桜始開という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
全く見聞きしたことがないという人も多いのではないかと思います。
この言葉は、1年のうち数日をピンポイントで表す美しい表現です。
あまり馴染みの無い言葉ですが、意味を知るともっと知りたくなる不思議な言葉なのです。
ここでは、桜始開の意味、使い方などを中心にご紹介します。
桜始開とは?どういう意味?
桜始開とは、七十二候のうちのひとつです。
日本では、一年の季節を24に分けた二十四節気というものがあります。
まず、1年を夏至、冬至、春分、秋分の二至二分で分け、更に立春、立夏、立秋、立冬の四立で分けます。
これを八節といいます。
そこから、更に太陽の動きに合わせて、12の節気と12の中気で分け24分割したものを二十四節気としています。
二十四節気では、一節気がおよそ15日ずつになっています。
一節気を更に初候、次候、末候の3つに分けて、およそ4~5日間ずつにしたものを七十二候と呼びます。
二十四節気はその季節を表わしますが、七十二候では動植物の動きや天気を表わしています。
二十四節気では、3月20日から4月4日頃までを春分としていますが、桜始開は春分の次候になります。
具体的には、3月26日から3月30日頃までを指します。
「桜の花が咲き始める」という意味があります。
この頃は、本州では桜が開花し、満開を迎える時期にあたります。
桜前線の開花予報が飛び交い、各地でお花見も盛んに行われます。
桜の開花は、各地の観測所が定めた標準木の花が5つか6つ開いた状態をいいます。
東京では靖国神社内、大阪では大阪城公園内など、各地観測所付近の染井吉野が標準木とされているといわれています。
満開は、それらの標準木のつぼみが80%以上開いた状態をいいます。
尚、春分の初候は「雀始巣(すずめはじめてすくう)」で、雀が巣を作り始める時期を意味しています。
末候は「雷乃発声(かみなりすなわちこえをはっす)」になり、春の嵐の雷が聞こえてくる時期という意味があります。
桜始開の読み方は?何と読むの?
桜始開と書かれていても一体どんな読み方をすれば良いのか迷うことがあります。
七十二候では、なかなか普段見聞きしない文字が使われていることもあり、読み方が難しいものもあります。
その中でも桜始開は、字を見ればその意味が分かるもので、「さくらはじめてひらく」と読みます。
「さくらはじめてさく」「さくらがひらきはじめる」ともいわれています。
春の暖かさに桜のつぼみが綻びはじめて、開花を迎える様子を表わしています。
桜にも様々な種類がありますが、日本でこの時期に見ごろを迎えるのは、やはり染井吉野や山桜など、お花見を行うのに使用されるポピュラーな桜です。
日本でも、東北方面ではまだ開花まで時間が掛かる時期ですが、少しずつ春の息吹を感じられる時期になります。
桜始開の使い方は?どんな時に使うの?
桜始開という言葉は、どんな場面で使われるのでしょうか?
具体的な使い方をみていきましょう。
- 「桜始開、桜の開花の便りが届く季節になりました。」
- 「桜始開、お花見の季節になりました。」
- 「桜始開の候~」
- 「桜始開、○○公園の桜も見ごろを迎えています。」
など、手紙などで時候の挨拶に七十二候を使用すると、とても情緒豊かなものになります。
自治会や町会などでお花見の案内を出す時にもこのような言葉が使用できますし、ブログやSNSで文章を投稿する際にも、冒頭の時候挨拶で使うことができます。
時候の挨拶というと、日本でも九州、沖縄など南の方に住む人と、東北、北海道など北の方に住む人とでは少し気候のズレがあり使用に迷ってしまうことがあります。
ただ、大体何月何日頃を意味しているのかが決まっている二十四節気や七十二候であれば別段問題ありません。
使い方が難しいのでは?と感じてしまう七十二候ですが、気軽に使ってみても良いかも知れませんね。
桜始開の頃に旬を迎えるもの
桜始開の時期に旬を迎えるものは、桜(山桜や染井吉野など)、アスパラガス、あさつき、にら、うど、鯛、あさり、さより、桜エビ、桜餅、牡丹餅(ぼたもち)などです。
旬の食べ物は美味しいですし、旬を迎えた食材を食べると長生きするといわれていますので、積極的に摂りたいものです。
また、春分を迎える頃は、お彼岸にあたりますので、お墓参りのために牡丹餅を作るという家庭も多いものです。
春のお彼岸には牡丹餅と呼ばれますが、秋のお彼岸ではお萩(おはぎ)と呼ばれます。
全く同じ食べ物が春と秋で違う呼び名になるのです。
桜始開を迎えるとお花見の時期になる
春分を迎え、桜始開の時期になると桜前線が北上し、至る所でお花見が開かれます。
お花見の歴史は非常に古く、かなり昔から楽しまれていました。
奈良時代頃までは、お花見=梅の花で行われていましたが、平安時代には桜をお花見に使うようになりました。
現在でも梅や桃の花でお花見をすることがありますが、桜が一般的です。
お花見も、昔は貴族が桜の下で和歌を詠み、宴を楽しんでいましたが、徳川が治める時代になると一般庶民にもお花見を行楽として楽しむ様子が見られてきました。
今でも、お花見は、日本の季節感を表わす春の風物詩となっています。
桜は、開花から2週間前後で散ってしまう儚いものですが、気温や環境の変化で毎年見せる姿が少しずつ異なります。
貴重な一瞬をお花見という形で記憶に留めておくのも素敵です。
春や桜、花にまつわる美しい言葉
桜始開のように、春に桜や花が咲く季節には、その季節感を表わす美しい言葉が数々あります。
花冷え(はなびえ)・・・桜の花が咲き誇る春に、暖かくなってきた気温が、一時的に冷え込むことをいいます。
花曇り(はなぐもり)、鳥曇り(とりぐもり)・・・桜が咲く春の曇りの事を言います。
渡り鳥の移動時期にあたるので、鳥曇りともいわれています。
桜前線・・・日本各地に植えられている、染井吉野の桜が開花する様子を気象庁が前線として発表しています。
3月から5月初旬頃まで見られます。
「桜の開花の等期日線」というのが正式名称です。
桜流し・・・春に降る雨で、桜の花が散り流される様子をいいます。
桜を濡らす雨自体のことを指す場合もあります。
花時・・・花が咲く盛りのことをさしますが、主に桜が満開に咲き乱れる時期のことをいいます。
こぼれ桜・・・満開の桜の花が枝からこぼれ落ちそうに見えることをいいます。
花びらを散らした模様のことをいう場合もあります。
花吹雪(はなふぶき)・・・満開の桜の花びらが、風に吹かれ舞い散る様子が、吹雪のように見えることから花吹雪と呼ばれています。
花筏(はないかだ)・・・桜の散った花びらが、水面に浮かび筏のようになる様子をいいます。
花明かり・・・満開の桜の花が、暗闇の中でほんのり明るく見えることをいいます。
花の浮橋・・・散った桜の花びらが、橋のように集まっている様子をいいます。
花篝(はなかがり)・・・夜桜鑑賞のために焚かれる篝火のことです。
花疲れ・・・花見の人だかりなどで疲れてしまうことをいいます。
桜雲(おううん)・・・桜が一面に咲き誇り雲の様にみえること、花の雲をいいます。
桜雨・・・桜が咲く頃の雨をいいます。
桜影(さくらかげ)・・・桜が水面に映ることをいいます。
桜狩り・・・桜を鑑賞することをいいます。
花衣(はなごろも)・・・花見の際に着るものを指します。
花便り・・・桜開花の知らせをいいます。
このように、春らしい桜の頃に使う美しい言葉がたくさんあります。
中国の宣明歴では・・・?
古代中国で考案された宣明歴(せんみょうれき)という歴法では、桜始開の時期は「雷乃発声」とされています。
これは、遠くから雷の音が聞こえ始める時期という意味があります。
日本の七十二候では春分の末候となっておりますので、少しズレがありますが、七十二候は日本の季節と動植物の動きに合わせて調整されたものなので、中国から伝わった時から変化しているのです。
桜は日本を代表する花なので、桜始開はこの時期にぴったりの言葉なのです。
まとめ
日本の暦では、3月20日頃から春分が始まります。
春分は昼と夜の長さが等しくなり、春が本格的に始まりまる頃です。
ツバメが巣を作り始め、桜も開花を始めるという時期になります。
春分の次候にあたる「桜始開」は、桜が開き始める時期という意味があり、日本の美しい春の風景を想い描かせる言葉です。
この言葉を見ると、春が来たと感じる人も居るのです。
時候の挨拶などにも使えますので、積極的に使ってみましょう。