日本各地でさまざまな食の祭典が催されますが、その一つ「芋煮会」についてご存知でしょうか?東北地方では昔から開かれていたイベントで、開催される地域によって芋煮の味や具材が異なるのですよ。今回は日本の伝統フェス・芋煮会で食べられる、郷土料理「芋煮」について詳しくまとめてみました。
芋煮って何のこと?
字面から何となくは分かりますが、芋煮そのものを知らないという方は多いでしょう。まずは芋煮会のメインである芋煮についての詳細からチェックしていきますよ。
●芋煮は里芋が主役!
「芋」と付くように、芋煮は何と言っても里芋が主役の料理。東北地方の郷土料理で、他にも肉や野菜類が具だくさんに煮込まれます。野菜の旨味たっぷり・素朴な味わいで、なん世代にも渡り愛されているのですよ。
●芋煮は船乗り考案の料理!?
諸説ありますが、芋煮を初めて作ったのは東北の人ではないのだそうです。
時は遡り江戸時代、京都から東北地方に商船が行き来していました。東北は古くからアオソ(衣服などにつがわれる繊維の産地)で、それを仕入れにやってきていたのです。ある日同じようにアオソを仕入れに来た船乗りは、肝心の商品が中々届かないので暇を持て余していました。そこで船に積んでいたボウダラと、地元で採れた里芋を買い求め、それらを合わせて煮込み酒のあてにして待っていたそうです。これが元祖芋煮といわれていて、その美味しさ故に東北中に広まっていったのですね。
現在は東北の郷土料理として定着している芋煮ですが、ルーツは地元民ではなかったという、面白い背景をもった料理なのです。
●大まかに二種類の味が
東北各地で愛されている芋煮ですが、実は味付けは統一されていないのですよ。大きく分けて二種類の味があり、味噌または醤油で味付けされるのが一般的です。その他地域によって欠かせない具材も異なり、これも味わいを変える要因となっています。
●いつ開かれるイベント?
芋煮会はメインの里芋の収穫時期にあたる秋、10月頃に東北地方全域(青森県以外)で開催され、昔から「春は桜、秋は芋煮会」といわれるほど重要視されているイベントなのですよ。河原や海辺、公園など野外で芋煮を作り、青空の元大人数で味わいます。最近では芋煮だけでなくBBQを一緒にする会もあるのだとか。
●芋煮好き=○○!
芋煮会は昨今改めて注目されつつあり、芋煮を全国的に広めようという動きが高まっています。東北を離れ関東などでも芋煮会が開催されることがあり、徐々にですが芋煮を愛する人は増えてきているのですよ。そんな中芋煮の魅力に目覚めた人は「イモニスト」とよばれ、彼らは芋煮の美味しさを広めるため日々活動しているようです。
イモニストと呼び一線を画するようになるほど、芋煮の魅力は深いということが分かりますね。
その1:岩手県の芋煮会
広大な面積を誇る岩手県ですが、芋煮の味付けはフリーダムなのだとか。トップバッターの岩手風の芋煮とはどのようなものなのかに迫ります。
●鶏肉or豚肉+醤油or味噌
芋煮、ではなく「芋の子」という名称が一般的な岩手県。岩手県の芋煮・芋の子は、広い土地柄ゆえか味付けや肉の種類が統一されていません。ある地域では豚肉に味噌、また別の場所では鶏肉に醤油、と定番の具材も違います。
山にキノコを採りに行き、そこで穴を掘りかまどを作って煮炊きする芋煮会のやり方や、公園などの広い場所で大勢が集まって芋煮を作るケースなど、芋煮会の開催方法もさまざまです。
●醤油バージョン
里芋・鶏もも肉・ゴボウ・木綿豆腐を、出汁・みりん・酒・醤油で味付け。
●味噌バージョン
先ほどご紹介した醤油味バージョンの芋煮を、味噌でアレンジする。
その2:山形県の芋煮会
岩手県は広くとも共通した味付けがされていた芋煮。一方、山形県では同じ県内でも味付けのバラエティに富んでいるのですよ。それぞれの味に「○○風」と地域名が付いている点も特徴的です。
●最上風
松尾芭蕉の俳句でも有名な最上川が流れる最上地方は、山形県内の最北部に位置します。最上風芋煮は醤油味で、具材には豚肉とキノコ類がたっぷり入るようです。
●庄内風
日本海側に位置する庄内地方では、芋煮会が海辺で開かれることも多いのだとか。芋煮は味噌味で、豚肉や野菜類の他に厚揚げなども入り、かなり具だくさんに作られるようです。
●村山風
山形県内でもさくらんぼの栽培が盛んな村山地方では、それ故か芋煮も甘じょっぱい味付けです。砂糖で甘みをつけた醤油味で牛肉が使われるため、すき焼きのような味わいなのだとか。芋煮の後はうどんで締めを作る点もそっくりなのですよ。
●置賜風(おきたまふう)
山形県内で一番南に位置する置賜地方は、米沢牛の産地として有名です。地域柄芋煮に使用する肉は牛肉で、根菜や糸こんにゃくも入れられます。醤油味ベースですが、隠し味に味噌を少しだけ加えるのだそうです。
その3:宮城県の芋煮会
あの伊達政宗が住んだ街・仙台市がある宮城県。彼も食べていたのか気になる宮城風の芋煮はどのような味付けなのでしょうか。
●味噌と豚肉+生姜
宮城県の芋煮には、必ず味噌と豚肉が用いられます。その他の具材はこんにゃくや木綿豆腐、野菜類などと共通していますが、少し生姜を加える点が特徴的なのですよ。
その4:福島県の芋煮会
芋煮会が主に開催される地域、最後にご紹介するのは福島県。被災者支援で赴いた際、芋煮を振る舞われた方もいらっしゃるのではないでしょうか。他の県とどのような点が違うのかみていきましょう。
●被災者の心の拠り所に
福島風芋煮の特徴についてお話する前に、こんなエピソードをご紹介します。2011年に起きた東日本大震災では、被災した多くの方が他県に避難しましたね。住み慣れた場所から離れ借りぐらしをしている状況で、さらに家族や家を失った傷も深く、被災者は心身ともに疲れ切った状態が長く続きました。
そんな中、避難先では秋口にちょっとした芋煮会が開かれ、被災した人々の心を慰めたそうです。故郷の味として定着している芋煮は、老若男女問わず愛されていることが分かる、心温まる出来事ですね。
●豚肉+味噌or醤油、もしくは両方!
福島風の芋煮は、豚肉が使われること以外の味付けは自由。それぞれの家庭の味で作ることができます。味噌または醤油のみ、もしくは両方を使って味付けすることもあり、「福島風といえばこれ!」という定義はないのだとか。
まとめ
東北地方の郷土料理・芋煮には、さまざまな作り方や楽しみ方がありましたね。地域それぞれの芋煮についてお話しているだけで、お腹が減ってきてしまいました。芋煮会は全国的に開催されるようになっているので、ご興味もっていただけましたらぜひ調べてみてくださいね。芋煮のことが頭から離れなくなったなら、イモニストの仲間入りですよ。