親しい方のご不幸には、葬儀に駆けつけお別れをすることと思います。その際はご香典を持参しますが、贈ったお相手から当日・もしくはしばらくしてから「香典返し」をいただきますよね。
日本の文化としては「頂いたらお返しする」ことがマナーとされていますが、ご自身が喪主となる場合も同じこと。頂戴したお気持ちに対しては、きちんとお返しをしたいものですよね。
そんな香典返しに、実は地域性があるとご存知でしたでしょうか?
今回は香典返しの、地域ごとの特徴についてお話してまいります。意外な発見もあるかと思いますので、大人の便利な知識として皆さん覚えていってくださいね。
基本的な香典返しとは?
香典返しには地域差があるということですが、まずは一般的なやり方について確認しておきましょう。ご存じない方は基本が分からないと地域差を感じられませんし、最初に基礎知識をおさえておきましょう。
●香典返しには消耗品がベター
香典返しはご不幸に関する贈り物ですから、ギフトであれば消耗品が良いとされています。例えば洗剤のセットであったり、タオルセットや菓子折りなどの食品系が全国的には人気のようですね。特に無地・白地のタオルは、「悲しみを拭う・不幸を包む」という意味合いから、共に悲しんでくださっている参列者へのお返しに最適です。
●元々はお米を贈るものだった!
古くから日本では、村内でご不幸があると「相互扶助」の観念から、現在のお金のような存在であったお米をご遺族に贈っていました。昔も今も葬儀には何かと費用・人手が要るものであったためです。この習慣がご香典として、金銭に形を変えて今でも残っているわけですね。
同様に、遺族側からは葬儀後に「助けてくれてありがとう」という意味で、村内の方々に少量ずつお米をお返しすることが多かったのだそう。頂戴したお気持ちより多く返すことは、お相手の配慮を無下にしてしまうことになりますよね。現代でこそ金銭を贈るようになりましたが、お米は現代でも日本人に欠かせない主食でありますから、香典返しにはお米券を贈る方も多いそうですよ。
香典返しをしない地域も!?
全国的によく見られる香典返しの形についておさえたところで、次は各地の特色ある香典返しについてみていきましょう。
●4月でなくても「新生活」!?
トップバッターは北関東・特に群馬県にみられる伝統ですが、何とご香典に春を感じさせる「新生活」という言葉が用いられることがあります。これは大戦後に日本が経済的に低迷している際に生まれた習慣で、新たに再出発するため・またお互いの負担が少なるなることを目指した「新生活運動」という思想から始まりました。
新生活運動に根差した考えから、ご遺族にはご香典としては少額の千~3千円ほどをお渡ししますが、お返しは辞退する、というスタイルになります。現在でも群馬県の葬儀会場の受付では、「新生活」「一般」とに分けられているそうです。もし新生活としてご香典を頂戴した際は、香典返しはしない方がベストなのですよ。
●その他北日本でも酷似した習慣が
新生活と記されたご香典には香典返しをしなくても良いということが分かりましたが、北日本の他の地域でも香典返しの習慣がないという場所は多々あります。北海道や東北地方では、葬儀に参列してくださった方には一律して「会葬御礼」とよばれる品をお渡しし、それにて頂く・お返しする、というやり取りは終了となるそうです。香典返しの「当日返し」がこれにあたりますね。
しかし当日返しと異なる点は、頂いたご香典の金額に関わらず、全員一律のお返しをするというところ。当日返しで用意していた品よりも高額なご香典を頂いた場合、その方には別途お礼を贈るべきと考えられていますが、会葬御礼が基本という地域ではこういったお返しの仕方をしないということなのです。
商品券ではなく…ビール券!?
香典返しがない、という地域は北日本に多く見られるスタイルでしたね。では、さらに一風変わった香典返しをする県をこちらでご紹介しましょう。岐阜県では思わず「え!?」となってしまうような品を香典返しとして贈る習慣が一部地域ではあるのですよ。
●恵那市(えなし)などではビール券が常識
起源は定かではないのですが、岐阜県の恵那市やその他の地域では、「香典返し=ビール券」がマナーと考えられています。ビール券でなければいけない、とまで浸透している文化のようで、頂いたご香典によらず3枚以上は包むべきという認識なのだそう。
ビールといえば、確かに食品系ですから「消えてなくなるもの」という香典返しの基本に則ってはいますが、他の地方の方からすると意外な贈り物ですよね。
金銭の場合も異なる!?
先ほどまでは、ギフトがメインとなる内容でしたが、金銭でお返しをと考えている方も要注意。香典返しに最適とされる金額も地域によって異なるのですよ。
全てご紹介するとなるとかなり長くなってしまいますので、こちらでは全国トップ3の都道府県とその理由をみていきましょう。金銭の場合でも香典返しには全国的に違いが見られることがお分かりいただけますよ。
●香典返しが高い都道府県:トップ3
- 東京都
- 愛知県
- 石川県
東京都が香典返しにかける費用のトップである理由には、半返しの文化が根強いという点が挙げられます。半返しとは、頂いたご香典の額の半分をお返しするスタイルのこと。
例えば関西などでは3分の1程度でOKという考えが主流のようですが、それに比べると香典返しが高額となることはお分かりになることでしょう。
愛知県と石川県が続いている理由は、どちらの県も「冠婚葬祭は豪華にすべき」という考え方があるためです。半返しの文化が浸透しているというためでなく、冠婚葬祭にはすべからくお金をかけるべきというお国柄であることが影響しているのですね。
受け取り手に合わせた香典返しを!
日本は狭いようで広い国。香典返しという習慣に焦点を絞ってみても、全国各地で色々な違いがあることが分かりましたね。
葬儀はご遺族の最寄りの地域にて行うことと思いますが、香典返しは参列してくださった方々へ贈るもの。お相手のことを考えた返礼方法にすべきといえますね。
丁寧なお返しにするためのポイントを、こちらでチェックしておきましょう。
●送り先の地域の考え方を確認
先ほどお話したように、「香典返しはビール券が当たり前」と考えられている地域も中にはあります。そういった場所から参列してくださった方には、やはりその方の考えに合わせた品・金額にしてお返しをすべきといえますよね。もちろん分からない場合には怒られることはないでしょうが、やはり相手に寄り添う形で気持ちを表す方が丁寧な印象になることは間違いありません。香典返しを用意する場合は、まず遠方から来られた方の地域の習慣を調べておくとスムーズなのではないでしょうか。
まとめ
今回は香典返しの地域差についてお話してまいりました。お読みになって、お住いの地域の習慣がローカルマナーであったと驚かれている方や、「地域別にこんな違いがあったなんて」と驚かれている方もいらっしゃることでしょう。
葬祭に慣れっこという方は少ないかと思いますし、香典返しにも地域差や独特の考え方があると新発見していただけましたら幸いです。ご不幸はできれば起きてほしくないことですが、もし香典返しを贈るような場面になった際は、ぜひこちらの記事の内容を思い出してくださいね。