自動販売機やコンビニには豊富な種類のドリンクがありますが、その中でもやはり緑茶は日本人にとって特別なもの。熱い緑茶を飲みながらのんびりする、はたまた冷たいお茶で水分補給をする、温冷や季節を問わず私たちを癒やしてくれる飲み物といえますね。そんな身近な緑茶には、それぞれ産地があることはご存知かと思いますが、各銘柄の味の違いはお分かりになりますか?今回は緑茶の有名な産地と、銘柄ごとの味わいの違いについても詳しくまとめてまいりますよ。
【豆知識】日本の緑茶の歴史って?
日本の食文化と切っても切れない仲の緑茶は、かなり昔から飲まれてきた印象がありますよね。「日本茶」ともよばれることから日本独自のお茶であるとイメージされやすいですが、緑茶のルーツは中国にあったのですよ。
●緑茶の栽培は○○県から
諸説ありますが、日本にお茶の木がやって来たのは平安時代のこと。天台宗を開いた最澄が、中国から持ち帰ったものを栽培したのが緑茶の始まりと考えられています。日本各地で緑茶の生産が行われていますが、最澄が持ち帰ったお茶の木をはじめて植えた地は現在の滋賀県なのだとか。後ほどお話する三大産地とは違う場所だったのですね。
当初は中国からやってきた文化=流行の最先端、つまり庶民は手が出せないものでありました。やがて鎌倉時代になると、今度は臨済宗を開いた栄西が中国からお茶の木の種を持ち帰り、さらにお茶の専門書を著すなど、日本にお茶を普及させるべく尽力したのです。その結果、京都府のお寺の土地でも栽培がはじまり、そこから全国的にお茶が栽培・庶民にも徐々に浸透していくきっかけとなりました。日本茶は僧侶が広めたものであったのですね。
●日本茶の三大産地・三大銘柄は?
藩によってお茶の栽培が推奨された例もあり、現在は静岡県・三重県・鹿児島県が日本茶の三大産地となっています。しかし日本茶の三大銘柄である「日本三銘茶」は、静岡県の静岡茶・埼玉県の狭山茶(もしくは鹿児島県の知覧茶)・京都府の宇治茶であり、生産量と普遍的な好みが紐付くわけではないことが分かります。ちなみに三大茶は「色は静岡、香りは宇治よ、味は狭山でトドメさす」といわれていて、ビッグ3に挙げられる理由もそれぞれなのですよ。
●一番茶・二番茶って?
これから各地のお茶についてご紹介してまいりますが、その中で「一番茶・二番茶」というワードが出てきます。緑茶に詳しくないと分からないことですから、こちらであらかじめ説明しておきますね。
一番茶とは、いわゆる新茶のこと。その年最初の収穫となる茶葉で、その後収穫されるものより苦味が少なく爽やかな香りが特徴です。
二番茶から以降はやや渋みが強くなっていきますが香りも増していく傾向にあり、三番茶・秋冬番茶(しゅうとうばんちゃ)と収穫する地域もあるのですよ。ですから「一番茶では物足りないけど、二番茶は丁度いい」など、同じお茶でも収穫時期によって好みが分かれることも。一度試してみた銘柄でも、収穫時期をズラして飲んでみると、また違った味わいを感じられるのですよ。
狭山茶:埼玉県狭山市など
埼玉県南西部(狭山市・入間市・所沢市など)で栽培されているお茶を狭山茶といいます。温暖な気候を好むお茶の木にとってはやや厳しい環境ですが、それ故に葉が肉厚に育ち、甘く濃厚な味わいになります。「狭山火入れ」という独特の仕上げ(乾燥)方法をとることで香ばしさもプラスされ、風味も抜群です。
●ポイント
味 :甘く濃厚、香ばしくコクがある
茶摘み:[一番茶]4月下旬~5月下旬 [二番茶]6月下旬~7月中旬
静岡県で栽培されるお茶各種
静岡県といえばお茶、とイメージできるように、緑茶の生産量が国内トップである静岡県は、それゆえ多くの銘柄が存在しています。同じ県内産とはいえそれぞれ味わいが違いますので、詳細を確認してみましょう。
●川根茶
緑茶の品評会で初の天皇杯を・毎年産地賞を続けて受賞するなど、お茶業界からの評価も高い川根茶。熟練のお茶師が揉み上げることにより、上質なお茶に仕上げています。
トロみを感じる甘さ、新鮮な香りが楽しめる、極薄い色の緑茶です。
●掛川茶
通常よりも多くの蒸気を使用し、時間をかけて蒸し上げられる「深蒸し茶」とよばれるカテゴリーに分類されます。この製法により青臭さや渋み・苦味を抑え、まろやかな緑茶になるのです。
口当たりよくコクがあり、深みのある豊かな香りと緑茶らしい緑色を楽しめるお茶です。
●天竜茶
天竜川付近の山間で栽培されるお茶。川から発生する霧と山の影のおかげで、直射日光に当たらず穏やかな味わいの茶葉が育つのです。
濃厚かつ爽やかな甘味とフレッシュな香り、薄い黄緑色が楽しめます。その上品な味わいは古くから高く評価され、高級茶としても有名です。
●本山茶
なだらかな山の斜面と二つの川の近くという、緑茶作りには最適な立地で育てられる本山茶は、あの徳川家康も愛飲していたことで有名なのですよ。
口当たりが優しく、透き通るような香りが特徴で、地味あふれる味わいのお茶です。
●両河内茶(りょうごうちちゃ)
キャンプや鮎釣りの場所としても人気がある両河内は、日差しがよく届く地形ながら、興津川から発生する霧が適度に太陽から茶葉を守ってくれます。
そんな環境で育つ両河内茶は、まさに自然の恵みの賜物。旨味が強く、ソフトな香りの緑茶です。
●ぐり茶(蒸し製玉緑茶)
元々海外へ輸出するために編み出されたお茶の製法のことで、決められた生産地はありません。茶葉の形を整える「精揉」という工程がないため、葉に傷をつけず渋みの少ないお茶に仕上がります。
渋みがなく落ち着いており、濃いめの緑茶を楽しめます。
伊勢茶:三重県全域
南北に広がる三重県では、海側の地域と山間部とで作られるお茶の種類が異なります。どちらも伊勢茶と総称されますが、かぶせ茶と深蒸し煎茶とに分かれるのですよ。
●かぶせ茶
鈴鹿市や水沢町(すいざわちょう)など、三重県北部の海沿いの町で作られるお茶。お茶の木に藁などをかぶせ、直射日光を防ぎながら育てる製法で、玉露と同じような味わいに仕上がります。
旨味が強く、緑の濃さがかぶせ茶の特徴です。
●深蒸し煎茶
三重県中部〜南部にかけては深蒸し煎茶の栽培が盛んです。煎茶は普段私たちがよく口にするタイプの緑茶で、渋みと旨味がバランス良く感じられる特徴があります。
深蒸しにした煎茶は青臭さが消えコクが増すため、深蒸し煎茶でいつもよりグレードの高い緑茶が楽しめますよ。
大和茶:奈良県月ヶ瀬村など
大和茶はお茶の木にとっては厳しい環境ともいえる、大和高原とよばれる高地で栽培されています。しかしそれ故に手間暇かけて育てられ、深みのある味わいとなり、最初だけでなく三回同じ茶葉を使っても美味しいお茶が出てくれるのです。カテキンが多く含まれるという特徴もあり、健康のために飲む方も多いのだとか。
●ポイント
味 :渋みの中にしっかみとした旨味がある
茶摘み:[一番茶]5月中旬~下旬 [二番茶]6月下旬~7月中旬
宇治茶:京都府宇治田原町など
言わずと知れた緑茶・宇治茶は、歴史ある京都の街を体現したような味わいが特徴です。最初にお話したとおり、京都府は日本に緑茶が広まるきっかけとなった地でもあり、国内で一番私たちとの繋がりが強いお茶ともいえます。また香りの良さから外国人にも人気の緑茶なのですよ。
●ポイント
味 :甘みのあるマイルドな飲み心地、上品な香り
茶摘み:[一番茶]5月上旬~下旬 [二番茶]6月中旬~7月上旬 [三番茶]7月中旬~8月下旬
八女茶(やめちゃ):福岡県八女市など
緑茶栽培では歴史が浅いながら、確固たる地位を築いている八女茶。その秘密は新芽が出てからの被覆方法と期間の長さにあります。通常は2週間ほどでネットなどのかぶせを取り除きますが、八女茶は稲藁を用いて20日間はそのままの状態にするようです。時間をかけることで旨味を最大限引き出す工夫がされているのですね。
●ポイント
味 :甘くコクがあり、旨味もしっかり
茶摘み:[一番茶]5月上旬〜中旬 [二番茶]6月中旬〜下旬 [三番茶]7月下旬~8月上旬
みやざき茶:宮崎県全域
県内各地で栽培されているみやざき茶。暖かい気候とジメジメし過ぎない梅雨のおかげで、お茶の生産に適した環境が整っています。ぎゅっと濃縮された緑茶で、渋めが好きという方におすすめですよ。さらに多くの茶農家で無農薬農法が採用されており、安全性の高さにも注目です。
●ポイント
味 :渋いながら甘みを感じられる、力強い味わい
茶摘み:4月上旬〜5月上旬
知覧茶(ちらんちゃ):鹿児島県南九州市など
活火山である桜島の火山灰が含まれた、栄養満点の土壌で育つお茶。それ故渋みがなくさっぱり飲めるのに旨味が凝縮されているという特徴があります。
日本で一番早く茶摘みを迎える緑茶で、「かごしま茶」ともよばれていますよ。
●ポイント
味 :旨味が強いがまろやかで後味すっきりな味わいで、優しい香り
茶摘み:3月下旬〜4月中旬
まとめ
ペットボトル飲料を含めると毎日のように飲む機会がある緑茶ですが、産地や仕上げの工程によって味の違いが意外にたくさんあるとお分かりいただけたのではないでしょうか。緑茶は普段口にするだけでなく贈り物としても人気ですから、こちらの記事を参考に、ぜひお相手の好みに合ったお茶を選ぶようにしてみてくださいね。