東風解凍という言葉をご存知でしょうか?
この言葉は、春を告げるとても美しい表現です。
見聞きしたことがある人も居るかも知れませんが、中には「日本の言葉なの?全く知らないし興味も無い」という人も居るのでしょう。
ここでは、そんな東風解凍について意味や読み方、使い方などを詳しくご紹介します。
東風解凍とは?どういう意味?
東風解凍とは、一体どういう意味があるのでしょうか?
文字を見る限りでは、東風が何か凍っていたものを溶かすという意味なのかと思います。
東風解凍とは、二十四節気の立春、 七十二候の初候にあたります。
「東風が吹き、厚く張った氷を溶かし始める頃」という意味があります。
七十二候の一番最初の候でもあります。
具体的には、2月4日から8日頃までを指します。
立春、節分を迎え、暦の上では春になる時期です。
この頃は気温がまだ低く寒いのですが、低気圧が周期的に訪れ、春の風を運んでくるのです。
朝晩の冷え込みはきついのですが、日中は暖かく穏やかな時間を過ごせる日も増えて来る頃です。
尚、立春の次候は「黄鶯睍睆(うぐいすなく)」、末候は「魚上氷(うおこおりにあがる)」となっています。
二十四節気、七十二候とはどんなもの?
古代中国で太陽の動きを元にして作られたのが二十四節気(にじゅうしせっき)というものです。
空の太陽が移動していく道を「黄道」と呼び、この道を24分割したものが二十四節気です。
考え方としては、まず、日の長さが変わって行く冬至と夏至で黄道を分割します。
因みに、冬至を境に昼間が長く夜が短くなり、夏至を境に昼間が短く夜が長くなります。
更に、春分と秋分で分割し、4分割とします。春分と秋分は、共に昼と夜の長さがほぼ等しくなる日を指します。
尚、このように夏至・冬至・春分・秋分で4分割することを二至二分(にしにぶん)と言います。
そして、立春・立夏・立秋・立冬の四立(しりゅう)を入れ8分割にします。
このことを八節(はっぜつ)と呼びます。
8分割すると、一節が45日ずつになります。
それを更に3等分し二十四節気としたのです。
二十四節気は、立春から始まり、雨水、啓蟄、春分、清明、穀雨までを春、立夏、小満、芒種、夏至、小暑、大暑までを夏、立秋、処暑、白露、秋分、寒露、霜降までを秋、立冬、小雪、大雪、冬至、小寒、大寒までを冬としています。
二十四節気は、昔から農事をする上で非常に大切な目安として重宝されて来ました。
現代でも、古代中国から伝わったまま、ほとんど改訂されずに使われています。
この二十四節気の一節気(およそ15日間)を三分割したものが七十二候(しちじゅうにこう)です。
七十二候には、初候、次候、末候があり、それぞれ五日間ほどに分かれています。
七十二候には、動植物や気温、季節の移り変わりを表わしたものが多く、日本の風土に合うように明治時代に改訂されて使われています。
東風解凍の読み方は?
東風解凍とは、どんな読み方をするのでしょうか?
一般的には、「はるかぜこおりをとく」と読みます。
東から吹く春の風が氷を溶かしていく、美しい季節を表わしています。
暖かな春になる期待を持たせる嬉しい季節になります。
それと同時に、様々な動植物が冬の眠りから目覚めるため、日本では花粉症や冬眠から目覚めた熊による被害などの心配も少しずつ出始める時期なのです。
「はるかぜこおりをとかす」や「とうふうかいとう」と読むこともあります。
中国では、「東風氷を解く」とも言われます。
東風解凍の使い方は?
東風解凍は、冬から春になる季節の変わり目の時期を表わしています。
普段の会話でこの言葉を使用する機会というのは少ないものですが、手紙やブログ記事などで時候の挨拶文として主に使用されています。
例えば、手紙であれば「東風解凍の候、皆様におかれまては、益々ご健勝のことと存じます。」と使用します。
また、ブログなどでは、「今日から東風解凍の季節になりました。」といった具合に文頭で使用されます。
学校などでは先生がホームルームの時間に話をしたり、学校便りなどの文面上で使用されるケースもあります。
新聞や回覧板、会報誌の紙面上でも見掛けることが有るかも知れません。
この言葉を目にした時には「もう、春が近づいて来たのだな・・・」と喜ばしいことだと考えましょう。
東風とは一体どんなものなの?
東風解凍とありますが、東風とは一体どういったものなのでしょうか?
東風(こち)とは、その名の通り東から吹く風のことを言います。
東風=「こち」と読むのは春の季語にあたります。
東風=「あいの風」と読むのは夏の季語になります。
東風には様々な種類があります。
春に使われるのは、朝東風(あさごち)、夕東風(ゆうごち)、梅東風(うめごち)、桜東風(さくらごち)、強東風(つよごち)、荒東風(あらごち)、雲雀東風(ひばりごち)、いなだ東風(いなだごち)、鰆東風(さわらごち)などになります。
東風の吹く場所やシチュエーションで様々な表現がされているのです。
冬にはシベリア寒気団が日本へ寒さを送っていました。
ところが、春になるとその寒気団の力が弱まり、太平洋側から暖かい東寄りの風が吹き始めます。
単純な暖かさや柔らかさを持つ春風とは印象が異なり、冷たい寒さの中にも時折りホッとさせる暖かさを含む風を東風と言うのです。
東風は、昔から俳句や短歌、和歌などにも用いられ、有名な句が沢山存在します。
東風解凍の時期に旬のものは?
この時期に旬を迎えるものは、フキノトウ、白魚、三つ葉、鰆、キウイフルーツなどです。
どちらも春らしい旬の味覚です。
フキノトウは、なるべく若いものを使用し、天ぷらやフキ味噌にして食べます。
ほのかな苦みがあり、カリウムなども豊富で正月に溜まった身体の毒素を出してくれると言われています。
また、白魚は新鮮な物であれば踊り食いなどが可能です。
その他にも、天ぷらにしたり、卵でとじて食べたりされています。
三つ葉もお浸しにしたり、汁物へ少し乗せたりして食べられています。
鰆は西京漬けなどにすると老若男女食べやすい物です。
キウイフルーツは生で食べるのが一番ですが、食べにくい場合はジャムなどにしてみても良いでしょう。
旬の物を口にすると、長生きができるといわれていますので、積極的に取り入れるようにしましょう。
中国の宣明歴では・・・?
日本の二十四節気や七十二候の元となった、古代中国の宣明歴でも、この時期は東風解凍と言われています。
日本において東風は春風を指しますが、東から吹く風という字が使われているのは中国の思想が関係していると言われています。
中国では、「東=春を司る」と考えられているのです。
東から春が来ると信じられているため、東から来る風が春を運んでくるとされています。
一年で最も運気の良い日!
2月4日は、一年で最も運気が高まる日とされています。
春が訪れたことを祝う日でもあり、禅寺(曹洞宗)では「立春大吉」と書かれた紙を入り口に貼る風習があります。
この文字を立春から雨水にかけての時期に貼ることで、厄除けになると考えられているからです。
立春の前日は節分で、豆まきをして厄を払います。
そして、春を迎える新しい一年に厄を持ち込まないように立春大吉の札を貼るのです。
立春大吉という文字を縦書きすると、左右対称になります。
左右対象のものは、裏から見ても同じ文字に見えます。
万が一、厄が家に入って来ても、戸口の文字を見て、「おや?まだあの入口をくぐっていない」と勘違いし出ていくと言われているのです。
そのため、この言葉を掲げることで、一年が平穏無事に過ごせると考えられているのです。
近年では、立春大吉という言葉が縁起の良い言葉であるとされ、年始のご挨拶や年賀状などに書かれていることもありますが、実は2月4日の立春・東風解凍の日に掲げるのが正式なものなのです。
お札は玄関の右側に目線の高さで貼るのが好ましいとされていますが、その家庭により様々です。
まとめ
東風解凍とは、2月4日の立春から数日間を表わす言葉で、東から吹く春の風が、氷を溶かして行くという美しい表現で春の訪れを示しています。
まさに、寒さが3日続いても、4日目には暖かい日が訪れるということを伝えている三寒四温という熟語が似合う季節になります。
まだまだ、朝晩の冷え込みは厳しいものですが、日に日に春めいていくこの季節は、私たち人間を含め、数々の動植物に活気をもたらします。
旬を迎える物を積極的に摂取し、元気な春を迎えられるようにしたいものです。