われるのは、死の世界と生の世界の昼夜が逆になっていると考えられているからです。
これは死者が暗闇の中で迷わないように、との願いが込められています。
逆さごとはできるだけ故人を生の世界から断絶させるために考えられた行為であり、「いつもと違うこと」をすることが求められています。
具体的な逆さごとは以下の通りです。
- 着物を左前に着用…死者に着せる着物は棺桶に入れる際に左前にしてから納棺すること
- 箸から箸で食べ物を渡す…骨上げで2人1組になり長い箸で収骨すること
- 枕を北側に向けて布団を敷く…釈迦が亡くなった時に北を向いて亡くなったため
- 逆さ布団…布団を逆にかけて安置すること
- 屏風を逆さにする…死人の枕元の屏風を逆さにすること
- 逆さにして着物をかける…故人を安置するために納棺したら、故人の好きだった着物を上下逆にかけること
- 衣装は縦結びにする…普段着ている衣装は蝶結びが多いですが、縦結びにすること
- 水にお湯を入れた逆さ水…調度よい温度のお湯を作る際に、水にお湯を足すこと(通常の適温のお湯はお湯に水を足す)
これらは全て日常にある風習を逆にした作法であり、普段の生活でするのはタブーとされています。
通常とは違う工程で行うことで、死と生をしっかり区別しているのがわかります。
またこの逆さごとは全てを行うという決まりはなく、故人のために遺族がどこまで行うかで決められます。