日本人で良かったと思うことの1つに、四季を感じることができるという事と上げる方もいることでしょう。
日本の四季は、暮らしている中にあらゆる感動を与え、人々の五感を働かせます。
木々の芽吹きに感動したり、その時期にしか楽しむことのできない食べ物や生物との出会い、当たり前の生活をしているだけなのにすぐそばに感じる情緒。
その情緒を言葉にしたものこそが、七十二候です。
七十二候を知ることは、日本の四季を知る事。
ですが意外にも、その美しさに未だ気が付いていない方も多くいます。
そこでこちらでは六十七候~七十二候について解説し、特に理解を深めていきます。
六十七候~七十二候の読み方を解説
七十二候の美しさは四季を感じさせる巧みな表現はもちろんですが、季節を細かく振り分け、どんな些細な日常の出来事にも感動させることにあります。
様々な物が店先で購入することが出来る上、昼夜構わず日々忙しく暮らしている人々の中で、季節の移り変わりを感じる事は段々と薄くなってきているとも言われています。
特に最近はスマホという現代の進化したコミュニケーションツールがあるため、手紙を書くことも少なくなりました。
確かに携帯電話やパソコンでも、相手と文面でのやり取りをする事には変わりません。
ですが友人などに宛てるメールなどでは、文章も言葉も口語に近いものになりつつあり、頭を悩ませて挨拶の句に季節を表現するということ自体は全体的に減っているのではないでしょうか。
もちろんそこには現代なりの素晴らしい繋がりがあり、離れていても近くいる様な温もりを感じる事ができます。
ですが四季の言葉を相手の為に考える、それを紙に綴るということは減ってきてしまっていますよね。
そんな日本語の美しさが如実に散りばめられている七十二候は、知れば知るほど興味をそそられる様な言葉がたくさんあります。
言葉というものの美しさが見直されている今だからこそ、もう1度良く知ってみたい、そう思う方もいる事でしょう。
七十二候の中で最終候にあたる六十七候~七十二候は、寒さが一番体にこたえる真冬の話。
四季の中で一番彩の無い冬場は、考えるだけで表現する言葉が少ないですよね。
そんな冬を昔の日本人は、どの様に感じて言葉にしてきたのでしょうか。
こちらではクローズアップした六十七候~七十二候までをご紹介すると共に、読み方についても解説していきます。
六十七候「芹乃栄」と書いて、せりすなわちさかうと読みます。
六十八候「水泉動」と書いて、しみずあたたかをふくむと読みます。
六十九候「雉始雊」と書いて、きじはじめて鳴くと読みます。
七十候「款冬華」と書いて、ふきのはなさくと読みます。
七十一候「水沢腹堅」と書いて、さわみずこおりつめると読みます。
七十二候「鶏始乳」と書いて、にわとりはじめてとやにつくと読みます。
この漢字を見ると読み方自体がとても難しいですし、何よりも言葉の内容を理解しにくいですよね。
七十二候はこの読み方をマスターすることが実は難しいのですが、最初のとっかかりになる所でもあるので読み方を覚えていきましょう。
六十七候~七十二候の時期はいつ頃?
漢字の難しさや読み方の難しさに難色を示している方もいることでしょう。
これはいつの事なのか?どの様な意味が込められているのか?を知ることで、少しずつ解消してくることもあります。
七十二候には全て時候よばれる季語の様なものが含まれており、その時候が何かということを知るとおのずと読み方もわかってくることがあるからです。
大抵は生物や植物、その時期の食べ物や天候などが表現されています。
現代でも目にしたり口にしたりするものも多いので、少し考えると「なるほど」と納得することも多いはず。
こちらではまず、それらの事柄を深く知る為にも、六十七候~七十二候がいつの時期のことなのかについてまとめていきます。
六十七候「芹乃栄」は、1月5日~1月9日のことを指します。
六十八候「水泉動」は、1月10日~1月14日のことを指します。
六十九候「雉始雊」は、1月15日~1月19日のことを指します。
七十候「款冬華」は、1月20日~1月24日のことを指します。
七十一候「水沢腹堅」は、1月25日~1月29日のことを指します。
七十二候「鶏始乳」は、1月30日~2月3日のことを指します。
この細かな時候を見ても、正月明けの寒い日から始まった1ヵ月であることがわかります。
ただ直接的な冬の表現があるかというと、そんなこともありませんね。
そこがまた難しいところでもあります。
六十七候~七十二候までの意味とは、自然界の生命力の強さが由来
それでは早速六十七候~七十二候までの意味を詳しく解説していきます。
一体それぞれにどの様な思いが込められているのでしょうか?
六十七候「芹乃栄(せりすなわちさかう)」について
春の七草とも呼ばれる、青い草をご存知でしょうか?
春の七草は粥にすることで、正月の暴飲暴食で疲れた胃腸を休める、そんな効果があると言われています。
七草とはせり、なずな、ごぎょう、はこべら、ほけのざ、すずしろ、すずなのこと。
その中にあるのが、この六十八候に出てくる「芹」です。
芹は冬場の冷たい水でたくさん生育されるので、1月の正月明けのこの時期のもの。
昔の人は寒い冬に育つ芹を見て、迷わず時候にしたのかもしれませんね。
また字は違いますが、その育っている様子が「まるで競っている様」にとも例えられました。
六十八候「水泉動(しみずあたたかをふくむ)」について
この時候は少し難しいかしれません。
意味としては大地の中では少しずつ春がやってきて、湧水が凍っている状態から溶け始めるというもの。
ですが季節は真冬の1月です。
まだ人々が直接的に、春を感じるものは何もありません。
その中でも人々の体感とは裏腹に、春の訪れは静かに進んでいきます。
湧水も段々としみこみ、やがて大地に水が溢れてくるでしょう。
六十九候「雉始雊(きじはじめて鳴く)」について
日本を代表する鳥というと、どんな鳥がいるでしょうか?
例えば絶滅が危ぶまれているトキや優雅にたたずんでいる姿が印象的な鶴、日本には日本昔話にも出てくるような美しい鳥がたくさんいますね。
実は日本の国鳥は雉です。
国鳥のイメージの無い雉ですが、平安時代から狩りと言えば雉だと言われていました。
カラフルな羽毛が一見孔雀の様にも見えるのが特徴です。
そんな雉のオスは鳴き声もとても大きく、正月の雉狩りは昔の日本では風物詩となっていたのです。
桃太郎で雉が一緒に仲間になるのを見ても、力強く強さを象徴する鳥であることがわかりますね。
七十候~七十二候の意味は、春の訪れを感じる瞬間を表現
七十候~七十二候の意味はどの様な意味が込められているのでしょうか?
こちらでは後半部分について説明していきます。
七十候「款冬華(ふきのはなさく)」について
春の訪れを表現する際に使われるのが、フキです。
煮物などにすることで有名なフキは、この時期にひょっこりと顔を出し始めるのです。
寒い季節の中に、春来るワクワク感を出した時候と言えますね。
七十一候「水沢腹堅(さわみずこおりつめる)」について
大寒と呼ばれる、一年の中で最も寒さが厳しい季節。
この季節には沢を流れる水も凍ってしまいますよね。
しかもとても厚みのある、しっかりした氷になってしまうという表現ですね。
春の訪れを感じる一方で、自然の厳しい寒さやその美しい風景を思い起こさせる時候です。
七十二候「鶏始乳(にわとりはじめてとやにつく)」について
鶏が産卵をする時期は決まっていました。
本当の鶏の産卵時期は春から夏の間で、冬ではありません。
ですがこの「とやにつく」という言い方は、小屋で産卵をするという意味。
春の訪れを感じた鶏が、産卵をしにいくということなのです。
最近では食卓になくてはならない物として、卵は愛されていますね。
小正月の歴史とは?
正月の三が日が明けてから始まる六十七候~七十二候。
この1ヵ月の間に行われる風物詩と言えば、小正月です。
そもそも、小正月とは何なのでしょうか?
元旦の正月を「大正月」と呼ぶのに対し、1月15日を「小正月」と呼んでいます。
最近ではそこまで大々的に行われない小正月ですが、昔は「女正月」とも呼ばれ家庭内の様々なことをする行事と言われていたのでした。
門松などの正月飾りを飾り終わった自宅では、小正月に餅花などの飾りを飾ったり、小豆粥などを食べるという習慣があります。
この小豆粥には鏡開きで飾ったお餅を入れて食べることで知られており、大正月からの流れもちゃんと組んでいます。
今まで小正月を意識したことが無いという方は、ぜひ小豆粥などを頂き日本の良さを味わってみてください。
まとめ
こちらでは七十二候の中の、六十七候~七十二候までをクローズアップして読み方や時期・意味について解説をしてきました。
冬の寒さを良く表現できた素晴らしい時候が多く、読んでいるだけで大寒の厳しさの中に少し春を感じる事ができる期待感が織り交ぜられているのがわかりました。
普段は気にしない時候や季節感ではありますが、七十二候を知ったことをきっかけにして是非言葉の美しさや重みを感じて頂けたら幸いです。